戦国異伝供書
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第八十八話 初陣その四
「どうしてもな」
「それは、ですな」
「圧倒的ですな」
「大内家も尼子家も」
「国人とは格が違います」
「まさに大名です」
「そう言っていい、大内家は元々守護であり」
そしてというのだ。
「その守護する国もな」
「多いですな」
「かつては六国の守護でしたし」
「今もですな」
「多くの国の守護ですな」
「尼子家も出雲を拠点とし」
そしてというのだ。
「石見等にも手を及ぼしておるな」
「左様ですな」
「やはり大きいですな」
「あの家も」
「左様ですな」
「そうした家と渡り合う様になるには」
そこまでの力を備えるにはというのだ。
「当家はまだじゃ」
「及ばぬ」
「それも遥かに」
「だからですな」
「長い時をかけ」
「力を備えていきまするか」
「まずは安芸一国」
自分達がいる国だというのだ。
「そして備後や備中、美作に備前に石見とな」
「力をですか」
「及ぼす様にして」
「そしてですか」
「そのうえで、ですか」
「両家と渡り合える様にする」
大内家にも尼子家にもというのだ。
「時をかけてな」
「焦りませぬか」
「それはないですか」
「決して」
「焦ってどうなる」
それはとだ、元就は家臣達に話した。
「一体」
「左様ですな」
「急いてもことをし損じます」
「そこで周りが見える」
「うっかりとした過ちを犯し」
「そこから崩れますな」
「石の橋を渡るにも」
そうしてもというのだ。
「叩いて渡る様にじゃ」
「ことを進められますか」
「慎重にですか」
「そうしてことを進め」
「力をつけていきますか」
「そうじゃ、じっくりとやっていくぞ」
こうした話をしつつだった、元就は主である幸松丸の後見人として毛利家の政を見ていった。その彼により毛利家は確かに強くなったが。
ここで彼は報を聞いて言った。
「わかった、ではな」
「それではですか」
「これよりですか」
「出陣ですか」
「そうされますか」
「うむ、わしもじゃ」
元就自身もというのだ。
「出陣する」
「初陣ですな」
「遂にこの時が来ましたな」
「それではですな」
「意気込んで進まれますか」
「うむ、しかしな」
ここでまた言った元就だった。
「敵は強い」
「はい、武田家は」
「随分とですな」
「強いですな」
「今回も兵が多いです」
「吉川殿にもお話をする」
吉川家と、というのだ。
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