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曇天に哭く修羅

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第三部
  殺しに来てる

 
前書き
_〆(。。) 

 
試合開始から10分。

未だに会敵は無い。


(持久戦なのか?)


紫闇がそんなことを思っていた時のこと、何かが物凄い速さで真っ直ぐに飛んできた。


「水か。高圧で高速の。なかなかの威力だな。俺は受けても大丈夫だけど紫闇は気を付けた方が良いと思うぜ」


《エンド・プロヴィデンス》が持つ実力を知っている紫闇からすれば、この幼馴染みがあんな攻撃でケガをするわけが無いと信じているが、それでも紫闇に注意する程の力を持つ敵であることに嬉しくなった。


「足りてるかもな」


紫闇が敵を求めて駆け出す。

向かったのは水を放ったのであろう男子が消えた路地裏の角の先。


「おい待て紫闇ッ!!」


的場聖持(まとばせいじ)》を無視して突っ走る。

前方に目標が見えた。

これなら追い付けそうだ。

路地裏を抜けた先。

相手は大通りの交差点で止まる。


「かかったな立華」


紫闇と水の男子、二人を中心にして広範囲が黒い檻で覆われたことで紫闇と龍帝メンバーは分断されてしまった。

クリスが右拳に黄金の【魔晄(まこう)】を纏った拳によって[禍孔雀(かくじゃく)]で檻を殴ると青白い電撃が走って弾かれてしまう。

檻に別の【異能】を合わせたらしい。

解除には発動者の打倒が必要になってきそうだが、生徒会長の《島崎向子》によると、見付からないようステルスの異能を持つ魔術師が居る可能性も有るという。


「これなら他の連中を潰して来るから無茶はしてくれるなよ。行きましょう向子さん。パッパと終わらせて紫闇を助ける」


聖持と共に他の3人も散った。

紫闇の目前に居る水の敵は銃の形をした水色の魔晄外装を取り出し笑う。


「こいつは」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


前が見えない程の霧。

これは水の男子ではない。

別の誰かだ。

水から霧を発生させるメカニズムからして冷気を操る異能を持っているのだろう。

しかし黒鋼流の修業において視覚に頼れない状態でも戦える訓練はしている。

焦ることは無い。

紫闇は両手を下げてノーガード。

相手の攻撃に合わせてカウンターを取ることで状況の打開へと持っていくつもりだ。

しかし相手は来ない。

仕掛けて来る気配は皆無。


(読まれてる。予想以上に『プロ』だ)


向子が【暗部】のことを裏工作のプロフェッショナルと言った理由が解った。

風天学園は試合で戦うという真っ当な正攻法で仕留めようなんて生温い考えではない。

戦争における戦場と同じく相手の命を確実に奪おうという意志の下に行動している。

作戦もそれに即したもの。

だから相手を殺傷しても気にしないもう一人の紫闇はともかく『闘技者』の思考で居る表の紫闇はスポーツと同じ競い合いという土俵でしか通用しないのだ。

[兵士]や[暗殺者]のように策謀で相手の実力が発揮できないように罠へと陥れてから戦う暗部にとっては紫闇のことが手玉に取り易い獲物としか認識し出来ないのだろう。

それでもスペックで押し切れる戦闘能力を有した紫闇を相手に油断はしない。


(やってくれる……!)


マイナス何度くらいだろう。

紫闇の周囲の気温は。

霧を生んだ冷気使いの仕業。

高圧の水や氷の刃といった攻撃なら紫闇も対処できたが環境そのものを変えられてしまうと対抗する為の手段が無い。

敵の狙いは[低体温症]

御存知の通り、人間は体温が落ちてくると色々な症状に見舞われてしまう。

最終的には死ぬ。


(流石は暗部。俺と直接戦うリスクを極力減らして完殺を狙うとは恐れ入った)


感知能力を持たない紫闇は大ピンチなのだが彼は今とても嬉しい。

複数の異能を合わせて巧妙な手間を掛けてくる『群』の強さを活かした魔術師とは今までに戦った経験が無いから。

天覧武踊で戦う時は基本的に一人なので『個』の強さを売りにした魔術師となる。


「この状況を乗り越えたら強くなれるかもしれないな。ビビってる場合じゃない」
 
 

 
後書き
_〆(。。) 
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