戦国異伝供書
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第八十七話 元服と初陣その十三
「おそらく北条家は早雲殿からさらに」
「大きくなるか」
「そうかと」
「両上杉家を圧してか」
「そうかと」
「関東においてか」
「覇を唱えるかと」
そこまでになるというのだ。
「それがしは思いまする」
「そうなるか」
「あと。幕府ですが」
元就は幕府の話をした。
「最早」
「力は戻らぬか」
「乱で力を失い過ぎました」
「だからであるな」
「実質幕府は山城一国のみです」
この国を治めているだけだというのだ。
「それではです」
「どうにもならぬか」
「公方様もお力はなく」
「それでじゃな」
「はい、あのままです」
まさにというのだ。
「落ちるだけかと」
「力が戻らずにか」
「そうなるかと」
「そうか。わしも上洛したが」
「ですが」
「幕府はあのままか」
「落ちるかと」
そうなるというのだ。
「それがしも残念に思いますが」
「では天下は暫くはこのままか」
「荒れて」
そうしてというのだ。
「多くの戦も行なわれます」
「そうなるか」
「残念ですが」
「そうか、では戦国の世が終わるまでな」
「それまでは、ですな」
「そなたの力当家の為に使わせてもらう」
こう元就に言う、そして興元は確かに酒を控える様になったが最早それは遅く若くして世を去った。そうしてだった。
元就は幼くして主となった幸松丸の後見人になった、だがそれで彼の大きな運命の流れは止まらなかった。
第八十七話 完
2020・2・23
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