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戦国異伝供書

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第八十六話 紫から緑へその二

「先程の話を聞いていますと」
「はい、毛利殿のお話がですな」
「出ていましたが」
 元親にその顔で言うのだった。
「随分と悪い風ですな」
「今はそう思っていませぬが」
「それでもですか」
「はい、あの頃は」
「ううむ、言われてみますと」
 どうかとだ、元就も否定せずに述べた。
「それがしもまた」
「これまではですか」
「随分と非道もしてきました」
 自分でもこう言うのだった。
「ですから」
「今のそれがしの話もですか」
「否定出来ませぬな」
「そうでありますか」
「謀神と言われる様なことも」
 そうしたこともというのだ。
「実にです」
「あったと」
「はい、では」
「次のお話をされる方が決まりましたな」
 家康も笑って述べた。
「毛利殿ですな」
「左様ですな、何かと悪事の話が多いですが」
 それでもとだ、元就は周りに断りを入れた。
「宜しいでしょうか」
「長曾我部殿のお話に噂を聞きますと」
 政宗もどうかという顔で言う、隻眼の顔も苦笑いになっている。
「凄まじい様ですな」
「それでもよければ」
「はい、それではですな」
「お話しますが」
「それがしからもお願いします」 
 政宗はこう元就に返した。
「是非」
「そこまで言われるなら」
「さて、毛利殿は不調法でしたな」
 信玄は笑って言ってだった、そうして。
 自ら菓子を出して元就に差し出して話した。
「これを茶の友に」
「いえ、実は酒は飲みまする」
「そうなのですか」
「ですがこれからお話しますが当家は酒に祟られているので」
「それで、ですか」
「はい、それがしはです」
 元就自身はというのだ。
「酒を慎んでおります」
「そうなのですか」
「しかしたまに多く飲み」
 普段の自分への戒めを破ってというのだ。
「飲んでしまいまする」
「左様ですか」
「そうなのです、ですが今は」
「飲まれませぬか」
「その菓子頂いて宜しいでしょうか」
「是非」
 信玄は元就に微笑んで答えた。
「さすれば」
「それではですな」
「ではお聞かせ下さい」
 謙信は元就に気遣い酒を飲むのを止めた、そうして自ら茶を淹れつつ述べた。
「茶を飲みつつ」
「それでは」
「そういえばです」 
 氏康も元就に言ってきた。
「毛利殿は元々大江家の方でしたな」
「鎌倉幕府の重臣であった」
「左様でしたな」
「安芸に領地を貰い」
 そうしてとだ、元就は氏康に自身の家の話をした。 
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