英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~
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第75話
~レヴォリューション・ブリーフィングルーム~
「それじゃあ色々と話は逸れて予定よりも遅くなったけど、始めましょうか――――――”黒の工房本拠地奇襲作戦”についてのブリーフィングを。今回の作戦立案は既に聞いているとは思うけど、レンよ。」
(メ、メンフィル軍による黒の工房の本拠地を襲撃作戦の立案者がレン皇女殿下自身だったなんて……!)
(もしかしたらその件もあったから、私達自身と共に行動をしていたかもしれないね……)
(ハッ、あのガキもそうだがあのガキが考えた作戦に従おうとしている”灰色の騎士”サマ達ともイカレタ考えをした連中だぜ……)
モニターがある場所にリィンと共に立った状態で説明を始めたレンの説明を聞いたエリオットは驚き、アンゼリカは真剣な表情を浮かべ、アッシュは鼻を鳴らしてレン達を見つめた。
「作戦実行日と開始時間は明日――――――二月三日の13:00(ひとさんまるまる)。今回の奇襲作戦の目的は大きく分けて3つ。――――――一つ目は黒の工房の本拠地にあると思われる端末から得られるであろう様々な情報の収集。二つ目は黒の工房の本拠地内に幽閉されていると思われるエレボニア帝国皇太子――――――セドリック皇太子の救出並びに同じく本拠地内のどこかに保管されていると思われる”紅の騎神”と”終末の剣”の奪取、そして同じく本拠地内に保管されていると思われる人造人間――――――ミリアム・オライオンの肉体の奪取。最後の3つ目は”黒の工房の本拠地の爆破”だ。」
「”爆破”という事は君達は襲撃の際に黒の工房の本拠地のどこかにメンフィル軍が任意で操作して起爆させるタイプの爆弾を仕掛けるつもりなのか?」
リィンの説明を聞いたアリサ達がそれぞれ血相を変えて驚いている中ロイドは真剣な表情を浮かべてリィンとレンに問いかけた。
「ええ。ちなみに仕掛ける爆弾は”パイア”を利用した爆弾よ。」
「ええっ!?”パイア”って確か半年前にリベールに起こったテロ未遂に使われていた……!」
「僅かな量でもグランアリーナも吹き飛ばせる程の凄まじい爆薬に転用できるレミフェリアで盗まれた医薬品ですね…………もしかして、レミフェリアと何らかの交渉をしてその爆薬を調合したのですか?」
レンの答えを聞いたエリィは驚き、静かな表情で呟いたティオはジト目でレンに訊ねた。
「うふふ、察しがいいわね。――――――まず黒の工房の本拠地はどうやら地下深くの異空間にあるらしくて、その為”侵入方法”は”騎神”達の”精霊の道”を使っての”転位”による奇襲よ。」
「質問いいですか?」
「ええ、何かしら、ドロテア。」
「その”転位”で敵の本拠地を奇襲するのはわかるのですけど、その”精霊の道”という”騎神”独特の機能である転位術は人数制限等はあるのでしょうか?」
「……だ、そうだけど、そこの所は専門家の意見としてどうなのかしら、魔女の”長”殿?」
ドロテアの質問を聞いたレンはローゼリアに話を振り
「そうじゃの……騎神達に貯めておく霊力の量も関係するとは思うが、少なくても”軍”のような大人数を連れての転位はさすがに無理じゃろうな。――――――それこそ、そちらが保有している”騎神”や”神機”、そして”騎神”達と繋がっている機甲兵達を併せても無理じゃな。」
「そうなると少数精鋭部隊による奇襲作戦になりますね……」
「ま、その”本拠地”とやらがどんな所かはわからねぇが、屋内の戦闘になる事は確実だろうからどの道大人数での奇襲は厳しかっただろうな。」
ローゼリアの話を聞いたステラは考え込み、フォルデは苦笑しながら呟いた。
「屋内戦となると”騎獣”達を使っての戦闘は逆に”騎神”の戦闘能力を下げる事もそうですが、味方の動きにも影響を及ぼす事になりますから避けた方がよさそうですね。」
