いやみ
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第一章
いやみ
量の多いぼさぼさの長い背中まである黒髪に着弱そうな目でおどおどした態度である。背は一五七だが猫背気味なのでより低い感じがする。胸は大きく九〇はある。三森久美はそんな女子高生だ。八条大学高等部商業科の一年生であり大阪市東淀川区の自宅から神戸にある学校に通っている。所属している部活は書道部だ。
その久美を家の最寄りの駅で見てだった、彼女と同じクラスにいる広沢孝雄は声をかけた。
「あれっ、三森か?」
「広沢君?」
「ああ、そうだよ」
孝雄は久美にすぐに答えた、黒髪をショートにしていて背は一七五ある。小さな目に面長の顔で唇は小さい。痩せていてマッチ棒を思わせるシルエットだ。黒の短ランタイプの詰襟の制服が似合っている。
「お前家こっちだったのかよ」
「ええ」
久美は小さな声で答えた、藤色のセーターと白のブラウス、赤のミニスカートとネクタイという制服の組み合わせだ。
「そうなの」
「俺もだよ」
「そうだったの」
「ああ、駅からバスでちょっと行ったところにあるんだよ」
「そうだったのね」
「まさかな、ご近所さんだったなんてな」
「私のお家スーパー銭湯で」
「ひょっとして八条温泉かよ」
「そうなの、あそこの東淀川店やってて」
八条学園を経営している世界屈指の企業グループである八条グループが経営しているスーパー銭湯である。日本各地に展開している。
「それでね」
「家あそこの近くか」
「そうなの」
「だから小学校とかも別だったんだな」
「広沢君八条学園は高校からよね」
「ああ、そうだよ」
孝雄はすぐに答えた。
「中学まで地元の公立だったんだよ」
「私幼稚園からあっちだったから」
「それでご近所だってわからなかったんだな」
「そうみたいね」
「そうなんだな」
「行き帰りの時間も違うと」
「俺卓球部で朝練もあるしな」
「私は書道部でね」
久美はおどおどとした口調でも孝雄に饒舌に話した。
「朝練ないし。それに卓球部とはね」
「帰る時間も違うしな」
「それで一緒にならなかったのね」
「そうだな」
「ええ、それでね」
久美はさらに話した。
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