ドラえもん のび太の転生ロックマンX(若干修正版)
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奇跡と切り札
???
「・・・・・・・ッス。・・・・・クス。・・・エックス。」
「?」
エックスは、懐かしい光景を見ていた。それは転生して初めて出会った老人との出会いの瞬間を。
「あな・・・・・・・たは?」
老人は、にっこりと笑って自分を見ている。
「わしはトーマス・ライト。お前の生みの親だよ、エックス。」
「エックス・・・・・・・・それが僕のな・・・・ま・・・・え・・・・」
まだ組み立て中だったこともあり、エックスの意識はそこで途絶える。
「エックス。そう、“無限の可能性”を意味する名前だ。お前は自分で考え、行動する新しいタイプのロボットになるんだよ。」
再び目を覚ますと右腕を除いてボディはほぼ完成している状態だった。
しかし、老人の方を見ると老人は最初に見た時と違ってかなり弱っているようだった。
「どうしました博士?お疲れの様子ですが・・・・・・・」
「エックス・・・・・お前は本当に人間と同じようだ・・・・・それだけに・・・ゴホッ、ゴホッゴホッ!!・・・・お前のように極めて自分達に近い存在を受け入れるには、まだ人類は幼すぎるかもしれん・・・・・」
まだ出力が不安定なのかエックスの視界が突然不安定になる。
「人は・・・・お前の無限の進化の可能性を危険と感じるかもしれない・・・・『エックス』という名には“危険”という意味もあるのだ・・・・・・・・」
再び意識が途絶える。
意識が再び戻ると自分はカプセルの中に入れられていた。老人はひどく弱った様子で自分を見ている。
「すまない、エックス。お前を世の中に出してやるには時間が足りなかった・・・・・ゴホッ、ゴホッ!!」
「ライト博士・・・・」
老人は、ひどく咳き込んでいた。エックスは似たような光景を一度だけ見たことがある。亡くなった祖母も似たようなことがあったからだ。おそらく今回で老人の顔を見るのも最後になるのだろうと悟った。
「わしはお前に悩み考え、そして進化を戦い取る力を与えた・・・・・・・・だが、それをまだ解放するわけにはいかないのだ・・・・・」
これを聞いてエックスは何となく言葉の意味を理解できた。つまり、自分は時が来るまで眠りにつくという事だ。目覚める先の未来がどうなるのかもわからない状態で眠りにつくのは正直言って不安だった。だが、それは自分に未来を託すという意味にも聞こえた。
「博士、僕はこの力を正しいことのために使います。希望のために。」
エックスの言葉を聞いて安心したのか老人はにこやかな表情でエックスを見る。
「あぁ・・・・・・もちろんわしもそう信じている。エックス、お前がその正しい心を持ち続けるということを。未来の人々が・・・・・・そう願う事を・・・・・・・・・・・」
老人は、パネルでカプセルを起動させる。蓋は閉じられ、わずかに見える窓の向こうでエックスは老人の顔を見る。
「博士・・・・」
「さらばだエックス・・・・・・・・・わしの・・・・・・・・世界の希望・・・・・・」
そこで意識が途絶えた。
再び意識を取り戻した時エックスは何もない暗闇の中に立っていた。
「・・・・・・結局、博士とおばあちゃんの約束・・・・・・・やぶっちゃったな。」
その場でしゃがみ込んでエックスは、ため息をつく。
「・・・・・・・・ドラえもん。やっぱり君がいないと僕は駄目だよ・・・・・。君がいたから僕はあんな楽しい日々を送ることができたんだ。毎朝叩き起こして、遅刻して先生に怒られて、ジャイアンにいじめられて・・・・・出木杉君を羨ましがって・・・・・・0点とってママに怒られて・・・・・・嫌な思い出があったけど考え直してみれば楽しい毎日だったよ・・・・・それなのに今の僕ときたら・・・・・誰も守れない・・・・・」
エックスは、もうこのままでいいと思った。
もう自分は負けてすべてが終わったのだ。
このままでいても誰かが何も言う事もない。
命がけでイレギュラーとも戦わなくて済む。
でも・・・・・・・
「ん?」
再び顔を上げると目の前に懐かしい襖があった。
「どうしてこんなところに・・・・・・・・・」
