【完結】RE: ハイスクール D×D +夜天の書(TS転生オリ主最強、アンチもあるよ?)
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第3章 奪われし聖なる剣
第17話 コカビエルはかく語りき
コカビエルとの戦いは、グレモリー眷属の勝利に終わった。
5本の聖剣を束ねた力を、木場祐斗は、亡き同胞から譲り受けた力――聖魔剣で撥ね退けた。
コカビエルの放ったケルベロスは、リアス・グレモリーが消滅させた。
彼が連れてきていた『三人の上級堕天使』と一進一退の戦闘を繰り広げていた姫島朱乃、塔城子猫も、戦列にリアスが加わることで、辛くも勝利した。
そして、コカビエル自身は、赤龍帝と一騎打ちの末に――敗れた。
「う、ぐっ……これが、赤龍帝の力、か」
戦いの途中で、コカビエルは、神の不在を明らかにした。
予想外の事実に、紫藤イリナ、アーシア・アルジェント、ゼノヴィアは衝撃を受け、隙をさらしてしまう。
「コカビエル、お前の負けだ。まだ他に何か言い残すことはあるか」
「ふはは。既に神の不在を明かしたあとでは、な。
念を入れて、上級堕天使まで連れてきたというのに、敗れるとは……」
その隙をついたコカビエルは、彼女たちを戦闘不能に追いやった。
木場祐斗でさえ、動揺してしまい、攻撃を喰らってしまう。
彼は、すぐに戦闘に復帰したが、戦闘不能になったアーシア・アルジェントたちの防御で手いっぱいになってしまった。
その結果、一誠はコカビエルと一騎打ちせざるを得なかったのだ。
一誠は、満身創痍といっていい様態だったが、一切の油断を許していない。
リアスたちは、臨戦態勢のまま、堕天使の言葉に集中する。
コカビエルは、敗れたいまも、余裕の表情を崩さない。
――――ヤツはまだ何か隠している。
情報を得るためにも、しばらく喋らせるつもりだった。
声を出さずとも、グレモリー眷属は、意識を同じくしていた。
まさに以心伝心――これこそ、彼女たちの強さの秘訣だろう。
「そう、だな。これから起こる戦争に参加できないのが残念、だ」
「馬鹿な。お前の野望は潰えた。もう戦争は起こらない」
「何をいっているの、コカビエル。貴方を倒し、聖剣は教会の手に戻った。
戦争の火種はもうないわ」
何をいまさら、とでも言うようにあきれ顔に指摘するのは、リアス・グレモリーである。
本来なら強敵であるはずの堕天使コカビエルすら、一騎打ちで倒してしまう。
上級堕天使相手にも、勝利できた。
木場祐斗もさらなる力を手に入れた。
とくに、禁手化した兵藤一誠の力は、既に上級悪魔に匹敵、あるいはそれ以上かもしれない。
戦争も未然に防げた。
何もかも順調といっていいはずだ。
「確かに、俺は失敗した。
だが、戦争を望むものは大勢いる」
「何をいまさら。天使、堕天使、悪魔を問わず、戦争を望む人はいるでしょうよ」
「ああ。その通りだ、リアス・グレモリー。せいぜい気をつけるがいい」
「はあ……。一誠、もう有益な情報はないようだから、頼めるかしら。
領地を管理するグレモリー家として、正式に処断するわ」
「わかりました。……じゃあな。お前を生かす理由はない。いま止めを――――」
「それは困るな」
一誠がコカビエルに止めを刺そうとした瞬間、白い何かが飛来し堕天使をさらっていった。
何事かと目を向けると、そこには、白い髪をした一誠と同世代に見える少年がいた。
白い鎧をまとった彼からは、尋常ではない力を感じる。
『久しぶりだな、白いの』
『そういうお前こそ、耄碌していないようで何よりだ』
「ドライグ、もしかしてコイツは――」
『相棒の考えで正解だ。当代の白龍皇、やはり惹かれあう運命にあったか』
推測は当たっていたが、ちっとも嬉しくない。
白龍皇からは尋常ではない魔力を感じる。
その魔力は、魔王サーゼクス・ルシファーに似ていた。
「やあ。初めまして、今代の赤龍帝。俺の名前は、ヴァーリ・ルシファー。
歴代最強の白龍皇だ」
自信満々に言い放つ。
普通なら見栄や虚言の類だと受け取るところだろう。
しかし――
「そんな……。『ルシファー』ですって!?
