おっちょこちょいのかよちゃん
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55 伝わった想い
前書き
《前回》
かよ子は夏休みの宿題をしながら二年生になった時の事を回想する。その時の杉山と大野のコンビは授業・掃除・運動会問わず様々な場面で活躍していたのだった!!
かよ子は図書館で読書感想文に読む本と自由研究の工作の参考にする本を借りた。その時だった。
「おう、山田あ!」
かよ子はどきっとした。あの自分の好きな男子だった。
「す、杉山君!」
「お前ももしかして読書感想文の宿題か?」
「う、うん。あと自由研究の参考になる本も借りたよ」
「そっか、実は俺もなんだ。あれはちと面倒くさいよなあ。でもやんないと山田笑太みたいになっちまうから気を付けないとな」
「う、うん、そうだね」
山田笑太とはかよ子のクラスメイトのバカ男子だった。いつも「アハハハ」と笑う男子で、いつもテストは0点、宿題も毎回やってこないというクラス一の問題児だった。
(そういえば山田とも同じ苗字でなんか関わり合ったっけ・・・)
「じゃあなあ」
「う、うん、じゃあね」
かよ子は杉山と別れた。かよ子は三年生になったばかりの時を思い出す。
三年生になった。
「あ、かよちゃ〜ん!また同じクラスになったんだねえ〜」
「ま、まるちゃん、たまちゃん!!」
かよ子はまる子やたまえとは一年生の頃同じクラスだったのだが、二年生の頃は違うクラスとなっていた。
「同じクラスになれたねえ〜」
「うん!また、宜しくね!」
そしてかよ子にはもう一つ、嬉しい事があった。
「杉山、また、同じクラスか!」
「よし、二人で張り切って行こうぜ!」
(やった、杉山君ともまた同じクラスなんだ・・・!!)
かよ子は三年連続で好きな男子と同じクラスになれたのだ。
「大野君と杉山君かあ〜。あの二人がいるとクラスは安泰って感じだねえ〜」
「うん、あの二人、頼りになるもんね」
(また、杉山君に助けて貰えるかな・・・?)
ある日、かよ子はまる子と共に帰っていた。
「ねえねえ、まるちゃんは将来の夢って何?」
「私は漫画家かな?かよちゃんは?」
かよ子は迷った。まる子にこの事を伝えようか、と。
「わ、私は、は、恥ずかしいけど・・・、お、お嫁さんになる事かな・・・」
「へえ〜、お嫁さんに!」
「私、おっちょこちょいだから、しっかりした男子と結婚したいなって・・・」
「うわあ、誰!?」
「う・・・」
かよ子は返答に迷った。だが、言ってみようと思った。
「す、杉山君・・・!!」
「へえ、杉山君かあ〜、あれはしっかり者だから将来安泰だよお〜。かよちゃんは見る目があるねえ〜」
「えへへへ、そうかな?」
それぞれの秘密はお互いに打ち明けたつもりだった。だが、ここでとんだ誤解が始まる。
「ちょっと、かよちゃん」
「まるちゃん、どうしたの?」
「漫画家の事、長山君に喋ったでしょ?」
「え!?長山君に?ううん、喋ってないよ」
かよ子には身に覚えのない事であった。
「うそ!だってアタシかよちゃんにしか言ってないのに、長山君知ってたもん!そんなの変じゃん!!」
「だって、本当に言ってないもん!信じて!」
「信じたいのに信じられないよ。だってかよちゃんにしか言ってないんだから。私だってかよちゃんの好きな人誰にも言ってないのにさ」
その時、遠くから山田笑太が入り込んでくる。
「え?山田かよ子のすきなひと?だれだい?おしえて、おしえて!!」
山田を無視してまる子は言葉を続ける。
「兎に角、もう信じられないよ」
まる子はそう言って去った。
(そんな、私、誰にも言ってないよ・・・。誤解だよ・・・!)
かよ子はおっちょこちょい同士の友達を失う事に心が落ち着かなくなった。それどころかまる子に自分が杉山が好きだという事を言いふらされそうなのが不安だった。
(杉山君、どうすればいいのかな・・・?)
かよ子はふと好きな男子の事を考える。だが、そんな事で杉山が助けてくれるとは思えない。
「おい、山田。おまえがすきなひとってだれだい?オイラとおなじみょうじのよしみでおしえてよお~」
しかし、同じ苗字の山田かよ子に無視される山田だった。
家にいると、母が部屋に入ってきた。
「どうしたの、電気もつけないで。はい、新しいノート買ってきてあげたわよ」
「どうもありがとう」
「元気ないんじゃない?」
「別に、平気だよ」
「そ、ならいいけど。かよ子、ちゃんとノートに名前書きなさいよ。後でおやつ用意してあげるから」
「はあい」
母は部屋を出た。
(はあ、憂鬱だなあ、まるちゃん誤解してるよ。どうすれば解ってくれるかな・・・」
その時、かよ子はノートに「山田が」と書いてしまった。
「あ、間違えちゃった。これじゃ、『山田がよ子』だよ。どうして私ってこんなにおっちょこちょいなんだろう・・・」
翌日、まる子は誤解に気付いた。まる子と長山は二年生の頃も同じクラスで長山はその二年生の時の文集でまる子が漫画家になりたいと書いていたから知っていたのだという。
だが、ここでとんでもないことが起きてしまった。山田に名前を書き損じたノートを見られてしまい、自分は山田が好きと周囲から勘違いされる羽目になってしまった。
その時だった。
「何言ってんのさ!かよちゃんが好きなのはね、山田じゃなくて杉山君だよお!!!」
冷静さを失ったまる子によって自分が杉山だと公開されてしまった。誤解された上に思い切り周りに秘密を明かされてしまった。
(これが杉山君に聞こえたら終わりだよ・・・)
だが、その後日、杉山から呼ばれた。
「山田」
「す、杉山君!?」
「お前、俺が好きなのか」
「う、うん、嘘じゃないんだ。で、でも・・・」
かよ子は赤面した。
「もし、迷惑だったら、やめるよ、ごめんね・・・!!」
「いいよ、気にすんなよ。だが、おっちょこちょいを治すように頑張れよな」
「う、うん!!」
杉山からは嫌われなかった。でも、おっちょこちょいを治したい。そう思うかよ子だった。
(それであのノートを山田が見てとんでもない事になって、まるちゃんに自分が杉山君が好きだって明かされちゃったけど、あの時のまるちゃんには寧ろ感謝したよ・・・。杉山君に気持ちを伝える事ができたんだから・・・)
だが、その後、かよ子の元の日常が脅かされたのも事実だ。日本赤軍や異世界の人間達から元の日常を取り戻すためにかよ子はまた戦い続ける。そう思いながら、かよ子は夏休みの宿題を進めるのだった。
後書き
次回は・・・
「森の石松の物語」
夏休みがあり、2学期が始まった。かよ子は杉山達と例の秘密基地に向かう。そんな中組織「義元」や森の石松と再会する。かよ子達は石松に二つの異世界について詳しく聞こうとして・・・。
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