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テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ―そして、僕の伝説―

作者:夕影
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第三十二話




「――あれ……?」


――いつものように朝の鍛錬を終え、昼食を食べた気分展開に甲板に出ると、いつもは甲板では見ない先客の姿に、僕はそんな声を出して首を傾げてしまう。


甲板に居た先客……その人物はアルヴィンであった。
ただ、アルヴィンはその肩に鳩のような鳥を乗せてなにやら手紙のような物を書いていた。


「――アルヴィン…?」


「――ん……お、優等生二号君か」


僕の声に気付き、アルヴィンは此方を見てニッと笑いそう言うと書いていた手を一度止めた。


「優等生二号君って……相変わらずその呼び名なんだね。それは…手紙?」


「こっちの方が俺は覚えやすいからな。あぁ……遠い国にいる美女宛てのな」




僕の言葉にニヤニヤと笑ってそう答えたアルヴィンに思わず苦笑いしてしまう。


「そ、そうなんだ……。えっと、それじゃあその鳥って…伝書鳩みたいなものなの?」


「ん、あぁ。…『シルフモドキ』っていう種類の鳥でな、コイツがまた頭が良くてな…ちゃんと送って欲しい場所に届けてくれるんだよ」


「へぇー…シルフモドキ、か……凄いなぁ」


アルヴィンの説明を聞き、思わずまじまじとアルヴィンの肩に乗って此方を見るシルフモドキを見てしまう。



「――そんで、優等生二号君はどうしたんだ?何か用があって此処に来たんだろ?」





「ん…ぁ、いや、僕はその…ちょっとした気分転換で来ただけだよ。手紙…邪魔してごめん」


「いやいや、気にすんなよ。別にこれといって大事な事書いてた訳じゃねーし。…なんだったらこの後他のヤツ連れて依頼でも行くか?」


「ぇ……でも……」


アルヴィンのそんな気遣いのような言葉に思わず遠慮がちになってしまう。アルヴィンはそんな僕の様子にニッと笑って口を開く。


「だから別に気にすんなって。さっき言ったように別に大事な事書いてた訳じゃねーし。ちったぁ大人の気遣いに頷いとけよ」


「う、うん…ありがとう。…でも、『大人の気遣い』に頷いておく訳だから、ちゃんと手紙を書いてから来てよ」
「へいへい、ちゃーんと書いて送っておくから、報酬良さそうな依頼頼んでおいてくれよ」


アルヴィンの言葉に頷き、最後に『ありがとう』、と言って笑うと依頼を受けに行くためにホールへと歩き出した。
それにしても……アルヴィンと手紙のやり取りしてる美女ってどんな人なんだろ…?



「――さぁて、…どうするかな」


――ホールへと入り後ろになった扉が閉まる際、アルヴィンのそんな声が聞こえた気がした。







―――――――――――――


「――《塩水晶》…?」


「――えぇ。まず分かってるのはそれだけみたいね」


――アルヴィンとのやり取りから数日。
ジュディスはニアタから受け取ったプレートを読み終えた。
そしてそのプレートに掛かれていた事は、ラザリスとラザリスの世界《ジルディア》を封印し直す方法であった。
そしてその内容は…本来封印する材料である星晶――それが枯渇して少なくなっている今、星晶の代用品による『封印次元』に頼るしかない、というものであった。
ニアタの残した情報によると、それには……《空色の石》、《羽があって飛び回る実》、《全身から汗を流すパン》のドクメントを構築する事が必要らしい。


この暗号染みた三つの必要品に、流石のアドリビトムの天才陣も頭を抱えているらしいが、その中で一つ…《空色の石》は分かったらしい。
それが、先程僕が名を出した《塩水晶》らしい。


「それで…その塩水晶ってどこにあるの?」


「リタからの詳細を見ると…ブラウニー坑道の大分奥にあるみたい。…本当はこの素材でラザリスが封印できるのか悩んでるんだけど、他に方法が無い以上、今ある方法をするしかないからね。それで、衛司はどうする…?」


「うん…分かった、僕も塩水晶の採取に行ってみるよ」


「そう、分かったわ。それじゃ、こっちも手早く他の参加者を探してみるわ」


アンジュの言葉に頷き、僕は準備の為に自室へと向かった。
塩水晶、か……どんなのだろうかなぁ…。






――――――――――――――



――あの後、塩水晶の採取メンバーは僕、メリア、カイル、しいな、エリーゼ(+ティポ)となった。

ブラウニー坑道の奥…確か前に一度行った時には塩水晶なんてなかった筈、と考えていたがその理由はよく分かった。
この坑道…伊達にしいなとすずの故郷であるミブナの里と繋がっている為、幾多のトラップや仕掛けが組み込まれている。