あなたは、ルシファーの血を引くと言うの!?」
リアスが驚愕の声を上げる。
それも当然だろう。
ただでさえ強い魔力をもつルシファーの末裔が、白龍皇になっているのだから。
『ここでやり合うつもりか、白いの』
声に警戒を滲ませながら、ドライグが問う。
一誠もいつでも反応できるように、戦闘態勢を崩さない。
他のグレモリー眷属も既に臨戦態勢だ。
「いや。まだ決着をつけるには早い。
アザゼルにコカビエルを回収するように頼まれてね。
今日はあくまで顔見せ程度さ」
『俺も同意見だ。お互い面白い宿主に巡り合えたようだな』
その後も、いくつかの問答が続き、白龍皇――ヴァーリ・ルシファーは帰って行った。
一誠は、緊張を解くと同時に、へたり込む。
実力の差を肌で感じ取れたからだ。
なまじ、素人の状態から実力をつけただけに、壁の高さが分かってしまう。
だが。
一誠の闘志は、衰えていない。
――――リアスを守れるくらい強くなると誓ったのだから。
◆
――――ヴァーリ・ルシファーによって、アザゼルの下に連れられている最中のことである。
コカビエルは、敗れ去ったとはいえ、余裕の表情を崩していない。
戦争は必ず起きると確信しているからだ。
アザゼルは、おそらく自分を永久凍結の刑に処するだろう。
ただでさえ、堕天使の総数が少なくなっているのだ。
貴重な戦力である自分をアザゼルは殺すことはないはずだ。
ただ、心残りもある。
(――大戦に参戦できず、間近でみることも出来ないのは、残念でならないな)
主戦派は、彼以外のもまだ大勢居る。
アザゼルによって封印される前に、準備をしなくてはならない。
あの小娘。
いや、八神はやてたちが、戦争を始めることを知るのは、おそらく今のところ彼一人。
秘密裏に事を運ぶ必要がある。
(きっと、今度の戦争は、三大勢力の命運をかけた激しいものになる)
コカビエルは、逸る気持ちを抑える。
今にも躍り上がりそうな高揚感が身を包む。
――――彼の口元には、自然と笑みが浮かんでいた。
◆
目の前の堕天使――コカビエルという名の聖剣を奪った主犯者――は、八神はやての取引に応じた。
木場祐斗と兵藤一誠に敗れたエクソシストたちと聖剣3本に加えて、紫藤イリナたちが保管していた聖剣2本の破片を渡した甲斐があった。
(いや、奴はただの戦争狂だ。主はやてが起こすだろう戦争に興味を惹かれたのかもな)
護衛としてはやてに付き添う形になったシグナムは、内心でつぶやく。
コカビエルに尋ねた理由は、八神はやての父が残した手記の裏を取るためだ。
彼は、はやての父母と面識があったらしく、かなり詳しい事情まで教えてくれた。
両親の死の真相まで知っていたのは、運が良かった。
薄々感づいてはいたが、証拠という最後のひと押しが欲しかったのだから。
「――俺が知る事情はこれくらいだな。
不抜ける前のアザゼルは、優秀な駒を失ったと嘆いていたよ。
だからこそ、裏切り者には見せしめが必要だったのだろうな」
「なるほど。こちらが持つ情報と食い違いはないな。
それにしても、はぐれ悪魔の襲撃は、アザゼルの仕業だったとは、な」
「策謀にかけてうちの総督の右に出る者はいないだろう。
少し前までは、いつ戦争が起こってもおかしくない緊張状態だった。
手段を問わぬアザゼルの手腕は頼もしかったものだ――神器狩りもその一環だ。
それで、お前はどうするつもりだ。両親の弔い合戦でもするつもりか?」
あざ笑うかのように。
だが、どこか期待に満ちた目で、コカビエルは、はやてを見つめる。
