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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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前書き
この章が終わったら終わりにする予定でしたが、やっぱり続けていこうかなと思っている今日この頃。
100年クエストかオリジナルかはまだ迷ってますが・・・ 

 
ウェンディside

激しくぶつかり合うシリルとレオン。それは私たちの目では捉えることがやっとなほどに早く、パワーも常人のそれを圧倒していました。

「これほどとは・・・いや、まだ全力を出しているようには見えないな」

その言葉に思わず頷きます。二人ともスピード、パワーともにすごいのに、それでもまだ余力を感じさせていることがなお驚きです。どこまで上がっていくのか、想像することもできません。

「メェーン。だが、これなら十分に勝機はある!!」

ポーズを決めながら一夜さんがそう言います。でも、本当にその通りなんです。シリルがレオンを止められる可能性はかなり高い・・・それなのに・・・

「・・・」

カミューニさんは二人の戦いを見ながら、準備の手を緩めません。

「カミューニ、いい加減教えてくれ」
「一体、何が心配だと言うんだね?」

ジェラールさんと一夜さんの問いに、しばらく無言で考えたカミューニさんは、ようやく自分の考えを話し始めました。

「俺が危惧していることは3パターンある」

3本の指を立て私たちに見せてくるカミューニさん。そんなに考えられる最悪の事態があることに、私たちは驚きを隠せません。

「一つ目はシリルの暴走だな」

妖精の心臓(フェアリーハート)を手に入れたことにより急激に力をつけたシリル。そんな彼の今の状況を見ると、彼の心配もあながち間違いではないことがわかります。
例えレオンを倒せても、もし彼が世界を壊し始めたら元も子もありません。

「二つ目はティオスが強化されてしまうケースだな」
「ティオスの強化?」

訳がわからず顔を見合わせる私たち。カミューニさんは頭をかきながら、分かりやすく解説してくれます。

「ティオスの肉体はシリルで出来ているという話だった。もしその器が強化されたことが未来でも引き継がれていれば・・・」

ティオスはレオンの魔力とシリルの魔力、2つが合わさって出来上がっている状態です。この時代においてのレオンの強化はもうないと思いますが、仮にシリルが強くなってしまった場合はどうでしょうか。
最悪の場合、シリルと同じように敵まで強化されてしまうかも・・・

「そして3つ目・・・こいつが一番の問題だが・・・」

二人の様子を見ながら目を細めるカミューニさん。彼の考える一番の問題・・・それだけはなぜか、彼は話してくれませんでした。
















第三者side

その頃、クリスティーナではゼレフがメイビスの言葉に驚かされていた。

「オーガストが・・・僕の子供・・・?」

自身の側近として常に尽くしてくれたオーガスト。初めて会った時からすごく懐いていてくれた彼の正体を聞かされたゼレフは、思わず頭を抑えた。

「オーガストってあのじいさんが!?」
「ゼレフの子供!?」

その事実を知った時、現場にいなかったナツたちは驚きを隠せない。それも無理はない。姿だけ見れば、オーガストの方が遥かに年上に見えるため、とてもゼレフとメイビスの子供など想像できる方がおかしいのだ。

「オーガストは、私にあなたを止めるように言いました。私の力ではあなたを止めることはできませんでしたが・・・」

メイビスはナツの方へと視線を向ける。彼はそれに気が付いていないようで、オーガストが二人の子供であることをいまだに納得できず、周りの仲間たちと話をしている。

「仲間がそれをやってくれました。ですが、私は本来の目的を見失い、あなたと共に逝こうとしてしまった」
「本来の目的?」

小さく頷く少女。彼女は彼の目を見ると、ゆっくりと頭を下げる。

「ティオスを倒すために・・・力を貸してください」

メイビスは息子(オーガスト)が命を賭けても成し得なかったティオスを倒すため、ゼレフの手を借りようとしていたのだ。それを聞いたゼレフは驚愕の表情を浮かべたあと、小さく笑みを浮かべる。

「僕でどこまで役に立てるかはわからない。ただ、君が・・・君たちが僕を必要としてくれるなら、喜んで手を貸そう」
「ゼレフ・・・」

その回答に思わず笑みを浮かべるメイビス。このクリスティーナに乗り込んだものたちも皆、気合いが入ったのか拳を合わせたり、視線を交わらせたりとそれぞれの方法で気合いをいれていた。

