ロックマンZXO~破壊神のロックマン~
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第二十話 保養施設
前書き
少なくても壊れた状態で空を飛ばすなんて怖くないですかね?
相当なダメージを受けたガーディアンベースはインナーに近いアウターの保養施設に辿り着いた。
元々は誰かの別荘だったらしいのだが、イレギュラーの襲撃を受けて放棄したらしい。
ガーディアンがイレギュラーを掃討したものの、イレギュラーの襲撃を受けた場所にいたいと思う者は誰もいなかったらしく、今まで身を休める場所を持っていなかったガーディアンが買い取ったとのことだ。
「はあっ!!」
「ていっ!!」
いくらインナーに近いからと言ってやはりアウターであるためか、迷い込んだイレギュラーも何体かいた。
アルティメットセイバーを抜いてイレギュラーを斬り捨てるヴァンと、ZXバスターでヴァンを援護するエールが周囲の安全を確認してから施設に入った。
「ここがガーディアンの保養施設よ。修理が終わるまではここが拠点となります」
「うわあ、凄い!ドラマで見た別荘みたい!」
普通ならば足を踏み入れることすら出来ないであろう大きな施設にエールは興奮する。
「元々別荘だったんだって…でもこれだけでかい別荘を持てるなら警備隊くらい雇えそうだけどな」
「ロックマンの状態で過ごしてたから感覚が麻痺してきてるなヴァン?そこらの装備じゃイレギュラーは相手に出来ないぞ」
常時ロックマンの状態だからかヴァンのイレギュラーの脅威度が下がっていることにジルウェは苦笑した。
「そうか…そうだった…」
「取り敢えず、俺達は使えそうなパーツを探してくる。お前達は今くらいゆっくり休め」
「分かった…プレリー、イレギュラーが出たら呼んでくれ。すぐに出るからな」
「駄目よ、今日一日。あなたは休むこと」
「は?」
プレリーにイレギュラーが出たら呼ぶように頼んだが、断られてしまったことにヴァンは驚く。
「あなたはガーディアンベースに来てからもあまり休んでないじゃない…頼りきりなのにこんなことを言うのも何なんだけど…せめて今くらいは休んで…お願いヴァン」
「…………じゃあ、俺は地下にいる。」
「え?部屋は用意…」
「地下の方が落ち着く…外が見えると何だか落ち着かないんだ。悪い、プレリー」
プレリーは部屋を用意しようとしていたが、ヴァンはそれだけ言うと部屋から出ていった。
「………それじゃあ俺はパーツを集めてきます。エール、お前も今日一日くらい休め」
「分かった、ジルウェも頑張って」
外に出ていくジルウェを見送ると、残されたエールとプレリーは互いに笑った。
「何か、アタシとプレリーの組み合わせって珍しくない?だってプレリーはいつもヴァンやサルディーヌと一緒にいるし」
「そういうあなたもいつもジルウェさんと一緒じゃない?」
「ア、アタシは仕事だから…」
「ふふ、そういうことにしてあげる」
微笑むプレリーにエールは悔しげに膨れる。
見た目は同じくらいでも生きてきた年月の長さが違う。
「…エールはジルウェさんが好きなのね」
「え!?あ、いや…アタシは…」
「隠さなくて良いのよ…好きな人が身近にいてくれるのはとても幸せなことよ。いつか気持ちを伝えられると良いわね……後悔だけはしないで」
プレリーの表情はエールをからかうようなものではなく、心から応援しているものだった。
「……ありがと…あのさ、聞いていいプレリー?」
「何かしら?」
「プレリーってさ、いつもヴァンのこと見てるけど…もしかしてヴァンのこと好きなの?」
「え?」
驚くプレリーにエールは他の可能性も尋ねる。
「それとも、今のヴァンが好きだった人に似てる…とか?最初はジルウェに気があるのかなって思ってたんだけど、ヴァンが仲間になってから、プレリー…ずっとヴァンのこと目で追ってたじゃない?懐かしそうに…大切な人の面影を見てるような…」