エックスは、襖を開けてみる。
「・・・・・・・・・」
目の前には懐かしい自分の部屋があった。
机に本棚、押し入れ、窓からの景色。
そして・・・・・・・・・何よりもそこで後ろを向いて座っているものに驚きを隠せなかった。
「・・・・・・・・・・・」
今でも忘れられないダルマのような体をした青い体。
振り向くと首に鈴のついた首輪、白いおなかにはポケットを付けた「彼」がいた。
「ド・・・・ド・・・・・」
今の自分では誰なのかわからないのはわかっているもののどうしても名前を呼びたくなった。しかし、「彼」の方が早かった。
「のび太くん!!」
ドラえもんは、うれしそうな顔でエックスの前に来た。
「えっ?」
「会いに来たよ、のび太くん!!」
エックスの手を握ってドラえもんは言う。
「どうして・・・・・・どうして、俺のことを・・・・・・・・」
ドラえもんはにっこりとしながらエックスを見る。
「だって、のび太くんが僕のことをずっと呼んでくれたじゃない。」
「ど、ド・・・・ドラえも~ん!!!」
エックスは、思いっきりドラえもんに抱き着いて泣いた。ドラえもんはそんなエックスを優しく撫でながら思わず涙が出ていた。
「辛かったんだね・・・・・・ずっと・・・・・」
「俺は・・・・・・・僕は・・・・・・何もできなかったよ・・・・・・・ゼロも・・・・・・・誰も守れなかった・・・・・・・・」
「うんうん。」
「君がいないと駄目なんだ・・・・・・」
「うんうん・・・・・・でも、本当にそう思うの?」
「えっ?」
ドラえもんの一言でエックスは思わず顔を上げる。
「どういう事?」
「本当に君は何も守れなかったと思うの?」
ドラえもんの顔を見てエックスは考え直してみる。
守れなかったものは確かに多い。だがそれと同じように守ることができたものもあるはず。
昼寝仲間のマンドリラー。
喧嘩はしたけど最後は協力してくれたマーティ。
本来イレギュラーとして倒すはずだったイーグリード。
全て守れなかったわけではなかった。
「ほら、君にだって守れたものがあるじゃない。君は、僕がいなくてもやればできるんだよ。」
「で、でも・・・・・・・僕はシグマに負けたんだ・・・・・・」
「また、やればいいじゃない。」
「無理なんだ!確かにジャイアンの時はどうにかなった時はあった・・・・・・でも、それとこれとでは次元が・・・・・」
「それは君がそう思っちゃっているだけなんだよ。よく考えればきっと答えが見つかるはずだよ・・・・・」
そう言うとドラえもんの姿が透明になり始めた。
「ど、ドラえもん!?」
「ごめん・・・・・もう時間がないみたい・・・・・もっと君と話したかったけど仕方ないね・・・・・・」
「い、嫌だ!行かないで!僕の傍にいてよ!!」
エックスは、必死にドラえもんに言う。そんなエックスの手にドラえもんは何かを握らせる。
「これは・・・・・・四次元ポケット・・・・・」
「君が忘れて行っちゃったからね。僕は君に会うことはできないけどいつもそばにいるよ。」
ドラえもんの姿はさらに透けていきとうとう見えなくなる。
「待って!ドラえもん!」
「じゃあね、のび太くん・・・・・・・・君に会えてうれしかったよ・・・・・・・」
「ドラえもん!ドラえもおぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!」
「・・・・・・う、うぅ・・・・・」
エックスは、目を開くといつの間にか先ほどの場所でうつ伏せになっていた。
「ん?あれ程のダメージを受けてまだ生きていたか。しかし、そのダメージではもはや動くことはできまい。」
シグマは、エックスに向けて火炎を放とうとし始める。
「くっ!(ダメだよドラえもん・・・・・・結局・・・・・・?)」
諦めかけていたエックスはいつの間にか自分が何かを握っていることに気が付く。
「これって・・・・・・じゃあ、さっきのは!!」
(僕は君に会うことはできないけどいつもそばにいるよ・・・・・)
「お別れだ、エックス。」
シグマは、エックスに向けて火炎を放つ。エックスは、急いで握っているものに手を突っ込む。
「頼む!間に合ってくれ!!」
「そんなぼろきれで何ができる?あの世にいるゼロの後を追うがいい!!」
