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【完結】RE: ハイスクール D×D +夜天の書(TS転生オリ主最強、アンチもあるよ?)

作者:羽田京
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第4章 ???×夜天の書
  第21話 TS転生オリ主最強アンチヒーローはやて



 小学校が、臨時休校になった。


 理由は、昨晩、校庭に隕石が落ちたから、らしい。
 ニュースでも話題になり、映像をみて驚く。
 慣れ親しんだグラウンドには、深くえぐれたクレーターがあったのだから。
 とはいえ、子どもにとっては、関係のない話だった。
 少女は、降ってわいた休みを使い、友達と遊ぶことにする。
 

 その日は、梅雨まっただ中の6月にあって、珍しく快晴だった。
 つまり、暑さと湿気が、絶好調である。
 子どもと言えども、つらいものはつらい。
 なので、河原で友達と遊んでいた。


「あれ?なんだろう、これ」


 日はまだ高いものの、夕方になり、各自帰宅の途についたとき。
 一人になった少女は、偶然、チカチカと光を反射する物体を見つけた。
 近づけば、足元散らばるのは、青い石。


「うわあ、きれいな石……」


 少女も、小さいとはいえ女の子。
 光りものは、大好きだった。
 おはじき、ビーダマ、ビーズ。
 どれも、彼女にとっては、宝物だった。
 そんな少女にとって、大きめのビーダマサイズの綺麗な石は、宝の山にみえたのだろう。 


「いち、にい、さん……はち、きゅう。9個もある!」


 笑顔で、足元の石を拾い集める。
 あちこちに飛び散っているせいで、集めるのは大変だった。
 が、満足のいく収穫だった。
 掌に載せた、透き通るような青く光る石を眺める。


 よくみると、記号のようなものが中に見えた。
 ひとつひとつに、異なる記号がはいっている。
 なんの記号だろう、と考えて、思いつく。


「そうだ。時計に書いてある変な文字とおなじだ」


 たしか、あれは、ローマ数字だと、父が言っていた覚えがある。
 あいにく、番号を読むことはできなかった。
 が、一つ謎がとけたことで、ご機嫌だった。 
 父母に自慢しようと、元気よく持って帰る。


 明日に控えた誕生日に思いをはせ、頬が緩む。
 学校は休みになるし、綺麗な石まで手に入った。
 今日は、いいことずくめだ。
 彼女の両親は、クリスチャンであり、日曜のミサにはよく連れて行って貰っていた。
 だから、神に感謝した。


――――ちょっと早いけど、神様がくれた、誕生日プレゼントなのかなあ 





 深夜、駒王町にある小学校の校庭で、轟音が鳴り響いた。
 青白い光とともに、地面をえぐった物体は――女性と少女。
 悪魔陣営は、この事態を「隕石による衝突」として隠ぺいした。
 光と衝撃音は、近隣一帯に知れ渡っており、完全に隠すことは不可能と判断したからだった。


 次の日、その小学校は、休校になった。
 




 現魔王サーゼクス・ルシファーは、駒王町に急行していた。
 もともと、仕事に次ぐ仕事で過労気味だった彼は、明日にでも、妹のリアスが納めるこの街に視察に出かける予定だった。


 今、彼が急いでいるわけ、それは、異常な魔力の高まりを感知したからだ。
 魔力から判断して、ランキングトップ10クラス。
 天使陣営のミカエルや堕天使陣営のアザゼルが、直々に侵略してきた可能性すらある。
 この非常事態に、最高戦力である魔王が動くことになったのだ。


「これは……この女性と少女が異常な魔力の原因なのか?」


 現場に到着した彼は、困惑していた。
 魔力の出現元である小学校の校庭には、クレーターができていた。
 その中心部に横たわるのは、気絶している妙齢の女性と10才にも満たない少女。


「いや、少女のほうは、すでに亡くなっているな。
 女性のほうも、ひどく衰弱しているようだ。
 いずれにせよ、爆発的な魔力の原因は、彼女たちに尋ねるしかない、か」


 戦争の勃発という最悪の事態を回避できたことで、安堵する。
 とりあえず、部下を呼び、支配下の病院まで搬送する。
 女性のほうからは、人間とは思えないほどの魔力を感じられた。
 よって、目が覚めるまで、サーゼクス本人が、駒王町で監視することになった。


