開幕の屈辱
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第二章
「しないでよ」
「だから三連勝するのはこっちだって言ってるだろ」
「本当に本当だと思いたいわ」
「何なら嘘吐いたらってやるか?」
「それはいいから」
また冷めた目になって言う千佳だった。
「三連敗する可能性高いから」
「阪神がか」
「そうよ、絶対に阪神には何か憑いてるから」
その憑いているものの話もした。
「魔物とケンタッキーのおじさんと甲子園の怨念ね」
「三つもあるんだな」
「それでどうして断言出来るのよ」
「だから嘘吐いたらはしないんだな」
「ホラと受け取っておくわよ」
嘘でなく、というのだ。
「だからいいわよ」
「随分言ってくれるな」
「毎年のことだからね」
冷めた口調の返事は変わらない。
「それこそ」
「僕は今凄く不機嫌になったからな」
「不機嫌になったことは謝るけれど本気でわからないから」
阪神のことはというのだ。
「三連敗しかねないから」
「三試合連続十点差で勝つからな」
「心からそうして欲しいわ」
この言葉は本気だった。
「それで巨人を叩き潰して欲しいわ」
「お前も巨人嫌いだしな」
「死ぬ程嫌いよ」
「そこは僕と同じなんだよな」
「これまでどれだけ巨人に選手掠め取られたか」
そのことを思うと、というのだ。
「そのことを思うとね」
「巨人嫌いだな」
「巨人は一億年位最下位であるべきよ」
千佳はこれまた本音を出した。
「それこそね」
「本当にそうだよな」
「阪神は勝っていいけれど」
無論カープ意外にだが千佳は阪神がいつもカープに負けていることからこのことは特にどうも思っていない。
「けれどね」
「巨人は、だよな」
「心からそう思っているから」
だからだというのだ。
「阪神には願っているのよ」
「巨人には勝て、か」
「本当に頼むわよ」
「だから大丈夫だって言ってるだろ」
「その言葉ホラじゃないことを願うわ」
やはり心からだった、そして。
開幕となった、例年より三ヶ月程遅れてようやくだった。
開幕となった、そうして。
千佳は自分のクラスでクラスメイト達に話した。
「お約束だったわね」
「ああ、阪神ね」
「もういきなりだったね」
「三連敗ね」
「酷かったわね」
「三試合で二十一点取られてね」
憎むべき巨人にである。
「こっちはたった四点」
「凄かったわね」
「酷い三連戦だったわ」
「去年と全然変わらないわね」
「こんなのだとね」
「それでね」
千佳は友人達にさらに言った。
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