曇天に哭く修羅
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第三部
Extra thoughts
前書き
_〆(。。)
佐々木青獅の名を捨てた二十七代目《九月院瞬崩》にとって今夜の天覧武踊は期待外れも良いところだった。
相手校の中でも最上位の五名。
選び抜かれた魔術師だと言うのに汗の一つも掻かせることが出来ないのだから。
闘争に対する欲求不満。
紫闇と同じで満たされない。
もっと強い相手が現れないか。
そんな風に思ってしまう。
「危うく襲いそうになったよ」
自分に会いに来た紫闇。
彼を大舞台でぶちのめすという目的の為に修練しているのに台無しにするわけにはいかないので必死に衝動を抑えた。
「不満そうじゃな」
目の前には禿頭の老人。
「師匠」
「勝負ば見させてもうた。何ゆえ手ぇ抜いた? あんな連中ごとき、お前なら目したと同時に潰せたろうが」
この老人は流永/りゅうえい。
二十六代目・瞬崩。
黒鋼焔の祖父である弥以覇の好敵手。
「わざとですよ。長引かせれば『あいつ』が見てくれるかもと思ったんでねぇ。まあ弱すぎて直ぐに終わっちゃったんですけど」
「あいつ……立華紫闇のことか。ふん。あげなもん所詮は黒鋼の劣化模造品。お前が気にかけるのは本物のみじゃ」
青獅は自分が認めた闘技者の紫闇を馬鹿にされたくは無いが反論しなかった。
彼はこんな自分に期待して黒鋼の打倒という夢を託し、青獅を鍛えてくれたのだから。
「龍帝学園と当たったら邪魔になる奴等を蹴散らして立華を仕留めます。そして師匠の念願も叶える。伝説の一族だろうと関係ない」
流永の力で150㎝ほどだった身長は190㎝ほどに達し莫大な量の【魔晄】を得る。
しかしどれだけ基礎能力が上がろうとも凡人以下の無才でしかない青獅には【天地崩穿流】の術理を覚えることは至難。
だから家族を捨てた。
妹は勿論、療養中の母と面会することも止め、その時間を修業に回す。
人間らしさを排除することになってしまったが壁を越えて強くなることが出来たのだから後悔などしていない。
そう思っていた筈なのに。
『縁を切る?』
『お兄ちゃんが居なくなったらわたしはこれからどうやって生きれば良いの!?』
『青獅が決めたことなら……』
妹の泣き顔、母の悲痛な顔が頭にこびりついて離れようとしない。
「お前の中に残っちょる人間性が雑念をもたらしとるんじゃ。なぁに心配ない。お前は儂とは違う。人間性すら捨てられる」
そうすれば青獅は自分よりも高みに行けると流永は信じていた。
「儂より高く翔べ、二十七代目」
後書き
_〆(。。)
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