 次の日の夜。
 間の悪いことに、はぐれ悪魔の出現が知らされる。
 サーゼクスは、ちょうどすぐに対処できる位置にいた。
 生真面目な彼は、部下の制止を振り切り、直接討伐に向かう。
 その途中だった。
 住宅街に悲鳴が鳴り響き、現場に急行した。


「なんだ!?この魔力の高まりは……!」


 現場に向かう途中。
 突如として、莫大な魔力が出現し、青い光が天を貫いた。
 頭上には美しい満月と青い光に包まれた人影が見える。


(事情は分からないが、アレは危険だ)


 ようやく近くまで接近すると、人影は、幼い少女だった。
 一瞬とまどうが、すぐに振り払う。
 危険性を本能で直観した彼は、すぐさま攻撃した。
 試しに、消滅の魔力を放つが、青い物体は、びくともせずはじいてしまう。


 突然の攻撃に身をすくめた姿は、ただの無力な少女にしか見えなかった。
 やはり、事情は分からない。
 はぐれ悪魔を倒したのは、おそらく彼女だろう。
 血に濡れた姿から、襲われて怪我でもしたのかも知れない。
 だが、放っておけば破壊をまき散らしかねない。
 と、サークスは、判断した。


――――もし、ここで彼が対話を選べば、違った結末を迎えたかもしれない。


「リアスと同じくらいの年ごろだが、手加減するわけにはいかないな…ッ!」


 だが、彼は、戦いを選択した。
 あれは、危険な存在。
 少女の形をしているが、問答無用で攻撃することを決断する。
 手始めに、先ほどよりやや強めの魔力弾で攻撃した。
 戦いに不慣れなのか、再度、攻撃されたことで、少女は身をすくめる、


 が、視認できる距離になり。
 彼に気づいた少女は、青い光を収束し、放ってきた。
 叫び声をあげているが、錯乱しているのか要領を得ない。
 すぐさま、彼も応戦し、『消滅の魔力』を至近距離から放った。
 しばらく、つばぜり合いが続くが、徐々にサーゼクスが押し負けていく。
 哄笑をあげる彼女の瞳に映る感情は、憎悪一色。


 もう少しで、こちらにエネルギーの本流が届く。
 安堵の笑みを浮かべる少女をみて。
 しかし。
 彼は、余裕の表情を崩さなかった。
 次の瞬間、彼女の背後で爆発が起こる。
 戦闘経験など皆無な彼女は、ほんの一瞬、集中力をとぎらせてしまう。


「もらった!」


 その瞬間を見逃すサーゼクスではなかった。
 出力を最大にした『消滅の魔力』は、少女へと吸い込まれていき――青い光を纏った少女は消え去った。
 彼女の断末魔が、耳にこびり付いて離れない。
 なんとも言えない後味の悪さを抱えながら、彼は、現場へと向かうのだった。





「お父さんっ、お母さんっ!」


 少女は、目の前の光景が、信じられなかった。
 誕生日を控えた夜。
 いつも通りに、母とベッドで寝ていた。
 が。
 夜中に突如、大きな音が響き、たたき起こされた。
 混乱しつつ目が覚めた少女が見たものは。


――――彼女を庇うかのように、覆いかぶさった血だらけの父と母の姿だった。


「ひいっ!」


 彼女を守るかのように重なる父母の上には、醜悪な異形の姿があった。
 訳も分からず、頭の中は、フリーズしてしまう。
 その一方で、どこか冷静な部分が、このまま死ぬんだな、と告げていた。 
 脳裏に、様々な疑問が駆け巡る。


――なぜ、両親は死なねばならないのか


――なぜ、自分は、殺されるのか


――なぜ、目の前の異形は、笑っているのか


「ああ、あああ、うああああぁあぁぁぁぁっ!!!」


 ぴくりとも動かない両親に縋り付き、慟哭する。
 物言わぬ彼らをみて、絶望する。
 溢れ出す感情のまま、絶叫した。


「うぐっ!」


 異形は、叫び声をあげる少女を煩わしいとでもいうに、蹴り飛ばした。
 壁に叩きつけられ、今まで感じたことのないほどの激痛が全身に走る。
 床に這いつくばった少女は、それでも諦めなかった。


(逃げなくちゃ…!)