二人をプレリーはどこか懐かしそうに、そして寂しそうに見つめていたのをエールは覚えている。
「…ジルウェさんとヴァンは……お兄ちゃんに似てるの」
隠すようなことでもないため、プレリーは二人を見ていた理由を話した。
「え?プレリーのお兄さんに?」
「ええ、モデルZのオリジナルになった人で見た目がジルウェさん…特にヴァンにそっくりなの」
古い写真を取り出してエールに見せると、初代司令官らしい少女とプレリーの面影がある少女、そして二人の隣に立つ真紅のアーマーと腰にまで伸びる金髪が特徴の男性型レプリロイド。
「うわあ、本当にアーマーとかヴァンそっくり…でもプレリーのお兄さん…とても綺麗だね。お姉さんも可愛い人だし」
ヴァンも顔立ちは整っている方だが、モデルZのオリジナルとなったレプリロイドは中性的な顔立ちをしており、芸術と言っても過言ではないくらいに整っていた。
「ありがとう、お兄ちゃんはとても無口な人だったけど優しい人だった。幼かった私がお姉ちゃんから貰ったぬいぐるみをなくしちゃった時も私と一緒に探してくれた…まあ、デリカシーがないところもあるんだけど。昔…サイバーエルフに名前をつけようとして、お兄ちゃんにも考えてもらおうと思ったんだけど、サイバーエルフを回収する際の敵との戦闘話になっちゃうし、最後は“不気味な奴だったな”の一言だし…」
「さ、流石…モデルZのオリジナルだね…」
幼かったプレリーにそんなことを言ってのけたモデルZのオリジナルに顔を引き攣らせるエールを見てプレリーは苦笑した。
「あの時の私はお兄ちゃんとお姉ちゃんと一緒にいるだけで幸せだった…人間と機械の戦争が終わったらお兄ちゃんやお姉ちゃんと私や当時の仲間のみんなでエネルギー不足に怯えることもなく幸せに暮らせると思ってた。でも、戦争の最後でお兄ちゃんいなくなっちゃって…お兄ちゃんのために平和な世界にしようとしていたお姉ちゃんもいなくなっちゃった…私は見ていることしか出来なかった…お兄ちゃんにとってお姉ちゃんはきっと大切な人で…いなくなったお兄ちゃんの代わりに私がお姉ちゃんを守らなきゃ、支えなきゃいけなかったのに…」
いなくなってしまった。
“お兄ちゃん”や“お姉ちゃん”だけではなく、世話になった温厚で父親のような技術者の彼も。
戦いで傷ついたみんなの手当てをして、自分の面倒を見てくれたおばさんも。
気持ちが先走りして失敗する事もあったけれど組織の部隊長を任されたりして頼りになるお兄さんだった彼も。
話をするのが大好きで一度話し出すとなかなか終わらなかったけれど、昔話をたくさん聞かせてくれたお爺ちゃんも。
苦手だった人の部下だったけれど、明るくて気さくなお姉さんと生真面目で堅いけれど優しかったお姉さんも。
いつも自分に悪戯したり、仕事をサボったりしてみんなを困らせていた彼も。
みんないなくなってしまった。
頼りになる人はみんないなくなって、役立たずだった自分だけが生き残ってしまった。
過去の仲間や出来事を思い出してか、徐々に声が掠れていき、写真に落ちていく涙を見てエールはプレリーにハンカチを差し出した。
「これ使って」
「…っ、ありがとうエール」
プレリーは差し出されたハンカチを受け取って涙を拭くとエールに礼を言う。
「……プレリー、一人で背負い込まないでね?プレリーは一人じゃない。アタシやヴァン、ジルウェだっているんだから」
「ええ」
「ねえ、プレリーのお兄さんとお姉さんのこと…聞かせてくれる?」
「ええ、勿論よ。その代わり…私もあなたやヴァンのことを聞きたいわ」
「勿論!たくさん話そうよ!それで、プレリーのお兄さんって性格の方はヴァンかジルウェのどっちに似てるの?」
「そうね…お兄ちゃんはクールだったけど、内面はとても熱い人で負けず嫌いなところがあったからどちらかと言えばヴァン…かしら?」
ガーディアンの保養施設で、エールとプレリーの楽しげな会話が響いていた。
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