「ああ。それと迅速な対応も求められているから、重装備も避けた方がよさそうだな。」
「……レン皇女殿下。本拠地内に爆薬を仕掛ける担当に関しては決まっているのでしょうか?」
イングリットとドゥドゥーもそれぞれ意見を出した後少しの間考えていたエーデルガルトがレンに質問した。
「ええ。それに関しては”本隊”の工作部隊から8名出してもらうことになっているわ。それと転位の件だけど、転位できるポイントが二か所ある事が判明しているから、二手に分かれて奇襲することになるわ。」
「という事は私達の役目は爆弾を仕掛ける工作部隊の護衛ですか?」
「ああ。それと工房内に”黒の工房”の関係者と思われる研究者、黒の工房の防衛の為に雇われた猟兵達を見かけた場合は問答無用で”殲滅”してくれ。」
「――――――待ちなさい。猟兵はともかく研究者――――――非戦闘員を何故捕縛どころか、殲滅するのよ!?非戦闘員を意図的に危害を加えるなんて国際法に反している上、貴重な情報源かもしれないのよ!?」
レンの説明の後に質問したリシテアの質問に答えたリィンの答えにⅦ組の面々とロイド達がそれぞれ血相を変えている中、サラは厳しい表情でリィンに指摘した。
「以前のラマールでの活動の時でも言ったようにメンフィルは国際法には加盟していないのだから、国際法を守る必要なんてないし、情報に関しても黒の工房の本拠地でハッキングする情報があれば十分よ。あ、国際法の件に関しては”クロスベルも同じ”よね♪」
「……………………ッ!」
「フウ………君は別の意味で言ったかもしれないけど、警察の俺達にとっては皮肉な意味でしか聞こえないよ……」
「そういった国際法を無視するような類の無茶ができる事もまた、ある意味建国したばかりの状況で開戦をしたクロスベルにとっての”強み”でもあるのよね……もしかしたら、陛下達が建国と同時に二大国と開戦したのもその理由も含まれているかもしれないわね。」
「要するにヴァイスさん達は”国際法”に縛られずに自分達の好き放題――――――異世界(ディル=リフィーナ)の感覚で暴れる事ができるって事ですものね。」
意味ありげな笑みを浮かべたレンの答えに反論できないサラが唇を噛み締めてレンを睨んでいる中ロイドは疲れた表情で溜息を吐き、エリィは複雑そうな表情で呟き、ティオはジト目で呟いた。
「それに世界を”終焉”に導こうとしている人達なんて、ハッキリ言って”D∴G教団”の人達と同類……いえ、”それ以上の外道”なんだから、殲滅されて当然だし、そもそも”国際法”なんて適用もされない人達よ、黒の工房――――――いえ、”地精”に所属している研究者達は。」
「その点に関しては同意しますわ。――――――特に”裏の組織に所属している研究者”の類は性格が破綻している者しかいない事は、よくわかっていますもの。」
「た、確かに言われてみれば”教授”といい、”博士”といい、結社に所属している研究者の類の人達は碌な性格じゃなかったですね……」
「アハハ……”実例”があるから、偏見とも言えないわね……」
レンの指摘に静かな表情で答えた後ジト目になったデュバリィの言葉を聞いたツーヤとプリネはそれぞれ冷や汗をかいて苦笑していた。
「…………………………」
(アリサさん………)
一方レン達の話を聞いてアルベリヒを思い浮かべて辛そうな表情で顔を俯かせているアリサに気づいたエマは心配そうな表情を浮かべた。
「コホン。話を戻すけど……手順としては転位後まずは本拠地内にある端末がある部屋を探して、端末を見つけた後はその端末にレンとティオがそれぞれが用意した携帯型の端末でハッキング。他の人達はハッキングをするレン達の護衛、並びに周りにいる人形兵器等の敵対象の殲滅よ。――――――そういう訳だから、ティオの護衛に関してはメンフィル軍も可能な限り守るけど、討ち漏らしや転位による奇襲とかもあるでしょうからその時はロイドお兄さん達に対処を任せる事になるわ。」