 身を張ってかばってくれた両親をみて、どうにかしようとあがく。
 自分が死ねば、彼らの行動が無駄になってしまう。
 その一心で、痛む身体を引きずって逃げようとする。
 だが、異形は、そんな彼女をあざ笑うかのように、甚振り、ゆっくりととどめを刺そうとしていた。 


「ぐ、う、ううぅ……」


 気力を振り絞って逃げようとする少女。
 だが、どう考えても逃げられそうにない。
 そんな絶望し涙を流す少女の目に、青い輝きが映った。
 その光は、昼間、拾ってきた青い石から放たれている。
 血に濡れた少女は、とっさにその石にすがった。


――――お願い、僕を助けて!


 甚振られ、苦悶と絶望の中、青く輝く石を握りしめ――光に包まれた。 
 そのとき、少女は、莫大な力を手に入れる。
 願いを叶える宝石――ジュエルシードの魔力を得て、復讐者が誕生した。
 少女は、突然の出来事に一瞬戸惑うが、すぐにやるべきことを成した。
 いままさに襲い掛かろうとしていた化け物を紙切れのように、引き裂きばらばらにする。


「アハ、あはははっはハハハハ!!」


 憎悪に支配された彼女は、狂ったように笑い声をあげる。
 いままでにないほど力が湧いて出てくる。
 気分は絶好調だ。
 とりあえず化け物は倒した。
 さあ、次はどうしよう、と考えたところで、


――――ぴくりとも動かない両親の姿を見てしまった


 一気に頭が冷えていく。
 後に残されたのは、親を失うことを恐れる幼子だった。
 高ぶる気持ちも押さえられ、必死に、考える。


「そ、そうだ……病院に連れて行かないと。救急車!救急車を呼ばないと!」


 9歳になったばかりの少女に、冷静な判断などできるわけがない。
 まずは、お父さんとお母さんを助けないと、電話を取りにいかないと。 
 病院にいって、お医者さんに診てもらえばきっと助かる。
 またお父さんとお母さんに会える。


 身体の一部が抉れ、大量の血を流す姿は、明らかに手遅れだった。
 だが、幼い少女には、それがわからない。
 きっと大丈夫だと自分に言い聞かせながら、急いで受話器に縋り付いた。


「あ、あれ、救急車って何番だっけ?110番は、警察だから……ああ、早く、早くしないと」


 焦りからうまく考えがまとまらない。
 空転する思考の中で、初めて自分が青白い光に包まれていることに気づいた。
 理由はよくわからないが、拾ってきた青い石のおかげで力らしい。
 誕生会の席で、みんなを驚かせようと思って持ってきたものだった。


 身体の中に、9つの石が溶け込んでいる感触がある。 
 手に入れた力の凄さは、化け物の残骸が物語っていた。
 もしやと思い、溢れ出す力に願う。


「お父さんとお母さんを助けて!お願い!」


 魔法のような奇跡を起こした力。
 一縷の希望を胸に精一杯祈るが、無情にも何も起こらなかった。
 落胆と、深い絶望が襲い掛かるが、気力で振り払う。
 ふう、息を吐いて、心を落ち着かせながら、再度、救急車を呼ぼうとして、


――――殺した化け物と似たような気配の接近を感知した。


(また僕たちを襲うつもりなの!?早く病院にいかないといけないのに!)


 同時に、先ほどまで感じていた気持ち。
 怒りと絶望と憎悪がない交ぜになった感情が鎌首をもたげる。
 暗い感情と焦る気持ちが、激しい衝動となって湧き上がる。
 邪魔するなら排除しなければならない。 
 そう思ったとき、殺されかかった記憶が蘇り、身体がぶるりと震える。


(いや、大丈夫。いまの僕なら、あんな化け物に負けるわけがない)


 震える身体を落ち着けようと深呼吸して、決意した。
 この奇跡のような力は、きっと神様が与えてくれたに違いない。
 両親が共に敬虔な信徒だった少女は、そう考えた。


「僕の……僕の家族を奪われてたまるか」


 家族を守りたい。
 その一心で、立ち向かう。
 なんとなくだが、力の使い方は、身体の中の石たちが教えてくれる。
 青白い光を纏ったまま、ジュエルシードの魔力で飛翔した。


「なっ!?」


 上空に飛び出た途端、光の玉――魔力弾で攻撃された。
 驚きとともに身をすくめるが、身体には傷一つない。
 辺りを見回すが、慣れない彼女は、飛ぶことで精一杯だった。
 どこだろう、と周囲を見回したところで。
 再度攻撃された。


