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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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口紅

<ムオル>

「アルル…もう一度だけ言っておくよ…どんなにお父さんの事に腹が立っても、ポポタ君の前で彼のご両親の事を悪く言ってはダメだよ!」
辺りは暗くなり、アルルとティミーは村へと戻ってきた。
そしてタリーナの家の前で、ティミーがアルルに念を押している。
「うん、分かってるわ…彼の前だけでなく、取り乱さないわ…もう分かったから、そう言う男だって事に…」


「只今戻りました…申し訳ありません、ご心配掛けて…」
「遅くなって済みません…」
アルルとティミーが室内へ入ると、一斉に視線が二人へ向けられた。

「何だぁ?遅いと思ったら、イチャついてキスしてたのか!」
「な、何ですか…藪から棒に!!」
戻って早々のリュカの言葉に、慌てまくるティミー。
「だってキスしてたんだろ?」
「な、何を根拠に!!」

「……お前、女装の趣味があるの?」
「はぁ?無いですよ、そんなの!」
「じゃぁ、その口に付いた口紅は、アルルから転移した物だろ!」
慌てて口を押さえるティミー。
「ティ、ティミー…私、口紅なんて付けてないよ…」

「騙されやすい男だな!簡単に引っかかってやんの!…お前、自分の惚れた女が化粧してるかどうか知っておけよ!」
「くっ!以後、注意します!」
室内は笑いに満ちていた。
アルルとティミーの二人は顔を真っ赤にして俯いてるが…

「アルル…僕の息子は、こう言う情けない息子なんだ。だからよろしくな!コイツなら100%君を幸せにする事が出来る…でも、こんな男だから自分を犠牲にして君を幸せにしようと暴走しかねない!そうならない様に、君が息子を幸せにしてやってくれ。そして二人揃って幸せになってほしい…」
リュカの優しい言葉に、アルルとティミーが揃って頷く。
そんな二人を見たリュカは、目と顎を使いティミーに合図する…『キスしろ!』と!
ティミーは戸惑い、回りに助けを求める様に見回したが、皆が同じ思いを込めた目で見る為、観念するしかなかった。

「「……………」」
リュカとビアンカのキスに比べれば、ぎこちない挨拶の様なモノだが、それでも互いを愛する心が伝わってくる爽やかなキスだ。
二人が唇を離すと、皆から拍手が巻き起こり、タリーナが手料理でもてなしてくれた。
「大した物では無いけれど、腕によりを掛けて造らせてもらったわ!どうぞ召し上がって下さい」
その晩は盛大に盛り上がった…
アルルとティミーの事で…これまでの冒険の事で…更にはこれからの冒険の事で………
そして、アルルとポポタの父親の事で………




<海上>

カンダタの盗賊ネットワークの情報により、ある程度世界の状況が分かってきたアルル一行。
タリーナのもてなしに甘え、楽しい夕餉を過ごしたムオルを後にし、船に戻り出港の準備を整えている。
アルルとティミーは船の隅でイチャイチャする………事もなく、真面目に割り当てられた仕事をこなすカップルだ。

そんな二人を眺めながらリュカは…
「つまらん、つまらん……人目も憚らずキャッキャッウフフとイチャ付けば良いのに…欲望を押し殺して仕事するなよ!」
と、らしと言えば彼らしい呟きを吐く。

「お父様、お二人は欲望を押し殺してはいませんわ!根っから真面目すぎて、そう言う思考に到達しないのですわ!」
最早、誰もリュカに対して『手伝え』とは言わない…
怖いからではなく、余計な仕事を増やすから…
マリーも仕事をしてない様に見えるが、実は違う…
リュカが余計な事をしない様に、皆が手を離せない時にリュカのお守りをするのが彼女の使命だ。
この一団での暗黙のルールなのだ!


準備も整い、船が動き出す…
今後の事を話し合う為に、アルル達が一斉にリュカの周りへ集まってくる…
余所で話し合いを行うとリュカが参加しないので、彼の周りで行い強制参加させるのが、このパーティーの習わしだ!