「ああ、それについては異存はない。」
「私達が必ずティオちゃんを守るから、ティオちゃんは安心して情報収集をお願いね。」
「了解しました。可能な限りハッキングを早く完了させるつもりではありますが……さすがに十三工房の一角―――それも、結社の技術すらも利用していた工房の本拠地の端末が相手の為、それを考えると幾らレンさんとの協力によるハッキングでも端末の掌握には時間がかかると思いますから護衛の方、よろしくお願いします。」
レンに話を振られたロイドは頷き、エリィに声をかけられたティオは静かな表情で頷いて答えた後真剣な表情を浮かべた。
「紅き翼はレン達がハッキングで時間を取られていると同時に敵を惹きつけている間に皇太子達の捜索の為にドンドン先に進んでもらって結構よ。」
「……言われなくてもこっちは元々そのつもりよ。」
「あの…………もしハッキングで黒の工房の本拠地の端末を完全掌握した際には皇太子殿下達を捜索しているわたし達のENGMAに本拠地内のマップデータの送信や黒の工房の本拠地内に仕掛けられていると思われるトラップやロックされている扉の解除、後は幽閉されている皇太子殿下の場所の情報提供をお願いしたいのですが……」
レンに視線を向けられたサラは静かな表情で答え、トワは真剣な表情でレンにある事を要求した。
「……ま、そのくらいなら構わないよ。」
「……わたしも端末を完全掌握した際は、トラップやロックされている扉の解除もそうですがセドリック皇太子殿下達の居場所等を調べて、そのデータを皆さんに送るようにしておきます。」
「あ、ありがとうございます…………!」
レンとティオの返事を聞いたトワは明るい表情で感謝の言葉を述べた。
「”ハッキング”での情報収集を終えた後は工房内を攻略しながら、要所要所に工作部隊が爆弾を仕掛けるから、その際の各部隊の役割は爆弾を仕掛ける工作部隊の護衛よ。”特務支援課”に関しては各自自分達の守りに徹して、敵戦力を殲滅をするメンフィル軍(レン達)の後をついていく形で進んでね。」
「えっと………という事は私達は敵の迎撃に協力する必要はないという事かしら?」
「ああ。”特務支援課”はメンフィル軍(俺達)にとっては”外部協力者”という扱いだから、”協力者”を最前線に出させるような事は”ハッキング”の件を除けば基本的に避けるつもりだ。」
「今回の作戦もまた一種の”軍事作戦”です。『餅は餅屋』という諺のように、戦争――――――互いの命を奪い合う戦いは私達”軍人”の役目なのですから、最前線は私達にお任せください。」
「そうですね。それにヴァイスハイト陛下からも、『特務支援課にはあまり無理をさせないように配慮してやってくれ』とも頼まれていますから、メンフィル軍は元々”特務支援課”には今回の作戦、可能な限りの安全を用意する所存です。」
「ヴァイスさんがメンフィル軍にそのような事を…………」
レンの説明を聞いてある事に気づいたエリィの質問に答えたリィンとイングリット、そしてプリネの話を聞いたティオは目を丸くした。
「――――――話を戻すわ。爆弾を仕掛けた後は工房内のどこかにあると思われるミリアム・オライオンのスペアボディの確保、そして皇太子達を救出する予定の紅き翼と合流し、工房内に”レヴォリューション”、”カレイジャス”を呼び寄せて、各自その呼び寄せた飛行艇に乗り込んで工房から脱出、そして脱出後にこちらの操作によって工房内に仕掛けた爆弾を起爆させて黒の工房の本拠地を爆破する――――――これが一連の流れよ。」
「……少しいいですか?今『飛行艇を工房内に呼び寄せる』って言いましたけど、地下の……それも異空間の中にある施設にどのようにして飛行艇を呼び寄せるのでしょうか?」
