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猫がもたらすもの

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第三章

「仕事も猫とか他の生きもののことで」
「やりがいがあるか」
「そうなりました」
 こう言うのだった。
「早寝早起き、整理整頓も出来て」
「癒されてな」
「それで仕事にも前向きになれて」
「その仕事がやりがいのあるものばかりか」
「もう何もかもがですよ」
 それこそというのだ。
「よくなった」
「そんな感じだな」
「ニャーコのお陰で」
「いいことだな」
「はい、それに」
「それに?」
「実はですね」
 その明るい顔で言うのだった。
「ペットショップでキャットフードとか買う時に店員さんと猫の話してたら」
「どうなったんだ?」
「若い女の店員さんでしたけど」
「ああ、その人とか」
「仲良くなって」
 それでというのだ。
「付き合う様になりました、凄くいい娘で」
「新しい恋にも出会えたんだな」
「そうなんですよ」
「おいおい、全部な」
「ニャーコがもたらしてくれてますね」
「そうだな」 
 まさにというのだ。
「聞いてると」
「俺もそう思います、猫が来てくれて」
「それでだな」
「俺よくなりました」
「それは何よりだ、じゃあこれからもな」
「はい、ニャーコと一緒に幸せになっていきます」
 笑顔のまま言う、そしてだった。
 猿野は盛田と別れようとした、だが。
 ここで盛田は猿野を飲みに誘った、彼にとっては社交辞令だったが。猿野は彼に対して明るく笑って話した。
「今日うちにその娘が来るんで」
「ペットショップのか」
「はい、ですから」
 それでというのだ。
「申し訳ないですが」
「そうか、じゃあな」
「また」
「二人の女の子と仲良くな」
 盛田は自分と別れた猿野の背に笑顔で声をかけた、すると猿野も振り向いて笑顔で挨拶をした。それは幸せの中にある笑顔だった。


猫がもたらすもの   完


                  2020・5・22 
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