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ツンデレ犬

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第三章

「流石にないでしょ」
「いないっていうのね」
「いないでしょ、ここには」
「美香ちゃんの学校そうしたお話多いでしょ」
「八条学園はね、けれどこの辺りにはね」
 流石にというのだ。
「人面犬はいないでしょ」
「そう言うのね」
「そうよ、学校の中ならともかく」 
 通っているそこはというのだ。
「けれどこの辺りに妖怪とか幽霊出るって聞いたことないし」
「けれど神戸にもそうした話多いわよ」
 母は自分達が住んでいる場所の話もした。
「六甲の方にも街にもね」
「そうしたお話あるの」
「牛女とかね」
「あれよね、頭が牛の女の人ね」
「出るっていうし」
「けれど人面犬はね」
 また言うのだった。
「流石にね」
「いないっていうのね」
「そうよ、流石にそれはね」
 人面犬はというのだ。
「いないわよ」
「それじゃあ」
「そう、大丈夫よ」
 こう言ってだ、そうしてだった。
 美香は笑ってこの話を済ませた、だが。
 この話から少し経ってからだった、美香は学校の帰り道にだった。何と。
 ばったりと人面犬に会った、それで思わず言った。
「いや、本当にいたの」
「ウウ・・・・・・」
 男の顔だった、秋田犬程の大きさの犬の頭がそれだった。見れば野球のことで知ったかぶりして他の人の家に上がり込んで飯を喰らうだけが能の自称落語家の様な顔である。
 その妖怪が吠えてきた、美香は咄嗟に逃げようとしたが。
「ワンワンワン!」
「あっ、ポチ!」
 後ろから犬の鳴き声と母の声がした、そしてだった。
 持ち主のいないリードを首輪からかけたポチが美香の前に出て来てだった。
 美香を守る姿勢で人面犬に対して唸りだした。
「ガルルルルルル!」
「キャン!?」
 人面犬はポチに吠えられるとだった。
 逃げ出してそうしてだった、横から来た車に撥ねられ。
 姿を消した、車は急停車して二人出て来て言った。
「犬撥ねたんだよな」
「さっきの人面犬だったぞ」
「撥ねられて死んで消えたのか?」
「そうみたいだな」
「妖怪撥ねるとか祟りあるかもな」
「八条神社で事情話してお祓いしてもらうか」
 こうした話をしてまた車に乗って出発した、その場面も見てだった。
 美香はポチを見て言った。
「あんたまさか」
「・・・・・・・・・」
 返事はしない、しかしだった。
 美香はポチの真意がわかった、それで微笑んで言った。
「最近ずっと歩いていたのはそういうことだったのね」
「大丈夫だった?」 
 母が横に来て言ってきた。
「襲われなかった?」
「ええ、その前にポチが来てくれたから」
 それでとだ、娘は母に話した。
「何とかね」
「それはよかったわね」
「人面犬は車に撥ねられて」
 自分を襲おうとしたその妖怪はというのだ。
「消えたわ」
「死んだのかしら」
「妖怪は一回死んでもまた蘇るっていうけれど」
「そういえば」
 母はここで前を見た、すると。 
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