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戦国異伝供書

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第八十六話 紫から緑へその六

「我等はな、しかしな」
「しかし?」
「しかしといいますと」
「それは難しいな」
 実にというのだ。
「戦国の世はな」
「どうしてもですな」
「それは難しいですな」
「家中は常に争う」
「そしてお家騒動も常ですな」
「そうした世の中ですな」
「だからな」
 それでというのだ。
「尚更じゃ」
「当家は争わず」
「そうあるべきですな」
「親兄弟も主従もまとまる」
「そうあるべきですな」
「それだけで全く違う」
 ここでも杉大方の言葉を思い出して話した。
「だからじゃ」
「それではですな」
「我等はですな」
「決して家の中で争わない様にする」
「そうあるべきですな」
「家の中で争えば」
 それでというのだ。
「多くの家を見ればわかるな」
「そこから弱まりますな」
「そうして滅ぶ家もありますな」
「そうなりますから」
「だからですな」
「うむ、当家はその中でまとまっていれば」
 それならというのだ。
「それだけで大きな力になる」
「ううむ、そこまで言われるとは」
「まだ元服前だというのに」
「若殿は素晴らしいですな」
「そこまでの方だとは」
「これは義母上に言われたことでな」
 このことを素直に話した。
「わしが考えた言葉ではない」
「いや、しかしです」
「そのお歳でそう言われるとは」
「実に見事です」
「素晴らしいことです」
「そうか、しかしわしはこれからは自分で考えなくてはいかんとな」
 その様にともだ、松壽丸は話した。
「考えておる」
「いや、そこです」
「そこで言われますと」
「非常にです」
「先が楽しみです」
「そうか、しかし当家の周りを考えると」
 松壽丸は今度は自分達がいる安芸のことを話した。
「実に多くの家があるな」
「はい、守護の武田家にです」
「それにですな」100
「吉川家、小早川家とです」
「実に色々な家がありますな」
「他の国もそうですが」
「この中で生きるにはな」
 どうしてもというのだ。
「やはり厳しいものがあるな」
「左様ですな」
「何といっても」
「その為にはですな」
「当家は、ですな」
「まとまっておることが第一じゃ」
 松壽丸はまたこう言った。
「それを思う」
「だからですか」
「我等も互いに争わず」
「家の中でまとまり」
「そしてですね」
「政を行い」
「戦もな」
 これもとだ、また話した松壽丸だった。 
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