その一つに、僕もはまってしまったような、『此処が坑道の奥の行き止まりなんだ』と思わせる仕掛けがあったのだ。


その仕掛けの種明かしをされた時は、『なんで僕こんなのに引っかかったんだろ』とか思うものであった。
こういう時はなんて言えばいいか……あぁ、あれだ。
――その発想はなかった。



それで今現在、ブラウニー坑道の更に奥へと足を進めている訳だけど……。


「――……大丈夫、エリーゼ?」


「――は、はい…。大丈夫……です」


皆が前進していく中、エリーゼ(とティポ)が少し遅れたペースでついてきていた。
年相応の体力の問題か、このメンバーで身体年齢が低いエリーゼにとってやはり明かりがあるとはいえこの薄暗い坑道を僕達に合わせて歩くのは無理があったかもしれない。


「…エリーゼ、きつかったら引き返しても構わないんだよ?」

「き、きつくなんてありません!…衛司達には、村を助けてもらった恩もありますから…こういう所で少しでもお手伝いしたい…です!」


「そーだそーだ!だから何も言わずに連れてけー!!」


僕の言葉に、疲れながらも首を振ってそう応えるエリーゼと、僕の周りを飛び回るティポ。
そんな二人(?)の様子に僕は一つ吐息を漏らした後、小さく頷いた。






「……分かった。ただ、僕も隣をついて歩かせてもらうよ。もしエリーゼを離しちゃ、僕がジュードに怒られちゃうから」


「は、はい!…ありがとう…です」


「サンキュー、衛司君!!」


僕の言葉に嬉しそうに頷くエリーゼとティポ。
僕はそのまま皆より少し遅れながらもエリーゼとティポと同じ歩調で再び歩き出した。

だからカイルとしいなと一緒に前を歩くメリアさん……その黒々と見える何かをできればおさめて下さい。



―――――――――――――



ブラウニー坑道を奥へ奥へと進んでいると、ようやく大分先に大きく薄暗い坑道内の僅かな明かりの中で煌めくものが目についた。
やっと見えてきた、か…。そう安心していた時だった。



『(――主、何か……嫌な気配がします――)』


「――え…ヴォルト…嫌な気配って――」


「――皆、誰かいるよっ!!」

先に煌めくものに歩みを進めていくと不意に、肉体内にいるヴォルトの声が響き、その言葉に問い返そうとした最中、しいなの突然の声に視界を向ける。

すると、その先に…近付いた事で顔は見えないが大きな後ろ姿が確認出来た。
その瞬間…カイルの表情が変わった。


「――っ!アイツは――バルバトス…!!」


「「ええ!?」」


「「?」」


カイルの出した名前に、事情を知っている僕としいなは驚きの声を上げ、上手く理解出来ていないメリアとエリーゼ、ティポは首を傾げてしまう。
バルバトスって…こんな所にっ!?

「アイツも此処に跳ばされて来てたのかっ!!」


「!?カイルっ!!」



相手の正体が分かったと同時に、カイルは剣を抜きその相手に向け走り出す。此方の声に止まらず、カイルはそのまま走り続け――


「――バルバトォォォスッ!!」


――飛び込み一閃。だが、それは直撃することなく…瞬時に反応し振り返った相手の斧に防がれる。
そしてその顔を見て…僕も認識した。

巨大な斧を片手で扱う姿、長い青の髪に濃い色の肌、そして……攻撃してきた相手を確認し、溢れ出していく殺気。
……間違いなく……『バルバトス・ゲーティア』であった。



「ほう…、死に損ないが…まぁだ生きていたのか。妙な所へ飛ばされたせいで、我が飢えを満たす相手がいなくてなぁ…っ!!」

「ぐあぁっ!!」


バルバトスは言葉を出しながら、カイルの剣を防いでいる斧に力を込め、カイルを弾き飛ばす。


「カイルっ!!」


「っ!バルバトス…お前なんかに…父さんを殺させてたまるかっ!!」


「カイル、待ちなって!勝てる相手なのかい?」


「心配するな。その答えは一つしかない」


体勢を立て直し再びバルバトスに突撃しようとするカイルを止める。
しいなの問いに答えたのはバルバトスであった。


「貴様達はここで骸になるだけだ。逃げられると思うなよ」


「っ!!皆、武器を構えてっ!!エリーゼは後方に下がって支援をっ!!」


バルバトスの言葉と同時に更に溢れ出す殺気に、僕は皆に戦闘体勢に入る事を告げる。
正直…本当にヤバいかもしれないっ!!

そして僕達の様子にバルバトスは不気味に口元で笑みを浮かべると、斧を大きく振り上げ構える。



「さぁ…さぁさぁさぁさぁっ!俺の渇きを癒やせえぇえぇぇぇぇっ!!」



此処に…最も最悪な闘神との戦いが始まった――。




 
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