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ロックマンZXO~破壊神のロックマン~

作者:setuna
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第三十五話 それぞれの誓い

ガーディアンベースに戻ったヴァンとエール。

ブリッジに入ると、プレリーとジルウェの二人が振り返った。

「二人共…モデルVの反応が見つかったわ…この国の中心にある一番大きな建物…セルパン・カンパニーの本社よ。本社の内部から強力なエネルギー反応も見つかっているの、あの襲撃で捕まった人々もあそこに連れていかれているみたい。あの中で 何かが起ころうとしているわ…」

「危険なのは分かってるさ…だけど逃げるわけにはいかないだろ?」

「うん!何があろうと行くしかないよ…!行こう!!」

二人はセルパン・カンパニー本社に向かうために、トランスサーバーのある部屋に向かおうとする。

「…………エール、少し時間が取れないか?」

「?」

「話があるから…甲板に行こう」

ジルウェに連れられていくエールはヴァンの方を振り返る。

「良いんじゃないか?今のうちに話しておきたい人と話せばいい。それくらいの時間はあるんじゃないか?俺は先にトランスサーバーで待ってるよ」

「うん、ありがとうヴァン」

そのままジルウェとエールはブリッジを後にして甲板に向かい、それを見たヴァンはプレリーに振り返る。

「それじゃあ、俺も行ってくる」

それだけ言うとヴァンはブリッジを後にした。

「あ………」

何か言おうとしても緊張で言葉が出なかったプレリーにオペレーターが口を開いた。

「プレリー様、行った方が良いですよ」

「そうですよ、これが最後になるかもしれないんですから」

「伝えたいことがあるなら伝えた方が良いです」

三人の言葉にプレリーはブリッジを出た。

トランスサーバーの部屋の近くまで来ていたヴァン。

「ヴァン!!」

「っ!シュウか?お前、エリアOにいたのか…サボリか?」

「……何で幼なじみ揃って俺が現れる=サボリになるんだよ…有給取ってたんだよ。まさかこんなことになるなんて思わなかったけどな…でも丁度良かったぜ……ヴァン!悪かった!!」

「っ!?お、おい…」

土下座して謝ってきた悪友にヴァンは目を見開く。

「助けてくれたのに…俺がイレギュラーに捕まったせいでお前らが危険な目に遭ったのに…なのに俺はお前に酷いことを…」

「別に…あの時の俺は本当に化け物って言われても仕方なかった。気にしてない…それにこれで最後だ。もう、会うこともないと思う」

「何を弱気なこと言ってんだよ!あの時のイレギュラーを倒した時みたいにパパっと倒して帰ってこいよ!そして前みたいに仕事を一緒にサボってゲームしようぜ!!」

「俺は休憩時間にやってただけだからな?お前のサボリに付き合ってた覚えはないからな?」

どうも自分はシュウにサボリ仲間として認識されているらしい。

「そ、そんな冷たいことを言うなよ親友!辛く苦しい仕事の隙を掻い潜ってサボるのが一番良いんじゃないか~!」

「お前いつか先輩にクビにされるぞ」

近い将来、本当にジルウェにクビにされそうな未来が容易に想像出来る。

「ヴァン!!」

向こうからプレリーが駆け寄ってきた。

「び、美人の司令官さん!ヴァンを名指しで呼んだってことは…お前って奴は…ヒーローになっただけじゃなくてこんな可愛い彼女まで…裏切り者…!」

「彼女?何のことだよ?」

嫉妬に狂いそうになったシュウだがヴァンの言葉を聞いて、ヴァンは色気よりも食い気だったことを思い出してプレリーに同情の視線を向けた。

「あ、あなたは…」

「いやー、何度も助けてくれてありがとうございます……こいつが相手だと滅茶苦茶苦労するだろうけど頑張って下さい…こいつ超が付くほどに鈍感なんで…」

「え…ええ!?何であなたまで…」

「見てりゃモロバレだから…気付かないのジルウェさんとこいつくらいでしょ」

片手を振りながら生暖かい視線を向けながら去っていくシュウにヴァンは疑問符を浮かべた。

「何だったんだあいつは?」

「さ、さあ…」

顔の熱が治まるまで待つと、ヴァンに向き直るプレリー。

「俺に何か用かプレリー?」

「その…最後にあなたに言いたいことがあって…」

「言いたいこと?」

「ええ、今更かもしれないけど…あなたを危険な目にばかり遭わせてしまって……ごめんなさい。私達とジルウェさんがあなた達を監視するためにジルウェさんの近くにいさせたことも…監視するにしてももっと安全な場所があったのに…」