堕天使のあけすけな態度に、シグナムが眉をひそめるが、主本人は気にする様子もない。
はやては、ゆっくりと言葉を返す。
「弔い合戦、ね。確かに、当たらずとも遠からずといったところかな」
「ならば、他に理由でもあるのか」
「『とある少女』の願いを叶えてあげたくてね。
ボクはそのために存在している。
使命と言い換えてもいいかな」
「曖昧すぎてよくわからんな。
だが、俺が戦争を起こしたら、お前はどうするつもりだ」
「どうもしないさ。
いままで通り、どの陣営にも加担しない。
―――立ちふさがる全てをなぎ倒すことになるだろうね」
さらりととんでもないことを言う。
予想外の発言に、コカビエルも驚愕の表情を浮かべた。
「なるほど。八神はやて。お前は実に面白い。
戦争がはじまったら、是非とも戦いたいものだ」
「ああ、そちらも頑張ってくれよ。
この地を管理するリアス・グレモリーたちは強いぞ?
せいぜい足をすくわれないように気をつけたまえ」
「ふん。言われなくてもわかっている」
吐き捨てるように。
だが、面白そうな表情を浮かべてコカビエルは、言葉を交わす。
既に、お互い必要な情報を交換した後だというのに、会話は続けられた。
最後の別れ際、八神はやては、その場を去ろうとするコカビエルに、ある宣言をした。
思わず不敵な笑みを返す少女を一瞥し、堕天使は、姿を消した。
彼の脳裏には、彼女の最後の言葉が繰り返されている。
その言葉は、白龍皇に捕まったいまも、彼の心を熱くさせていた。
――――キミが敗れても心配しなくていい。ボクが代わりに戦争を起こしてあげよう。
◆
「やはり、コカビエルは敗れたか」
サーチャー越しの映像を見やりながら、主はやてのつぶやきが聞こえる。
性格破綻者だが、実力は確かだったフリード・ゼルセンがいないせいだろうか。
堕天使側の聖剣使いは、大した脅威を感じなかった。
現在、駒王学園近郊に待機しているはやての側にいるのは、ザフィーラだけだ。
「上級堕天使まで撃破したのは、予想外でしたね」
「ああ、ボクも驚いている。彼らを育てた身としては、複雑な心境だ」
本来ならば、実力者であるコカビエルの相手は、はやてがするはずだった。
しかし、彼と取引したことで、中立の立場をとることになった。
もちろん、リアス・グレモリーたちには、秘匿してある。
「あの堕天使から、我らの計画が漏れる可能性があるのでは?」
「いや、それはない。ヤツの望みは、戦争だ。
ボクたちが、戦争を起こすと知っている以上、余計な邪魔はするまい。
むしろ、喜んで便乗して戦いの準備をするだろうよ」
怜悧な表情を浮かべながら、淡々と告げる。
なるほど、と返しながら、現在、とある任務についている管制人格を想う。
彼女ならば、大丈夫だろう。
と、思う一方で、何が起こるか分からない。
それだけ、危険な任務なのだ。
「心配かい、ザフィーラ」
「いえ、そのようなことは。
しかしながら、危険性が高いことも事実です」
「そうだね、なんたってテロリストとつなぎを取ろうと言うのだから」
「『禍の団』ですか。信用できるのでしょうか」
「信用はできないさ。お互い利用し合うだけの、ビジネスライクな関係になるだろうね。
もっとも、まずは窓口代わりに、白龍皇と接触するわけだけれど」
――ヴァーリ・ルシファーとの接触。
これがリインフォースの任務である。
ステルス魔法を用いつつ、ヴァーリ・ルシファーの後を追っている。
冥界の堕天使領に赴き、彼を通して禍の団と手を組むためだ。
今の時点で、禍の団に加入しているかは不明だが、問題ない。
彼と組めば、自然と禍の団入りすることになるだろう。