「それに関しては突入するレン達が発信機をつけておくから、レヴォリューションとカレイジャスのスタッフ達がその発信機によって位置情報を把握して現場へと発進、現場に到着後は今回の作戦の為に編成されている異空間解析班によって工房への突入地点を解析してもらった後、工房内に突入することになっているわ。――――――ま、いざとなったら非常手段として転位魔術の使い手達による転位の脱出も考えているから脱出手段に関しては心配無用よ。」
「……ちなみにその”転位”の使い手達は足りているのですか?”転位”は人数が多ければ多いほど、魔道具にせよ術者にせよ、色々と条件が増えてしまうと聞いたことがありますが。」
ツーヤの質問に答えたレンの説明を聞いてある事が気になったデュバリィはレンに質問した。
「その点に関しては大丈夫よ。突入班の中に転位魔術を扱える”魔神”が三柱、”女神”が一柱いるもの。」
「確かにそれだけいれば十分過ぎますね……」
「”魔神”が三柱に”女神”が一柱という事は……”女神”はリィンが契約を交わしているアイドスさんで、”魔神”の三柱はもしかしてリィンの使い魔のベルフェゴールさん、プリネ皇女殿下の使い魔のアムドシアスさん、そしてエヴリーヌさんの三柱の事か?」
「ええ、その通りよ。」
レンの答えを聞いたティオはジト目で呟き、あることに気づいたロイドはレンに確認し、確認されたレンは頷いた。
「あ、あの…………今の話ですと、プリネ皇女殿下もリィンさんのように使い魔――――――それも”闇夜の眷属”の中でも”最強”を誇る”魔神”を使い魔にしていることになりますが、それは本当なのですか……!?」
「それも”アムドシアス”って言ったら、確かソロモン72柱の一柱――――――”一角公”の事よね?」
「ええ、確かに私の使い魔に”魔神”がいて、アムドシアスはそのソロモン72柱の一柱ですよ。」
「一柱とはいえ、ソロモンの大悪魔もメンフィルの姫君に従っているとはな……正直言ってヌシ達メンフィルの方が『地精や結社よりも得体の知れない組織』のように見えるぞ。」
驚きの表情のエマと目を細めたセリーヌの問いかけに答えたプリネの話を聞いたローゼリアは重々しい様子を纏って呟いた後ジト目でレンを見つめ、ローゼリアの発言にその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「クスクス、世間からその存在を隠していた”魔女”の一族の”長”であるロゼにだけは言われる筋合いはないわよ♪」
「コホン。それじゃあ次は黒の工房の本拠地に突入するメンバーだが、”灰獅子隊”は各部隊長――――――要するにここにいる全員で、リィン隊からは更にエリゼ、セレーネ、エリス、アルフィン、アルティナ、クルト、ミュゼだ。」
意味ありげな笑みを浮かべたレンの指摘にその場にいる多くの者達が再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中咳払いをして気を取り直したリィンは説明を続けた。
「”金の騎神”の起動者のエリスは転位の件があるから仕方ないにしても、今名前を挙げたエリゼ以外のリィン隊の他のメンバーまで今回の作戦に参加させて大丈夫なのか?セレーネとエリスもだが、エリゼ以外のメンバーは元々”軍人”としての経験がない上、しかも成人もしていない者達ばかりだろう?」
リィンの説明を聞いてある事が気になったディミトリはリィンに確認し
「その点は心配無用だ。皆それぞれ、かつての俺達のように”戦場の洗礼”を受けてもなお、それぞれを励まし合って”戦場の洗礼”を乗り越えた仲間達だ。現に先日行われたノーザンブリア制圧作戦でも、それぞれ俺達と共に多くの北の猟兵を葬っているし、クルトとミュゼは”西風の旅団”とやり合った際にユリーシャとメサイアの助力があったとはいえ、西風の旅団の連隊長――――――破壊獣を4人で退けている。」
「!そうか…………――――――すまない、リィン。俺の偏見で、俺達にとっても信頼できる仲間を疑うような事を口にしてしまって。」
(レオが……)
(あ、あの破壊獣をたった4人で退けただって!?)
