戦国異伝供書
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第八十七話 元服と初陣その九
「この安芸でな」
「生きていきまするな」
「うむ、しかしな」
「しかしとは」
「お主はどうなのじゃ」
「と、いいますと」
「お主は前に家臣達に言っておったな」
真剣な顔でだ、興元は松壽丸に言ってきた。
「当家は安芸だけでなく山陽と山陰にも覇を唱えるべきだとな」
「はい、その様にです」
松壽丸もその通りだと答える。
「確かに言いました」
「そうであるな」
「やがて安芸を手に入れて」
「そうであるな」
「それが何か」
「大内家も尼子家もか」
興元は松壽丸に態度をあらためて言った。
「やがてはか」
「あえて申しませぬ」
「うむ、そこまで考えておるか」
言わずともだった、興元は神妙な顔になり弟に述べた。
「大きいな、ならば」
「はい、この国をです」
「安芸をな」
「手中に収めるべきです」
「だからこそまずは当家の力をじゃな」
「つけるべきです」
このことについてもだ、松壽丸は答えた。
「田畑も街も整えて」
「そして兵もじゃな」
「多くしましょう」
「そして井上家にもか」
「二度とです」
「うむ、家臣の家にはな」
「二度とです」
ここでも強い言葉を出した。
「その為にも」
「内をよくしてこそであるな」
「家が大きくなります」
「そうであるな、ではお主はこれよりわしの片腕になってもらう」
興元はここで言った、そこは既に考えているという顔でありその顔で自身の弟に対してさらに言うのだった。
「よいな」
「それで、ですか」
「この城にも入ってな」
「兄上をですか」
「助けてもらいたい」
「元服したうえで」
「宜しく頼む、元服にはまだ早くとも」
それでもというのだ。
「元服してもらってな」
「そのうえで」
「この城にいてもらいたい」
「そして猿渡城もですか」
「守ってもらいたい」
是非二と言うのだった。
「だがな」
「それでもですな」
「やはり基本はな」
何といってもというのだ。
「この城にいてもらいたい」
「当家の為に」
「宜しく頼む」
こう言ってだ、そしてだった。
松壽丸は父の葬儀が終わるとすぐに元服することとなり諱は元就となった。そのうえで猿渡城から吉田郡山城に入り。
そのうえで兄を助けた、そうして毛利家は元就は兄を助けてそのうえで毛利家の政にあたった、するとだった。
毛利家は日増しに強くなり家臣達よりも強くなっていっていた。だが。
兄にだ、元就はこう言った。
「兄上、近頃です」
「どうした」
「はい、酒が過ぎるのでは」
こう言うのだった。
「どうも」
「そうか」
「はい、ですから」
それでというのだ。
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