火炎は既に目前に迫っていた。エックスは『四次元ポケット』からあるものを出す。
「ひらりマント!!」
「ん!?」
「ひらり!!」
エックスがマントをなびかせた瞬間、火炎は反射されシグマの方へ戻ってきた。
「うぉぉぉおおぉぉぉ!?」
まさかのカウンターにシグマは混乱する。エックスは急いで次の道具を出す。今度は柄が違う布きれで自分の全身を覆った。
「おのれ・・・・・」
シグマは、布きれに全身を隠したエックスの方を見る。
「それで隠れたつもりかエックス!!!」
シグマは、怒りの雷撃を放つ。
「な、なに!?」
しかし、そこには焦げてチリになった布きれだけでエックスの姿がない。
「バカな!?あれ程のダメージでどうやって・・・・・・!?」
その時自分の左手に何やら凄まじい殺気を感じた。見るとそこには罅だらけだったはずのアーマーが完全に修復されたエックスが何やら両手の間からエネルギーの塊のようなものを生成されていた。
「アーマーが直っているだとっ!?そんな馬鹿なことが・・・・・・・」
「ライト博士が言っていた波動・・・・・・ようやくわかった気がする。」
エックスは、エネルギーをシグマに向かって突き出そうとする。その光景にシグマは初めて恐怖を感じた。否、正確には二度目の恐怖であるが・・・・・。
「う、うぉあぁぁ・・・・・・」
「シグマ・・・・・これでお前も終わりだ!!」
「来るなあぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!」
エックスは、拳を前に突き出す。
「波動拳!!!!」
両手から放たれたすさまじいエネルギーはシグマの頭部を突き抜けシグマパレスに風穴を開ける。
「ぐわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!!エェエックスウゥゥゥ!!!!」
断末魔に相応しい叫びをあげながらシグマは崩れ落ちていく。シグマパレスも同時に崩壊し始めエックスは巻き込まれていく。
「ドラえもん・・・・・・・・・・・ありがとう・・・・・・・」
エックスは、シグマパレスと共に海の中へと落ちて行った・・・・・・・。
「・・・・・・・う、うぅ・・・・・はっ!」
エックスが意識を取り戻すといつの間にか砂浜で倒れていた。前を見ると沖の方で崩壊しているシグマパレスが徐々に沈没しているのがわかる。
「俺は・・・・・いったいどうしてここに・・・・・・」
周囲に人がいる気配はなく、何かが海に飛び込んだような音が聞こえたが周りは夜であることもあってよく見えない。
「・・・・・・・・」
エックスは、握っていた四次元ポケットを見つめる。
「・・・・・・・これはドラえもんが自分の代わりとして俺に贈ってくれたものなのか? ・・・・いや、きっとそうだ」
疑問に感じるのは尤もだが目の前にある以上認めるしかない。
シグマパレスが完全に沈んだ頃、東の空からゆっくり太陽が昇り始める。
「・・・・・・・長い戦いだったな・・・・」
僅かな期間ではあったもののそれ以上に長く感じる戦い。それがようやく終わりを告げたのだ。
「・・・・・・ペンギーゴ・・・・クワンガー・・・・・ゼロ・・・・・・終わったよ。長い悪夢からようやく目を覚ましたんだ・・・・・・でも、君たちはもう二度と戻ってこない・・・・・・・絶対に君たちのことを忘れないよ・・・・・・」
・・・・・・・・戦いは終わった。
明日になれば、再び平和な朝が訪れる事だろう。
しかし、傷つき倒れ、夜の闇へと消えていった者達が、その朝を迎える事は決してない。
ひとり立ちつくすエックスの姿は、その日差しに照らされて、今にも消えてしまいそうに見えた。
何故戦わなくてはならないのか?
誰もエックスにそのことを教えてはくれない。
休む間もなく、どこかでイレギュラー達が発生し、再び彼は戦いの渦へと巻き込まれていくのだろう・・・・・
優しさを捨て切れぬイレギュラーハンター エックス。
彼の戦いは、どこまで続くのであろうか?
彼の腕に冷たく光る、亡き友ゼロのバスターの輝きと共に・・・・・・
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