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CM猫

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第三章

「トラとクロ、タキシードのことね」
「名前そうしたんですね」
「ええ、少し灰色がかったキジトラ模様の子がトラで」
 まずはこの猫のことを話した。
「それで黒猫は黒で」
「あの白黒はですか」
「色がタキシードの感じだから」 
 それでというのだ。
「タキシードにしたの」
「そうだったんですね」
「それであの子達名前付けて飼いはじめたけれど」
 それでもというのだ。
「インスタグラムに画像投稿したらね」
「それがですか」
「動物扱ってる芸能事務所に注目されたの」
 そうなったというのだ。
「八条芸能にね」
「ああ、八条グループのですね」
「そう、あそこの事務所動物も扱っていて」 
 それでというのだ。
「あそこの事務所にスカウトしてもらって」
「CMにですね」
「出てね」
「俺そのCM観ましたけれど」
「そう、三匹揃って出して欲しいって条件でね」
「だから三匹一緒なんですね」
「それで契約したし」  
 それでというのだ。
「出ていたのよ」
「そうですか」
「そう、そしてね」
「CMにも出てですか」
「頑張ってもらってるの。ただ基本はね」
 綾乃は峠谷に電話の向こうで笑顔で話した。
「三匹共私の家にいるから」
「長野にですか」
「仕事のお話があった時にね」
 その時だけというのだ。
「東京まで行って収録して」
「そうしているんですか」
「今も私の家にいるわよ」
「そうですか」
「三匹共元気よ」
 綾乃は笑顔でこうも言った。
「だからね」
「それで、ですか」
「安心してね」
「わかりました、可愛がってくれてますね」
 峠谷はこうも言った。
「三匹共毛並み凄くいいし表情も明るいし」
「正直甘やかしてるわ」
「そうですか」
「私もお母さんも妹もね」
 三人でというのだ。
「そうしているわ」
「そうですか、それは何よりですね」
「ええ、じゃあね」
「三匹これからもお願いします」
 こう言ってだ、そしてだった。
 峠谷は綾乃に度々三匹のことを聞く様になった、時々会わせてもらったが三匹共毛並みはよく表情は穏やかだった。そのうえ。
 峠谷を見るとそれぞれ親し気な態度で近付いてきた、綾乃はその時いつもこう言った。
「自分達を助けてくれた人のことは覚えているのね」
「俺が川に流されている時に助けたことをですか」
「だから今も感謝してるのよ」
「それは何よりですね」
 峠谷は綾乃のその言葉に笑顔にいつも笑顔になった、そうしてだった。 
 それからも三匹のことを見ていった、別の家に暮らしているが彼と三匹の絆はあった。それは確かなものだった。


CM猫   完


                  2020・6・19 
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