 驚きの声をあげて、身をかばうが、やはり無傷だった。
 ほう、と安堵するとともに。
 攻撃された方向を見ると、飛翔する物体が一つ。
 絶叫とともに、接近してきた異形の仲間――魔王サーゼクス・ルシファーに挑みかかった。


「おまえもアイツの仲間か!!邪魔をするなああアッ!」


 本能で魔力の扱い方を悟り、力任せに、魔力の本流を放った。
 相手も応戦し、魔力を放ってくる。
 エネルギーのぶつかり合いが続く。
 初めての戦いで緊張する彼女にとって、永遠とも思える時間。
 だが。
 徐々に、こちらが押していく。


(やった、これで勝てる!)


 だが、ここに来て経験のなさが露呈した。
 まだ止めを刺す前なのにもかかわらず、肩の力を抜いてしまう。
 その隙を見計らったように。
 背後で、轟音が鳴り響く。


「えっ?」


 何事かと、視線を逸らした刹那。
 放出していた力が押し返され、光に包まれる。
 全身を焼き尽くすような痛みの中。
 気力を振り絞って、抵抗する。


「そんな、僕は負けない、負けるわけない!」


―――だって、


「神様が僕にこの力をくれたんだもん!お父さんとお母さんを助けるんだもん!だからッ」


――――負けるわけにはいかない!


 歯を食いしばって、耐える。
 なけなしの力を振り絞って、押し返そうとする。
 だが、現実は非常だった。
 身を守る青白い光は、徐々に削られていく。


「いやだ、いやだよぉ!僕が負けたら、お父さんとお母さんが死んじゃう。もう会えなくなっちゃう!そんなの、いやだ。いやだよぉっ!!」


 スパークする視界の中、必死に叫ぶ。
 負けるわけにはいかないと、己を叱咤する。
 激痛に堪え、絶望的な状況でもあきらめない。
 彼女の願いはただ一つ。
 もう一度、あの幸せな日々に戻ること。


 けれども。
 たった9才の幼子が、どんなに健気に抗おうとしても。
 偶然手に入れた魔法の力に縋る様に願いを込めても。
 再び奇跡が起きることはなかった。


「うああああぁああ!!」


 徐々に崩壊していく身体。
 摩耗していく精神。
 流れる血も、流す涙も、とうに尽き果てた。
 既に、身体の感覚はなく、視界も閉ざされている。
 それでも。
 最後の最後まで、彼女は、諦めなかった。


「―――ッ!」


 ただ家族との日常が欲しかっただけの少女。
 だがしかし。
 身体のすべて、魂の一片まで、『消滅の魔力』に浸食されたことで。
 家族を案じる余裕はなくなっていく。


――――お前たちだけは、絶対に……絶対に許さない!!


 最期に、呪詛を残し、哀れな少女は、この世から消滅した。
 周囲に目撃者は皆無。
 彼女が生きた証を知るのは、相対したサーゼクスのみ――のはずだった。
 しかしながら。
 少女と同化したジュエルシードは、消える寸前になって再び奇跡を起こした。


 苦痛と憎悪に支配された彼女が最期に願ったのもの。
 奇跡を願い、奇跡は起きた。
 けれども。
 その願いは――――復讐だった。
少女が、本当に欲しかったものは、何一つ与えてくれなかったのに。


 その日、平和な家庭が、ひとつ消え去った。
 新聞記事に一家惨殺事件として、取り上げられたが。
 それだけだった。





 とある家にて。
 すやすやと昼寝をしていた幼子を、青い光が包み込んだ。
 彼女の様子を見ていた母親は、慌てて近寄るも。
 特に異常は見当たらない。


「あの光はなんなのかしらねえ。
 神器ではないようだし、悪影響もなさそうだけれど。
 ひょっとして、うちの子には、秘められた力が宿っているのかも!」


 のんきに、独り言ちる母親は、にこにことしながら、愛しの娘に視線を向けた。
 これ以降、一人娘は、大人びた言動が増えていくことになる。
 普通ならば、奇妙に思うかもしれない。
 しかし。
 彼女の両親は、普通ではなかった。


「うちの子は、天才かもしれない!」


 いわゆる、親ばかだった。 
 そんなどこにでもある一般家庭。
 温かな家で暮らす、お気楽幼女の名前は――八神はやて。


――――僕だけの世界が平和でありますように 
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