ロックマンZXO~破壊神のロックマン~
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第二十三話 プレリー
前書き
ガーディアン司令官にアカルイミライヲー
新しく覚えた新技である真空刃の練度を上げるためにトレーニングルームに引き籠っていたヴァンだが、フルーブに呼び出され、司令室のブリッジに向かうと手渡されたチップを凝視していた。
「なあ、フルーブ。何だこれ?」
「モデルXのエネルギーを共有するためのチップです。これを組み込めばモデルXから離れていてもモデルOの暴走はしないはずです」
「エリアGのイレギュラー襲撃の際にヴァンの手元にモデルXがあったからエールが丸腰の状態だったでしょう?このままじゃ不便だと思ってフルーブに頼んで作らせていたの」
ヴァンは自分の手の中にあるチップを見つめる。
最近はモデルXが近くにいてもモデルOの声が鮮明に聞こえるようになったので、あまりモデルXの抑制があまり意味を成さなくなってきた。
しかし、無いよりはあった方がいいだろう。
「ありがとな二人共」
自分のために作ってくれたことが嬉しく、ヴァンは笑みを浮かべて礼を言うとブリッジを出ていく。
「…………」
「さて…プレリーさん、私はガーディアンベースの修理がどこまで済んだか確認してから戻ります。あなたも休まれた方が…」
「ええ、そうね…」
そんなヴァンの背中をプレリーは少し寂しそうに見ていたが、やがて意を決したようにブリッジを後にした。
「…ふう」
そして、一方で特訓を切り上げて部屋で休んでいたエールはヴァンのことを考えていた。
最近、ヴァンに元気がない。
悩んでいるように見えるし、シュウのことを引き摺っているのかもしれない。
運び屋の仕事の際にシュウと会った時、あの時の言葉通りにシュウをボコボコして反省(と言ってもシュウ自身後悔していた)させた。
あまりのタコ殴りに運び屋に興味を持って一緒に来ていたモデルHとモデルLはドン引き、モデルFは笑いながらエールを応援、モデルPは無言だった。
後でシュウに謝る機会を設けなければとエールは考えると、保養施設のキッチンに向かった。
「(久しぶりにヴァンの好きな物を作ってあげようかな?)」
ガーディアンの食事も悪くはないが、時々自分で作りたくなる時がある。
「エール、これから飯でも食べないか?」
「あ、ジルウェ…今日はアタシが作ろうと思うんだ。最近ヴァンも気が滅入ってるようだし」
「そうか、そうだな。よし、あいつの好きな物でも作ってやるとするか」
ヴァンのために二人で作るのも悪くない…と思った直後であった。
キッチンの方から爆音が聞こえたのは。
「な、何事!?」
「まさか、セルパン・カンパニーの襲撃か!?」
二人が慌ててキッチンに入ると、そこには黒い煙を発しているフライパン。
「コホッコホッ!!」
煙を吸って咳き込んでいるプレリーの姿があった。
「プレリー、何してるの?」
「コホッ…あ、エール…その…最近、ヴァンの元気がないから…何か作ろうとして…」
恥ずかしそうに料理本を見遣りながら言う。
ハンバーグのレシピのページであることからハンバーグを作ろうとしていたのは分かる。
「何でハンバーグで爆発するの?」
「そ、その…失敗しちゃって…」
「は、はあ…」
どういう失敗をすればハンバーグが爆発するのか…気になるが後が怖いのでジルウェは黙ることにした。
「それにしても、“ガーディアンで騒動ある所にプレリーあり”だね…」
初めて会った時といい、ぬいぐるみ騒動といい、そして今回のハンバーグ騒動。
ガーディアンで何かの騒動がある時は必ずと言っていいほどにプレリーがいた。
「そ、そんな風に言わなくても…」
ショックを受けるプレリーにジルウェは苦笑しながら黒い塊となったハンバーグを見つめる。
「何というか…プレリーって料理苦手なんだね」
