戦国異伝供書
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第九十話 尼子家の謀その九
「陶殿のお父上ではな」
「あの方ならば」
「うむ、ならばな」
今度は陶興房のことも話した。
「おそらくわしにもな」
「手の内を読ませぬ」
「そうであったであろう」
「そうでありましたか」
「この様に先に先に考えられぬわ」
「左様ですか」
「そうなっておった、しかし今は違う」
義隆と陶隆房はというのだ。
「大内殿は戦向きでなく」
「陶殿はわかりやすい」
「それならばな」
「実に、ですか」
「まことにわかりやすいわ、だからな」
「このままですな」
「戦う」
その様にするというのだ。
「そして勝つぞ」
「それでは」
「すぐに安芸の国人達に文を送るのじゃ」
こう言ってだった、元就は安芸の国人達である吉川家や小早川家そして先程戦った武田家や熊谷家ににも文を送った。そうしてだった。
国人達の軍勢が続々と集まるのを見た、元網もそれを見たがそこに武田家や熊谷家の旗印も見て驚いて言った。
「あの」
「先程戦った武田家や熊谷家もおるな」
「どちらも当主殿の首を取りましたが」
「そのことを考えるとじゃな」
「とてもです」
それこそというのだ。
「ここで、です」
「当家と共に戦うことはな」
「有り得ませんが」
「普通で考えればな、しかし武田家も熊谷家も尼子家に近い」
「では尚更」
「今我等は尼子家と表立って対してはおらん」
元就は弟に笑って話した。
「確かに謀は破ったが」
「それでやり返しもしましたが」
「それでやがては攻めて来るであろうが」
それでもというのだ。
「それでもな」
「今はまだなので」
「共に大内家という敵が来た」
「だからですか」
「今は共に戦えるのじゃ」
「そういうことですか」
「左様、だからな」
元就はさらに話した。
「今は共に戦うぞ」
「わかり申した、それでは」
「武田殿、熊谷殿と共に戦うぞ」
こう弟に言って元就は国人達を集めて軍議も開いた、ここで彼は国人達に自分の考えを話した。すると。
その話を聞いてだ、国人達は皆元網以上に驚いて元就に言った。
「毛利殿、それはです」
「また大胆な」
「成功すれば大きいですぞ」
「我等は勝てます」
「大内家の軍勢は二万五千いるといいますが」
「その軍勢に勝てます」
「それを果たせます」
こう口々に言った。
「では、ですな」
「これよりですな」
「我等は毛利家の方に向かい」
「そしてですな」
「その様に攻めますな」
「そうしましょうぞ、そして勝ち」
そのうえでというのだ。
「大内家を退けましょうぞ」
「はい、それでは」
「その様にしてです」
「勝ちましょう」
「これより」
「さすれば、ただです」
ここで元就は国人達にこうも言った。
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