「だけど・・・問題はそのあとかな・・・」
「そのあと?」

希望に溢れたと思われたその瞬間、突然ゼレフの表情が暗くなる。それがどういうことなのかわからずにいると、彼は静かな声で話し出す。

「ティオスを倒すことはなんとかできるかもしれない。でも、そのあとに問題があるんだよね」
「だからそれは何なんだよ!!」

パッとした回答を寄越さないゼレフに弟であるナツが怒る。彼の言葉を聞いても、大半の魔導士たちは意味がわからず顔を見合わせていた。

「気付いてるものもいると思うよ。ただ、それを信じたくないから、目を背けているだけ」

全員にゆっくりと視線を向けるゼレフ。彼らはそれでも何かわからず、顔を見合わせることしか出来なかった。

















その頃、すでに戦いから離脱しているものたちは、この状況を冷静に見守っていた。

「よかったじゃない、オーガスト。お父さんにも気付いてもらえて」

ゼレフとメイビスの会話を見ていたヨザイネは、ニヤニヤとしながら隣の老人に告げる。その表情はいたずら盛りの子供のような笑顔だった。

「茶化すでない。それより、これ以上何が問題だと言うのだ?」

本当は喜びたい気持ちがあるのだが、それを表に出さないようにしているオーガスト。ヨザイネはそれにつまらないと思いながら、地上の戦況を見つめている。

「なんだろう・・・シリルのポンコツは今に始まったことじゃないし・・・」
「実の息子の評価がそれか」

オーガストが思わずジト目で彼女を見ると、ふざけた子供のように舌を出すヨザイネ。そんな状況ではないはずなのに、楽しそうに悪ふざけが出来る彼女のメンタルに、彼は呆れたようにため息をつく。

「やっぱりシリルの暴走かな?ヨザイネに似てメンタル弱いしな」
「それはヴァッサボーネに似たんじゃないの?」
「こんなところで夫婦喧嘩しないでちょうだい」

シリルの両親の会話にグランディーネが思わず突っ込む。まるで緊張感がないように見えるが、実は違う。彼女たちは本当に、カミューニとゼレフが何を恐れているのかがわからないのだ。

「ずいぶんと楽しそうね、ヨザイネ」
「「!!」」

そんな彼女たちの後ろから突然聞こえてきた声。それを聞いた面々はすかさず振り向く。特にヨザイネは、目にも止まらぬ速さでそちらに体を向けていた。

「お・・・お久しぶりです!!」

すると、今度は地面にめり込むのではないかと言うほどの勢いで地面に額を押し付ける少女。そのあまりの姿に、オーガストたちは目を白黒させていた。

「いいのよ、ヨザイネ。そんなに畏まらなくても」
「いえ・・・そう言うわけには・・・」

その女性に向き直った瞬間、オーガストたちも背筋に冷たいものを感じた。
漆黒の腰まで伸びた髪。エルザやカグラのような誰でも見とれるほどのスタイルを持った怖気がするほどの美女ゆえにそうなってしまったのか。

(いや・・・違う・・・)

オーガストの頬から一滴の汗が地面へと落ちる。それは彼女が驚くほど美人だからということではないことをすぐに察した。彼女の放つ異様なまでのプレッシャーゆえに、そうなってしまったのだ。

「地上の様子はどう?あなたの子供は勝てそう?」
「な・・・なんとも言えません・・・」

本当に勝てそうなのかイマイチわかっていないヨザイネはそう答えることしかできない。そんな中、彼女が泉の方へ近づくと、ドラゴンたちは戦き、道を開ける。

「私も少しくらい()()()()()のことだし、行く末を見ておこうかしら」

そう言ってヨザイネの隣を陣取った彼女は、土下座していた少女を脇へと引き寄せる。

「あの水色の髪の子ね。あなたに似て可愛いわね」
「えっと・・・男の子なんです、シリルは」

申し訳なさそうにそういうヨザイネに対して美女はゲラゲラと笑っている。彼女の正体が何者なのかオーガストたちは気になったが、それを聞けるような雰囲気ではなかった。

















「自分のことなのに・・・だと?」

ティオスの言っていることの意味がわからず目を細めるシリル。それに対し青年は鼻で笑って返した。

「そうだ。お前は今とんでもない失態を犯している。今までが大丈夫だったからなんだろうが・・・」

そう言ったティオスは拳に魔力を集めると、少年の顔面目掛けて振り抜く。

スカッ

だがもちろんそれはシリルには当たらない。体を軽くずらしただけで回避した彼は、高々と足を振り上げる。

ガンッ

そのまま踵落としでティオスの肩を狙ったが、敵も同様に最小限の動きでそれを避ける。

ニヤッ

「!!」

シリルのそれを避けた直後、ティオスから笑みが溢れた。別に戦局に影響を与えるような場面ではなかった。攻撃が当たっていようと外れていようと、すぐに元に戻せるような状況。それなのに、ティオスはまるで勝負が決まったかのような余裕の表情を浮かべたのだ。

(何かがおかしい)

そう思ってシリルは一度距離を取ろうとした。それに対しティオスは同調するように突進し、一定の距離を保つ。

「竜魔神・・・」

体を一回転させての勢いを高める動作。何度も間近でそれを見てきたシリルは回転方向からどちらの足が出てくるのかすぐに判別できた。

氷結(コンゲラート)!!」

氷の滅神魔法が主となっているためこの名前だが、3種類での魔力は健在。しかしシリルはそれを見切ることなど容易い。ロスのない動きでそれを回避する。

「竜魔神の・・・」

それでもなおも攻撃を仕掛け続けてくるティオス。遠目から見れば一方的に押し続けている猛攻。それに対し、彼の意図が読めないシリルは、徹底的にその攻撃を回避することに徹しているため、ダメージを浴びることはなかった。



 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか?
1週間って意外と短いですね、気が付けばギリギリでの投稿でした。
本当はこの話で展開が動くはずでしたが、次の話に持ち込みです。
次回もよろしくお願いします。 
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