白い女の子

　だがその髭のことも思いつつ言うのだった。
「そうしたこととですね」
「同じです」
「じゃあ禿とか」
　商業科の厚生委員長のことも思い出して言った。
「そのことも」
「はい、そのこともです」
「個性ですか」
「そうです」
「全部個性で」
「誰でも持っていますね」
「それを興味本位でどうかとかは」
　見ようとかとはとだ、池山は気付いて言った。
「よくなことですね」
「そうなりますね」
「俺悪いことしましたね」
　今度は反省して言った。
「やっぱり」
「気付かれればいいかと」
「そうですか」
「はい、それではです」
「それならですね」
「もうです」
　巫女は池山に笑顔で話した。
「普通に参拝してくれれば」
「わかりました、それじゃあ」
「そすてくれますね」
「今から」
　こう答えてだった、実際に。
　池山はもうそのアルビノの娘を見ようとはせず普通に神社を参拝した。そしてこの時からだった。
　もう誰の身体のことも言わなくなった、勿論厚生委員長の額のことも。友人達はその彼の変化について気付いて彼自身に尋ねた。
「お前誰の身体のことも言わなくなったな」
「厚生委員長の額のことも」
「そういうの言わなくなったな」
「全くな」
「どうもな」
　実際にと言うのだった、池山も。
「考えが変わったんだよ」
「それでか」
「もうそういうこと言わなくなったんだな」
「そうなんだな」
「ああ、やっぱり誰でも気にしてな」
　そしてというのだ。
「困ってることだってあるだろ」
「自分の身体のことで」
「まあそれはな」
「誰だってあるよな」
「それこそ」
「毛深いとかな」
　一人が秘かに自分のことを話した。
「太ってるとかな」
「猫背とか体臭とか」
「誰でもあるよな」
「チビとかな」
「結構誰だってあるよな」
「どうしても」
「それで俺もな」
　実際にというのだ。
「思ったからな」
「だからか」
「もうそういうこと言わないか」
「人の身体について」
「そう言うんだな」
「ああ、絶対にな」
　池山は確かな声で言った。
「そうしていくな」
「何か立派だな」
「ああ、人の身体のこと言わないとかな」
「そういうのっていいな」
「それだけでかなりだな」
「そうしていくな、これから」
　池山は実際にもう誰の身体のことも言うことはしなかった、それは神社に行ってからだった。そうして。
　ある日その娘がいる神社に行ってそうしてだった、参拝をしてお賽銭を入れてから中を見て回っていると。
　楚々とした顔立ちで目の赤い金髪のショートヘアに白い雪の様な肌の巫女の少女が境内を掃除しているのを見た。
　見れば天気は曇りで日差しは弱い、それでと思ってだった。
　池山は自然と微笑んだ、そのうえでその娘を少し見た。心の中でこれからも頑張って欲しいなと思いそのうえで神社を後にした。


白い女の子　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　２０１９・１１・１５