「うう…」
「よし、アタシ達もヴァンに何か作ってやろうと思ってたし。一緒に作ろう!」
こうしてプレリーを含めた三人で料理をすることになったのだが…。
「プレリー、包丁をそんな持ち方したら危ない!あ、そんな切り方も駄目っ!!」
「司令官、塩も入れすぎですよ!」
包丁の持ち方が危なっかしく、調味料も入れすぎになりそうになり、エールとジルウェは普段の料理とは比べ物にならないくらいに疲弊した。
「ご、ごめんなさい…」
「も、もしかしてプレリーって…料理したことないの…?」
「クッキーとか、簡単なお菓子作りなら何とか出来るんだけど…お料理は…ないの」
「それでよく作ろうと思えたね…」
「だってお姉ちゃんが指を切ったりするからって言って教えてくれなくて…」
“お姉ちゃん”が料理を作る度に幼かったプレリーもやってみたいと言ってみたのだが、“お姉ちゃん”は危ないから駄目と言って触らせてくれなかった。
「プレリーのお姉さん、過保護すぎでしょ」
「うう…」
初代司令官の過保護にエールは呆れてしまった。
とにかく何とか夕食の時間までに間に合わせるために三人は料理を再開した。
そして夕食の時間。
“我に全てを委ねろ”
“全てを滅ぼす”
“我は…”
「…………?」
通路を歩いていたヴァンは頭に響いていたモデルOの声が途切れたことに気付き、後ろを振り返るとそこにはエールがいた。
モデルXが近付いたことでチップによるエネルギーの共有が良くなり、一時的にモデルOが黙ったのだろう。
「ヴァン、一緒にご飯食べない?今日はヴァンの好きなハンバーグだよ」
「おお、そうか…って、何でお前…そんなに所々焦げてるんだエール?」
「そこは気にしないで」
あの後は苦戦の連続でプレリーに料理の基本を教えつつ、何とか夕食の時間までに間に合わせることが出来たのだ。
時間に間に合わせた自分を褒めてやりたい。
そして食堂に行くと、ヴァンの席には少し身が崩れたハンバーグ。
「何で崩れてるんだ?」
「気にしないで食べて、味は保証するから」
物陰でジッと見ているプレリーとジルウェ。
ヴァンはハンバーグを口に入れて咀嚼する。
「………美味い」
「っ!!」
ヴァンの一言にかつてない勝利感を覚えたエールはガッツポーズを取る。
「でも味付けがいつもと違う…エールや先輩でもない…誰がこれをが作ったんだ?」
「プレリー…もがもが」
すぐに駆け付けてエールの口を塞ぐプレリー。
しかしその慌てぶりからこのハンバーグはプレリーが作った物なのだと分かった。
「このハンバーグ…プレリーが作ったのか?」
「え?」
「そうだぞヴァン、司令官が最近お前に元気がないからってエールと俺に教わって作ったんだぞ」
「ちょっとジルウェさん!?」
せっかくエールを黙らせたのにジルウェが喋ってしまった。
「そうなのか、プレリーありがとな」
そう言うとエール同様にプレリーとジルウェの所々焦げた格好を見つめる。
「何で三人揃って焦げてるんだ?」
「プハッ、実はプレリーは料理したことなくてね。何回も料理を爆発させちゃったの」
「爆発?」
「エール!」
何とかプレリーの手から抜け出せたエールが理由を暴露し、プレリーは顔を真っ赤にした。
「どうやらプレリーはお姉さんに子供の頃から危ないから包丁を持たせてもらえなかったみたいなの」
「…少し過保護すぎないか?」
過保護すぎる初代司令官に流石のヴァンも呆れてしまう。
因みに経験が全くないから失敗したわけで、エールに付きっきりで特訓してもらった結果、プレリーは料理を爆発させる頻度は減り、無事な作品はヴァンに振る舞うことが出来るようになった。
しかし爆発はなくなったわけではないので、時々爆発に巻き込まれて真っ黒になるエールの姿がガーディアンの保養施設で見掛けられた。
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