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戦国異伝供書

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第九十二話 尼子家襲来その十四

「尼子家は今は勝ったが強い」
「そのことは事実なので」
「おいそれとはいかぬ、そして大内家はな」
 元就はここで話を変えた、その話はというと。
「陶殿は武勇に優れておるが血気に逸り過ぎる」
「それは確かに」
「お主も思うな」
「はい」
 こう兄に答えた。
「確かに」
「だからですな」
「そうじゃ、だからじゃ」
 それでというのだ。
「陶殿のその血気に引きずられて無理な戦をすれば」
「そして負ければ」
「その時は、ですか」
「大内家は痛手を受ける」
「そうなりますか」
「陶殿をどう抑えるか」
 そのことがというのだ。
「問題となろう」
「陶殿ですか」
「あの御仁はしかも周りが見えぬところもある」
 このこともあってというのだ。
「だからな」
「陶殿をどうするか」
「それが厄介ごととなるわ」
 大内家にとってというのだ。
「そこが厄介じゃな」
「そうですか」
「そうした御仁ですか」
「陶殿は」
「独善的な気質もな」 
 陶、彼にはというのだ。
「見える、敵なら対しやすいが」
「それでもですな」
「家中におれば」
「その時はですな」
「どうなるか、ですな」
「そうじゃ、わしならば」
 陶、彼はどうするかというと。
「遇し方を考える」
「あれだけの武勇を持たれていても」
「それでもですか」
「陶殿については」
「そう言われますか」
「左様じゃ、あの御仁は厄介じゃ」
 家中におればというのだ。
「先程言った通りな」
「だからですか」
「遇し方を考えられる」
「殿ならば」
「そうする、しかし」
 ここでだ、元就は。
 ふと今いる家臣達、元網達親族の者も含めて見回してだった。そのうえで剣呑な顔になりこう言った。
「家中がまとまっておらぬ家はやはり危うい」
「ですな、では」
「大内家もですか」
「やがてどうなるか」
「それがわかりませぬな」
「左様、あの家のことも見ておくか」
 こうしたことを話しつつだ、元就はまずは尼子家を安芸から追い払ったことをよしとした。だが既にその目は次の戦を見ていたのだった。


第九十二話   完


                 2020・4・1 
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