曇天に哭く修羅
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第三部
殺しに来てる 3
前書き
_〆(。。)
人間は汗を掻く。
汗が蒸発すると体温が下がる。
暗部が紫闇に対して絶え間なく攻め続けたのは激しい回避運動で汗を掻かせるため。
只でさえマイナス50度辺りにされた氷霧の中に居たのにそんなことをされれば[低体温症]になろうというもの。
「勝負は付いたも同然。他の龍帝メンバーが来る前に片付ける」
何処かから土色の弾丸が飛ぶ。
しかし紫闇は反応しない。
いや、体が動かないのだ。
身体機能に障害が起きている。
【盾梟・丸魔】
紫闇が体に張っている白銀の魔晄防壁が膨らんで丸くなった。
そこに土色の弾丸が直撃。
爆ぜて液体が散布。
目に悪そうな毒々しい色身。
雨のように降ってきたそれは紫闇の防壁を突き破って顔にかかる。
激痛が起こること自体は気にしない紫闇だが他の現象には戸惑う。
(毒か)
異能の毒は秒を刻む毎に体を蝕み目眩と吐き気を強くしていく。
だが紫闇は倒れない。
こんな状態でも戦えるように十分な訓練を積んであるのだ。
どんどん悪くなる体調に地震が如く揺れる視界であっても敵に向かう。
(これが立華紫闇。確かに《矢田狂伯》が私達を当てるだけのことは有る。『化け物』と言って差し支えない)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
紫闇は強い。
今戦っている暗部の誰もが一人なら絶対に負けていると認める程に。
しかしチームで勝つことが前提と言っても良い以上は紫闇一人で勝てない。
一人で勝とうと思うのならもっと強くならなければならないのだから。
紫闇が前に出ると足下が爆発。
地雷が有ったらしい。
おかしいと思った紫闇の思考は決して間違ってはいなかった。
そんな異能を持った【魔術師】は今の風天学園チームには居ない。
この地雷は《佐々木青獅》が一回戦で戦っていた時に他の【刻名館学園】メンバーが仕掛けておいたものだ。
青獅が一人で相手チーム全員と戦った理由の一つがそれだった。
だがそれだけではない。
他にも仕掛けが有る。
紫闇が周囲の建物を見ると窓ガラスの向こうに何かが設置されているのが見えた。
小銃のようだ。
魔術師には普通の兵器が通用しないのだがそれは魔晄防壁が有るから。
しかし【魔獣領域】で採取された特殊な材料を使えば対魔術師の弾丸を精製可能。
【魔神】の防壁をも貫通する。
弾丸が発射されガラスが割れたのを見て紫闇は満足し敗北を受け入れることにした。
(勉強になったよ)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
戦いは自分が思っているよりも以前に始まっているというつもりで臨む。
紫闇にとってその意識は収穫だ。
問題は暗部をどう凌ぐか。
このままだと死んでしまう。
紫闇の体が吹き飛ぶ。
しかし痛くはない。
同時に風天学園の3人が宙を舞う。
紫闇の体が受け止められる。
「大丈夫か、紫闇」
窮地を救ったのは紫闇の幼馴染み《的場聖持/まとばせいじ》だった。
遅れて駆け付けたもう一人の幼馴染み《エンド・プロヴィデンス》が黒鋼流の練氣術【氣死快清】による緑の光を放つ。
紫闇は直ぐに回復。
エンドと聖持が紫闇を見る。
二人とも真剣だ。
「約束しろ紫闇。もう二度と自分の命を粗末にするようなことはしないって」
「出来ないならもう俺達は何も言わない。勝手にしたら良い。好きにしろ」
紫闇が早く強くなる為には二人の言うことを拒んだ方が良いと頭では解っている。
しかしそれをすればエンドも聖持も紫闇から離れ去っていくことは明白。
「……約束する」
紫闇は親友との縁を切れない。
「紫闇が必死に頑張って強くなろうとしてるのは好ましいし応援してるんだ」
「けど何でここまで来れたのか、そして強くなれたのかを考えてくれ。それを考えた方が良い時期に来てるんだろうからな」
エンドと聖持の言葉が紫闇の胸に刺さり、頭にこびり付いた。
後書き
_〆(。。)
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