曇天に哭く修羅
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第三部
Slump
前書き
_〆(。。)
時刻は午後9時辺り。
ここは【魔獣領域】
上空には白い物体が有る。
1m四方の立方体だ。
六つの面全てに金色の瞳が描かれている。
これが有るということはとある舞台であるということを意味していた。
学生魔術師の戦う【天覧武踊】
今回は魔術学園の内部で行われるランキング戦や大会の試合ではない。
金儲けの興業試合だ。
6チームによるサバイバルであり、その中には【龍帝学園】も有る。
参加しているメンバーは
《立華紫闇/たちばなしあん》
《クリス・ネバーエンド》
《橘花翔/たちばなしょう》
《エンド・プロヴィデンス》
《島崎向子/しまざきこうこ》
この五名だ。
彼等は現在戦闘中。
休んでいる最中にいきなり奇襲を受けた。
紫闇はエンドの制止を無視して攻撃の来た方に突っ込んで行ってしまう。
幼馴染みの声を振り切ってまで敵の居る場所に向かったのは訳が有った。
(俺達の強さを知るなら当然だろ)
紫闇達は日英親善試合に勝利したことで学園ごと注目されてしまっている。
正面戦闘を避けるのは当然と言えよう。
(安全圏を出て身を晒すからこそ必死になるし、闘技者としての成長が有る)
紫闇はそう思っていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
紫闇の体が銀色の【魔晄】で作った防壁に包まれ右腕が黒い装甲に覆われる。
「行くか」
走りながら【音隼】を使う。
背中から魔晄の粒子が噴き出し一対の翼を形成すると爆発的な加速で敵に接近。
樹上に居る相手は一人。
紫闇を見下ろしながら青い弓を構えて今にも矢を放たんとしていた。
狙いを付けていた弓からラインを引いたかのように青白い光の矢が飛ぶ。
しかし紫闇は矢を掴み折る。
そして跳躍し音隼で飛行。
これが敵の狙いだった。
「アロー・フィールドッ!」
敵に一撃を入れようとした紫闇の耳に相手の声が届いた途端、無数の矢が飛来。
(【異能】か)
紫闇が避けられないよう全方位から迫る光の矢は人間の這い出る隙間が皆無。
しかし紫闇は慌てない。
「【盾梟/丸魔】」
ただでさえ通常より強化された魔晄防壁の盾梟を球状に膨らませて全ての矢を弾く。
(あれだけの数でやってこれか……)
紫闇は退屈で溜め息。こいつでは足りない。そう思いながら拳を握る。
すると相手の水月付近が光った。しかし紫闇はそれを無視。鼻っ柱に拳を決める。
綺麗に吹っ飛んで致命傷。
地面に落ちた相手の左手から【古神旧印/エルダーサイン】が光になって紫闇の左手へと吸い込まれていった。
「一体何なんだろうな」
相手の一部が光って見える。
この現象は何度も有った。
親善試合が終わった後からだ。
「勘になるけどもう一人の俺とか大きい門とかと関係無さそうだし、特に嫌な感じとかもしないし放っといて大丈夫だろ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「今夜で決着しそうだな」
紫闇の心が曇る。
(足りない。全然だ)
《レックス・ディヴァイザー》のように自分を高みに引き上げてくれる相手はそうそう居ないことくらい解っている。
もう普通の相手に満足することが出来ない。
そんな基準に達した相手との戦闘経験が無ければ成長できないと感じていた。
(人間じゃなくても良い。【魔獣】でも良いから相手になってくれ)
親善試合以降は強くなれていない。スランプに陥ったのだろう。これを脱するには好敵手。だが国内には居なさそうだ。
紫闇より強ければ良いのなら何人も居るが、差が開き過ぎて勝負以前の問題。
「対象外だな」
橘花翔もまともに戦えば圧倒される実力者だということは解っているが、彼は上手く紫闇に合わせてくれる器用さが有る。
「そんな橘花でも江神に負けたって言うんだから【魔神】までの道程は遠いぜほんと……。お、みんな来たみたいだな」
後ろから紫闇に遅れて龍帝のチームが他校のチームを撃破して駆け付けてきた。
「何で一人で行ったんだ?」
エンドは眉に皺を寄せながら怒気を洩らす。
「好敵手と窮地が無いなら強くなれないからな。良い相手が欲しいもんだ」
エンドが顔を険しくして睨む。
(エンドの気持ちが解らないわけじゃない。たぶん聖持もそうだろうし)
心配させているのは百も承知。
それでも紫闇は強くなりたかった。
《黒鋼焔》や《江神春斗》に追い付くくらい。
後書き
原作でも有った鳩尾の辺りが光って見えるのは先の展開の伏線でした。
_〆(。。)
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