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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝

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第97話 罰と誓い

冀州の私の居城に戻った私は主要な部将を招集し、揚羽と真悠に対して、罰を与える旨を伝えました。

家臣の皆は2人が北郷を并州へ逃亡させたことに驚愕していましたが、それ以上に私の判断に猛烈に抗議してきました。

「正宗様、今回の裁定は合点がいきません!」

冥琳は私に厳しい視線を向け声高に言いました。

「冥琳、これは決めたことだ」

彼女が言いたいことは分からなくもありません。

「揚羽殿達を罰せられるなら、何故に劉備をお許しになったのです。北郷が揉め事を犯したのは、元はと言えば劉備が彼を見逃したからではありませんか? その元凶である劉備を無罪放免で放逐したにも関わらず、揚羽殿のみを罰するのは道理に反します」

冥琳は私の言葉には耳を貸さず、矢継ぎ早に言いました。

「う・・・・・・」

私は冥琳の追求に口を噤みました。

揚羽を許しては今後、綱紀が緩んでしまう気がします。

こんな事態になって、私の甘さの問題点に気づくとは情けない話です。

劉備を罰して、話を納めておけば良かったと今更ながら後悔しています。

「何を黙って御出でなのですか!」

「まあまあ、冥琳様、落ち着いてください~」

冥琳の剣幕にたじろぐ私と冥琳の間に風が入ってきました。

「風、どういうつもりだ?」

「どうもこうおもないのです~。冥琳様は正宗様の裁定にご不満なのですか?」

風はどこ吹く風という様に、飄々と冥琳に言いました。

「不満は大有りだ」

冥琳は胸の処で腕を組み言いました。

「正宗様の意見に不満があろうと、それに従うのが家臣の道ではございませんか~? それに、正宗様は北郷の件で、ご自分の甘さにお気づきに成られ、自身の不備を改めれようとされているのです~。ここで揚羽様と真悠殿は許して、次回からは許さぬでは臣下への示しがつかぬでしょう。落ち度に気づいた以上、その日より改められるべきはないでしょうか~?」

風はアメを舐めながら言いました。

「う・・・・・・う~むぅ」

冥琳は風の発言に不満気な表情を浮かべつつも黙りました。

「冥琳殿、お気遣いありがとうございます。ですが、心配には及びません」

揚羽は冥琳を押しのけて、前へ進みでました。

「正宗様、謹んで罰を受けさていただきます」

揚羽は私の顔を真っ直ぐに見て言いました。

「一つお願いがあるのですがよろしいでしょうか?」

揚羽はひと呼吸置くと表情を真剣にして言いました。

「何だ?」

「正宗様のご改心を私は嬉しく思っています。この私を罰すると決意された以上、劉備に施した多大な恩に見合う物をいずれ返して貰うおつもりだと思っていますが、それに相違ございませんか? 真逆、貸しを貸したままなどと世迷い言を言わないでしょうね」

揚羽は淡々に無表情で言いました。

劉備への貸しを返せって・・・・・・。

借金取りじゃないんですから・・・・・・。

でも、桃香から貸しをいずれ返させるのは避けて通れないでしょう。

「正宗様、ご真意をお話くださいませんか? 冥琳殿も正宗様のご真意を聞く事が適えば、あなた様の御心に沿うと存じます」

黙る私に揚羽は発言を求めました。

「当然です~」

風、ナイスフォローです。

「風、あなたに聞いていません」

揚羽は憮然とした表情で風に言いました。

「揚羽、心配するな。劉備への貸しは必ず返して貰う」

風のお陰で揚羽に冷静な回答をすることが出来ました。

「その言葉、信じて良いのですね。天に誓うことが出来ますか?」

揚羽は私の神妙な表情で見つめました。

周囲に目を向けると冥琳以下、他の家臣も私を凝視しています。

私は彼らの視線が気まずくなり、揚羽に視線を戻しました。

「天に誓うまでもない。貸したモノは返して貰うのは当然のこと。だが、揚羽が望むなら、天に誓おう。この私は劉備に貸しを返して貰う」

私は桃香に対し、苛烈な要求を行うことができるのでしょうか?