例えば施設に預けていればヴァンもエールも運び屋で働いているよりもずっと安全に過ごせていただろう。

ライブメタルの適合者の可能性があるかもしれないからといって、被害者の人達の安全を軽視し過ぎていた。

「あなたは一年前のイレギュラーの襲撃でそんな体になって…私達、ガーディアンは…あなたから人としての人生すら奪ってしまった……ヴァン…あなた…モデルXの抑制が効かなくなっているんでしょう?」

「やっぱり気付くか……まあ、気にするなよプレリー。お前が気にすることじゃない。先輩がケチってないでとっとと新しいバイクを用意してくれれば防げたことなんだし…それに先輩と会えて…運び屋のみんなと過ごした時間…プレリー達と過ごした時間があるから今の俺があるんだからな…少なくても幸せだったと思う……」

「ヴァン……」

「…行ってくる。セルパンに今までの借りを返しにな…!」

「ええ…気をつけてね………ヴァン……」

「プレリー?」

声が震えているプレリーにヴァンは首を傾げた。

「本当は…行って欲しくない…散々危険なミッションに向かわせておいて今更何を言ってるんだと思うかもしれないけど…あなたに死んで欲しくないのは私の本心だから……」

「…………」

「死なないでね?モデルVを破壊出来なくてもいい。セルパンを倒せなくてもいい…あなたさえ、生きていてくれたら…死なないで、お願い…ヴァン…」

ヴァンの手を両手で包みながら懇願するプレリーにヴァンも空いた手でプレリーの手を包み返した。

「当たり前だろ、死ぬつもりなんかない。俺は全てのイレギュラーを倒して…こんな下らないゲームを企んだ奴を倒すまで死ぬわけにはいかないんだ…エールや先輩…運び屋やガーディアンのみんな……そして…プレリー…お前を守るためにもだ」

「ヴァン……」

「何度でも約束する。必ず全てを片付けて帰ってくるってな」

「ええ…」

プレリーはヴァンの耳元に顔を近付かせると、ヴァンにしか聞こえないくらいの小声で呟く。

「………?何だ?名前か?」

「ええ、私が“プレリー”になる前に…お姉ちゃんが幼かった私に名付けてくれた私の本当の名前……ヴァン…あなたを信じるわ…あなたが帰ってくるまで何時までも待ってるから…約束よ。絶対に、帰ってきて…あなたに…私の本当の名前を呼んで欲しいの…」

いくら鈍感のヴァンでもここまで言われれば流石に気付く。

こういう時に何と答えればいいのか分からないが…。

「…………ああ、分かった。お前の本名…帰ったら言うよ」

今はこれしか言えなかったが、プレリーはそれで頷いて名残惜しそうにブリッジに戻っていった。

「…………負けるわけにはいかなくなったな…セルパンにも…そしてこいつにも」

今でも自分の体を乗っ取ろうとするモデルO。

プレリーの元に帰るためにはセルパンとモデルOに勝たなくてはならない。

ヴァンはエールが来るのを待つ。

一方、ジルウェに連れられたエールは甲板に出て最初にジルウェの体調を尋ねた。

「こんな風の強い場所にいたら体に良くないんじゃない?」

「年寄り扱いするなよ。これくらい平気だ」

「そう、なら良いけど…何?話って?」

「いや…な…本当に強くなったなエール…最初は俺が守ってやろうとしていたのに…今じゃお前はこの国の希望だ。」

初めて会った時はヴァンにしがみついて泣いていた小さな女の子が今やこんなにも強くなった。

嬉しいと思う反面、寂しいと感じる。

「あはは、本当に前のアタシは弱かったもんね…アタシ…ジルウェには感謝してる…ジルウェに助けられて、たくさんのことを教わって…いつも傍にいてくれて…アタシが頑張れたのも…ジルウェが見守ってくれてたからなんだよ」

「そうか…」

微笑むジルウェだが、意を決したエールがジルウェを見据えた。

「ジルウェ、アタシは絶対にセルパンを倒すよ…セルパンを倒して…モデルVを破壊して…ここに帰ってこれたら…ジルウェに伝えたいことがあるの…」

「伝えたいこと…?今じゃ駄目なのか?」

「うん、駄目…絶対にジルウェの所に帰るために…今は言えない…だからジルウェ…待っててくれる?」

「……ああ、分かった。お前の帰りをここで待ってる…だから、必ず帰ってこい。勝てそうになかったら逃げろ、生きてさえいれば必ずチャンスはやってくるんだからな」

「分かってる…それじゃあ、ヴァンを待たせてるから行ってくるね」

「ああ、頑張れよエール…」

エールは甲板から船内に戻り、そのままトランスサーバーの前で待つヴァンと合流する。

「お待たせ!」

「そんなに待ってないから大丈夫だ。さあ、決着をつけに行くぞ!」

「うん!」

トランスサーバーに乗り込んで、セルパン・カンパニー本社があるエリアDへと向かったヴァンとエール。

全てに決着をつけるために。 
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