「俺の仕入れた情報では、此処から南に『ジパング』と言う国がある。其処の女王が『パープルオーブ』を持ってるって話だ!」
「じょ、女王ですか…」
あからさまに不安気な顔をするアルル。
「あの国はヤバイみたいだよ!『ヤマタノオロチ』って化け物が出て、生贄を与えないと国を襲うそうだ!そこで女王ヒミコは神のお告げを受け、定期的に少女を生贄に捧げているらしいよ…」
「何ぃ!美少女を生贄に捧げるだとぉ!!許せん、僕達がジパングを救わねば!!」
元海賊モニカの情報を聞き、急にやる気を出すリュカ………美少女とは一言も言って無いのに…

「では、このまま南下しジパングへ…その後、ランシールへ赴くコースで良いですね!?」
アルルが会議の纏めに入る…
「おっと、待ってくれ!もう一つ情報があるんだが…変化の杖についての…」
「まぁ、カンダタ様!本当ですか!?変化の杖は何処にあるのですか?」
寄り道をしたくないアルルに睨まれるも、後に情報を持っていた事がリュカにバレた時の事が恐ろしくて、出し惜しみすることなくさらけ出すカンダタ。

「あ、あぁ…変化の杖は『サマンオサ』の王様が持っているらしい…」
「サマンオサ…あの高い山脈に囲まれた国か………行けなくはないが、あの山脈越えは厳しいと思うよ!」
「そうですよねモニカさん!簡単に行けるのなら寄り道も良いけど、ムリして行く事は無いですよ!」
モニカの提示した情報を嬉しそうに指示するアルル。

「…いや、そうでも無いんだ………ジパングの直ぐ北にある祠に、サマンオサへ通じる旅の扉があるらしいんだ!…だから、ジパングの後にサマンオサへ行くのはどうだ?」
《この男、余計な事を!!幽霊船なんかどうでもいいじゃない!!》
鬼の形相でカンダタを睨むアルル…
「では決定ですわね!ジパング・サマンオサ・ランシールの順番で世界を回りましょう!」
「……………」
アルルは何も答えない…ただ、渋い表情で頷くだけ…


今後の進路も決まり、リュカの前から解散する面々。
サマンオサ行きに納得のいかないアルルは、ティミーと共に彼の部屋に行き愚痴りだす。
「どう考えたって幽霊船なんか関係ないじゃない!…仮に、幽霊船にオーブがあったとしても、その情報を入手してからだって良いじゃない!!」

「ま、まぁまぁ…確かに父さんは身勝手だけど、その身勝手さで後日重要な手懸かりを得る事も多々あるんだ!」
「はぁ………」
アルルも分かっているのだ…何を言っても無駄な事は…
溜息をつくアルルの手を握り、瞳を見つめるティミー。
彼女にキスをするのに、まだ勇気を振るわないと出来ない男…
(ガタッ)
不意にドアの外で物音がした。

不審に思い、ティミーがドアを開けると………其処にはウルフとマリーが、ドアの隙間から二人を覗いているではないか!!
「な、何やってんだ!」
「あ!バレましたわ!!」
「ウルフ君…君まで…」
「いや…ち、違うんだ!!リュ、リュカさんがね…『今覗けば、二人のエッチが見れるよ!』って言うからさ!………つい………」
覗いてた事に変わりないのに、無意味な言い訳をするウルフ。

「あ、あのクソ親父!!」
顔を真っ赤にして激怒するティミー!
凄まじい勢いで父親の元へかけ出した!
「行っちゃいましたわ…」
「よ、良かった~…殴られるかと思った!」
「ちょっと!ウルフ、マリーちゃん!私達まだ付き合い始めたばかりなんだからね!……邪魔…しないでよ…もう!」
アルルはキスを…更にはその先をも期待してたので、残念そうに二人を叱る。
「ごめん、アルル…リュカさんに踊らされました…」

今、甲板は凄い事になっている…
遠慮することなく魔法を使い、ティミーがリュカに攻撃を仕掛けている…
ビアンカのお説教が始まるまでの数分間、甲板上に居た者達は生きた心地がしなかったと言う…
因みにティミーの攻撃は掠りもしなかった様だ。



 
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