もちろん、ヴァーリ・ルシファーの仲間になるには、彼を説得する必要がある。
戦って実力を認めさせれば、彼は迎え入れてくれると予想している。
「ヴァーリとの面識はないが、先日のレーティンゲームの話を持ちだせば、興味を持ってくれるだろう」
「彼を説得する手段が、模擬戦で勝つこと、ですか。
たしかに、噂を聞き及ぶ限り、彼の性格なら、乗ってくるでしょうが……」
「禍の団で抜きんでた実力を持つ派閥は2つある。
一つは、ヴァーリが率いるヴァーリチーム。
まだ結成されていないかもしれないが、ヴァーリさえ押さえれば問題ない。
もう一つは、曹操率いる英雄派だ」
「禍の団内で影響力があり、なおかつ行動原理がわかりやすいヴァーリチームを通じてコンタクトを取る計画でしたね」
ヴァーリ・ルシファーの行動原理は単純だ。
『強敵と戦い勝利すること』こそが、彼の生きがいといっていい。
あとは、彼と戦い実力を示せば、友好関係を結べるだろう。
他のヴァーリチームとも仲良くできるはずだ。
だが、曹操は違う。
奸智に長ける彼では、こちらが一方的に利用されかねない。
力も知恵も権力もある要注意人物だ。
――――では、残りのシグナム、ヴィータ、シャマルが何をしているかと言うと。
(はやて、予定通り賊に扮したシグナムを取り逃したぞ)
(ありがとう。では、そのまま合流しようか。
シグナムの演技はどうだった)
(中々の役者ぶりでしたよ。ねえ、シグナム?)
(世辞はいらん。だが、やはり『遠距離のみ』の戦いは性に合わないな)
(正体を隠すためだからね。我慢してくれ)
聖剣の破片を盗み出した賊とその賊と戦う演技をしてもらった。
シナリオはこうだ――
怪しい人影――シグナムの変装で、男装をしたうえで、無手で戦う――を見つけたので、追いかける。
駒王学園から十分距離をとってから、相対して戦闘に移る。
しばらく、小競り合いに終始した後、駒王学園の戦いに気づく。
その後、賊は逃げに徹し、ヴィータとシャマルが追いかけるものの見失ってしまう。
ボクとザフィーラは、駒王学園が気に掛り、増援に向かうも、着いた時には、決着がついていた。
――突っ込みどころ満載だが、さほど気にはしないはずだ。
実際、戦いの形跡は残っているし、ソーナ・シトリーたちにわざと姿をさらしたりした。
シグナムのみ飛行魔法を使っているため――飛行魔法はリインフォースとボク以外は使えないことにしている――なかなか追いつけない。
ボクだけが先行しては、各個撃破されかねないので、走って向かう。
ゆえに、駒王町から遠く離れた場所で小競り合いを起きた、と説明できよう。
「さて、そろそろ駒王学園に到着する前に、ヴィータ、シャマルと合流しないとね」
「シグナムとリインフォースは、策敵のために別行動をしている、でしたね」
「そうだ。未知の敵が潜んでいる可能性を無視できない。と、主張してうまくはぐらかせてみせるさ」
そういって、主は、最近よく見せるようになった無表情に不敵な笑顔を浮かべると、ゆっくりと合流地点に向かっていった。
ザフィーラは、そんな彼女に出来る限り寄りそう。
(なるべく態度にださないように振る舞っている。
だが、主はやては、心の底では気に病んでいる。
それでも、もはや止まることはできないだろう。
ならば、少しでも我らが負担を減らさねばなるまい)
胸の内に決意を宿しながら、盾の守護獣は、敬愛する主の後をついていくのだった。
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