公園の猫
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第一章
公園の猫
片岡雅也は茶色に染めたショートの髪の毛と短ランから見てわかるまなの不良である、背は一七四位ですらりとしている。いつも喧嘩に明け暮れていて通っている高校でも悪名高いが。
所謂元ヤンの両親からはいつもこう言われていた。
「喧嘩はいいが下らねえことするなよ」
「いじめとかカツアゲとか万引きはするんじゃないよ」
「人の道は外れるなっていうんだよな」
雅也も両親に応えた。
「そうだよな」
「そうだ、ヤンチャでもいいんだ」
父の龍之介がまずこう言った、今は鳶職人で髪の毛はリーゼントだ。腕のいい職人でいつも真面目に働いている。
「喧嘩はな、けれどな」
「いじめとかカツアゲはか」
「万引きもな、そして卑怯な真似はするな」
「人間ね、そんなことしたら終わりなんだよ」
母の八重子も言う、今はスーパーのレジをしている。
「絶対にね」
「人間でいろってのか」
「間違ってもヤクザになるんじゃねえ」
父はこうも言った。
「ヤクザってのは俺達と違うんだ」
「カタギとはか」
「そうだ、外道なんだよ」
ヤクザ者はというのだ。
「そうなるな、喧嘩はしてもカタギでいろ」
「ヤクザになるなか」
「泥棒にもな」
こちらにもというのだ。
「なったらその時は許さねえからな」
「そのことは覚えておくんだよ」
母も言う。
「絶対に人の道は外れるんじゃないよ」
「誰がそんなことするか」
これが雅也の返事だった、彼もそのつもりだ。子供の頃から両親に言われてそれでそう考えているのだ。
「喧嘩はしても下らないことはするな」
「馬鹿でもいいんだ」
父はまた言った。
「俺も母ちゃんも頭は悪いからな」
「それでか」
「高校に入っただけでもましだ」
両親は名前を書いたら入られる様な高校を何とか出ている、そして雅也もそうしたレベルの学校に通っている。彼はまだ一年だ。
「なら卒業してな」
「就職してか」
「カタギのな、そうして生きろよ」
「それでいいんだな」
「ああ、馬鹿でもな」
よく夕食の時にこう言った、共働きで生活はそれ程苦しくなくローンで家も建てていた。雅也はその中で暮らしていた。
その中で彼はある日家に帰って夕食の後で両親に言った。
「野良猫見付けたぜ」
「拾ってきたのかい?」
「いや」
母の問いに首を横に振った。
「見付けたなよ」
「それだけかい?」
「ああ、そうだよ」
こう答えた。
「ただな」
「見付けただけかい」
「茶色の子猫だったな」
「子猫かい」
「ああ、そうだったよ」
「その子すぐに拾ってきな」
母は息子の言葉に煙草を吸いつつ言ってきた。短い茶色にした髪の毛が目立つ。四十だがまだ元ヤンの雰囲気が強い。
「いいね」
「拾ってどうするんだよ」
「決まってるだろ、うちで飼うんだよ」
「うちにはもうゲンタいるだろ」
犬のことをだ、雅也は言った。番犬にもしている茶色の毛の柴犬だ。家族でかなり可愛がっている。
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