戦国異伝供書
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第八十五話 四万十川の戦いその十
「織田家の家臣となりその中でも四十万石の禄を持っておる」
「この土佐一国」
「だからですか」
「織田家でも重きを為す立場なので」
「それで、ですか」
「織田家の他の家臣の方々と同じくな」
元親もまた、というのだ。
「官位を与えられるという」
「凄い話ですな」
「殿が殿上人とは」
「それは上洛されてのことと思っていましたが」
「それがですな」
「殿に言われた、そして鉄砲もな」
元親が長い間欲しいと思っていたそれもというのだ、一条家との戦に勝ち彼等が持っていたものを手に入れてはいるが数はどうしても少ない。
「鉄砲鍛冶を土佐に寄越してくれてな」
「まさか」
「鉄砲を築いてもよい」
「そう言われているのですか」
「尚且つ茶の話もされた」
この話もというのだ。
「茶器等のこともな」
「茶ですか」
「それも土佐にはないですな」
「どうにも」
「しかしですか」
「そのお話もですか」
「殿はされた、あともう殿とは言わずな」
信長、彼のことをというのだ。
「お館様ともな」
「呼びますか」
「そうも思ったがそれはな」
「どうなりましたか」
「殿でよいとな」
信長自身からというのだ。
「言われた」
「そうしたこともありましたか」
「ははは、ここでは殿と言われてな」
元親は笑って話した。
「そしてな」
「織田様に対しては」
「殿と言う、面白いことであるな」
「その違いが」
「どうもな、それでじゃが」
親益に話した。
「今後は土佐一国を治めていくぞ」
「隅から隅まで、ですな」
「よくな、あと色はそのままでよいとされた」
「長曾我部家の紫は」
「織田家の色は青であるが」
青い衣に冠である、そして戦の場では具足や馬具、旗や陣羽織等がその色となる。このことは長曾我部家と同じだ。
「しかしな」
「そのことは、ですか」
「許して頂いた」
「紫のままで、ですか」
「よいとな」
「では徳川家の黄色、浅井家の紺と」
「我等の紫はな」
これがというのだ。
「そのままでな」
「使ってよく」
「これからも我等は紫の色でやっていくぞ」
「わかり申した」
「そういうことでな」
こうしたことを話してだった、そうして。
元親は土佐一国を織田家の下で治めていくことになった、その中で高知城の築城を進め土佐全体の政を進めていった。
その中でだ、元親は弟達と漁師達から献上された魚を刺身にして酒を飲みつつ食して楽しんでいたが。
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