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いやみ

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第二章

「今日はたまたまよね」
「そうだな、それでお前の家八条温泉の近くか」
「すぐね」
「そうか、そこまで送るな」
「いいわ、別に」
「悪いことはしないからな」
 孝雄はこのことはまず断った、そのうえで久美にさらに話した。
「女の子一人だと危ないだろ」
「ボディーガードしてくれるの?」
「そうだよ、言うならな」 
 孝雄は笑ってこうも言った。
「得点稼ぎだよ」
「いい人って思われる為とか」
「そうだよ、こうしたことも日々の努力だろ」
 笑ったまま話した。
「だからな」
「送ってくれるの」
「ああ、ついでにこれからな」
「お風呂に入るのね」
「そっちのスーパー銭湯でな」
「色々理由あるのね」
「ああ、それじゃあ駄目か?」
 孝雄は久美に問うた。
「そっちの家がやってる店に行ったら」
「ならいいわ、お客さんなら」 
 久美は孝雄に微笑んで答えた。
「じゃあね」
「そこ現金だな」
「だってうちもお店してるから」
 だからだというのだ。
「それでね」
「そこは現金か」
「そうなるわ、じゃあね」
「ああ、今からな」
「送ってくれるかしら」
「こっちこそな」
 孝雄は久美に応えた、そうして彼女を家まで送ることにしたが久美は外見に似合わず明るくおどおどとした口調でもよく話した。それで孝雄はこう言った。
「三森ってクラスでもよく喋るけれどな」
「今もでしょ」
「最初見た時は暗そうだったのにな」
「それは第一印象で」
 久美は自分から話した。
「昔からこうなの」
「よく喋るんだな」
「そうなの」
「それで明るいんだな」
「だってお店やってたらお客さんや従業員の人に挨拶して」
「よく喋るからか」
「それでなの。お店のお仕事も手伝ってるし」
 こちらもしているというのだ。
「アルバイト扱いでね」
「親御さんが店長さんか」
「そうなの」
「成程な、それでそうした物腰だけれど明るいんだな」
「ギャップあるでしょ」
「かなりな」
 孝雄は久美に返した。
「それはな」
「子供の頃から言われるの。ただ猫背はなおさないとね」
「背筋ぴしっと伸ばしてな」
「こう?」
 久美は孝雄の隣を歩きつつ背筋を伸ばしてみた、そうしてまた言った。
「これでいい?」
「ああ、ずっとそうする様気を付けていたらいいさ」
 背筋を伸ばすことをというのだ。
「背筋も健康に大事だっていうしな」
「そうよね」
 二人でこうしたことを話しながら先に進んでいると、ふと。
 前に黒のロングヘアの女の人が見えてきた、服は濃い紺色のブレザーに膝までのスカートだ。孝雄はその服装をリクルートスーツと思った。
 それでその人の顔は若い女の人だろうと思いつつ久美と共に自分と同じ方向に歩いている彼女の横を通り過ぎた、そこで女の人の顔を見たが。
 何とその顔は皺だらけの老人だった、孝雄はその顔を見て驚いていたが。その老人は彼ににんまりと笑って言ってきた。 
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