善人、悪人問わず淡々と己の進む道の障害になる者を排除していく・・・・・・。

これが私の進むべき道、選んだ道です。

私の優柔不断な判断の為に、揚羽に心配させていたのですね・・・・・・。

そう考えると揚羽と真悠に罰を加えることが心苦しくあります。

「正宗様、私はその言葉を決して忘れません」

「不満はございますが、正宗様の方針に従います」

冥琳も納得したようです。

私は肩の力が急に抜けました。





その後、時を置かずにして、揚羽と真悠への罰が執行されました。

私は揚羽達の罰が執行される間、その場所で彼女に下される罰から目を背けずに見ていました。

棒叩きと思って甘く考えていましたが、その光景を見て考えを改めました。

拷問の間違いじゃないでしょうか?

揚羽と真悠は苦痛に顔を歪めながらも黙って痛みに耐えていました。

途中から、見ていられずに目を反らしそうになりましたが、風が私に目を反らさぬように言ってきました。

「自分の命じたことから目を背けてはいけません」と言われました。

風の言葉は最もなのですが、見ていられません。

女の子をあんな凶悪な棒で殴りつけるなんて・・・・・・。





永遠とも感じられた揚羽達への棒叩きの刑は一刻程で終わりました。

私が叩かれていた訳ではありませんが、憔悴してしまいした。

私は罰が終わると、誰の目を憚ることなく、一目散に揚羽の元に駆け寄りました。

「あ、揚羽! 大丈夫か! 今直ぐ傷を直すから」

私は大慌てで彼女の血で汚れた着物の箇所に手をやりました。

「ま、正宗様・・・・・・、そ、その・・・・・・ように、直ぐに傷をい、癒され・・・・・・ては罰の意味が・・・・・・ありません。ほ、骨が折れたかもしれませんが・・・・・・命別状はありません」

揚羽は力無く頭を上げることなく、途切れ途切れの声で言いました。

「揚羽、何も言うな。私にはお前が必要なんだ」

私は揚羽の言葉を制止して、治療を施しました。

「ま・・・・・・正宗様・・・・・・お気持ちは嬉しいです・・・・・・。ですが、後のことは家の者に任せ、あなた様は・・・私のことは捨て置いてください」

「そんなこと出来る訳ないだろう」

私は揚羽の言葉に拒否感を抱きました。

「ま・・・・・・正宗様は・・・・・・変わられるので・・・・・・ご、ございましょう?」

「変わるが、こんなお前を放っとくことなんか出来る訳ないだろう」

私は狼狽した表情で言いました。

自分でやっておいて何を言っているんだと自分に言ってやりたいですが、それどころではありません。

揚羽だけでなく、真悠にも治療を施さなければ・・・・・・。

私は完全にパニック状態に陥っています。

「正宗様、治療は・・・・・・明日の朝に・・・・・・でもお願いいたします。今日は・・・・・・」

揚羽はそれだけ言うと意識を失いました。

「お、おい、揚羽は何も言わないぞ!」

私は揚羽が気絶したのを確認すると周囲を見渡しました。

「正宗様、落ち着いてください。揚羽様は気絶しているだけです。棒叩きと言っても、この刑罰で死ぬ場合もありますからね。この刑罰をまとも受けるから、揚羽様達はこのようになったのです。普通は金を掴ませて、刑の執行役に手心を加えて貰うものですから~」

「風、何を暢気に言っている」

「揚羽様も言われたではないですか? これは罰なのです。刑の執行は終わりました。正宗様は政務にお戻りください。後の事はこの風にお任せなのです」

風は私にアメを突きつけ、ポーズを決めました。

「そ、そんなこと」

「揚羽様のお言葉をお忘れなのですか?」

風は私の言葉を制止するなり、真剣な表情で見つめ言いました。

「分かった」

私は風にそれ以上何も言わず、後ろ髪を引かれる想いを抱きつつ踵を返しました。
 
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