(ミュラー少佐からはクルトはヴァンダール流双剣術の”中伝”を修めていると聞いているが……)
(ミュゼ君に至ってはクルト君やラウラ君のように昔から武術を嗜んでいる貴族でなかったにも関わらず、西風の旅団の連隊長を退けるなんて、どうやらこの戦争で彼女達は”実戦経験”を得て急成長をしているようだね。)
リィンの答えを聞いて目を見開いて驚いたディミトリはリィンに謝罪し、二人の会話を聞いたアリサ達がそれぞれ血相を変えている中フィーは呆け、マキアスは信じられない表情をし、ラウラとアンゼリカは真剣な表情で小声で呟いた。
「いや、エリス達の事を心配するディミトリのその疑問は当然だから気にしていないさ。――――――話を戻すが”鉄機隊”に関しては客将のオリエさんを含めた全員が参加する事でいいんですよね、デュバリィさん?」
「ええ。」
「プリネ皇女親衛隊からはプリネ皇女殿下ご自身、親衛隊長のルクセンベール卿、親衛隊副長のレオンハルト大佐、そして客将のエヴリーヌさんと聞いていますが、何か変更はありますか、プリネ皇女殿下?」
「いえ、特にありませんので、今挙げたメンバーで問題ありません。」
リィンにそれぞれ確認されたデュバリィとプリネは頷いた。
「さてと。二手に分かれるメンバーの編成は後で話し合うとして…………最後に黒の工房の本拠地にいると思われる要注意人物を周知しておくわ。」
そしてレンが端末を操作すると部屋に備え付けている映像用の端末が正面に現れた後アルベリヒとゲオルグの映像が端末に映った。
「左の人物は黒の工房の”長”である”黒のアルベリヒ”。隣の人物は同じく黒の工房所属にしてアルベリヒの右腕的な存在である”銅のゲオルグ”。恐らくだけどこの二人は高確率で黒の工房の本拠地にいると思われるわ。」
(父様………)
(ジョルジュ君……)
(……………………)
レンが説明している中アリサとトワは複雑そうな表情を浮かべ、クロウは重々しい様子を纏って映像に映る二人を見つめ
「そりゃ、自分達の”本拠地”なんですからむしろいない方が有り得ないでしょうね。」
「”裏の協力者”として今回の戦争でも様々な暗躍の為に本拠地から出払っている事もあると思いますが……本拠地が襲撃された事を知れば間違いなく本拠地に戻ってくるでしょうね。」
フォルデはやれやれと言った様子で肩をすくめて答え、ステラは考え込みながら推測を口にした。
「その二人の戦闘能力等は判明しているのでしょうか?」
「ええ。二人とも”戦術殻”という特殊な人形兵器を操って戦う人形士よ。」
「ちなみに以前あたし達はその二人とやり合いましたが……やはり、”長”だからなのかアルベリヒの”戦術殻”はゲオルグの”戦術殻”よりも性能は上でした。」
「”戦術殻”はどちらも人形自身の一部分を伸縮させたり、レーザーを放ったりする攻撃をしてきて、防御は人形自体に備わっている障壁を利用していましたが……ゲオルグの方は”戦術殻”自身を回転式のドリルがついている”槌”に変化させてそれを得物にして攻撃してきたこともあります。」
「フム…………という事はその”戦術殻”とやらを操っている本人達自身の戦闘能力はそれ程高くないと判断していいのでしょうか?」
イングリットの質問に答えたレンとツーヤ、プリネの話を聞いたフェルディナントは考え込みながら訊ねた。
「ええ。ただゲオルグはともかくアルベリヒはロゼさんと同じかつて”至宝”を管理してきた一族の長なのですから、高位の魔術も扱えると想定して警戒した方がいいと思います。」
「そうじゃの……その点に関してはリィンの言う通りじゃろうな。実際奴は転位魔術や結界魔術は当然扱えるし、魔術か科学、どちらかかもしくはその両方を利用して長年妾の目から自分達の本拠地が見つけられないようにしていたからの。」
「なるほど…………ゲオルグは味方が人形を抑えている間に操っている本人を攻撃するのが有効な手段だと思いますが、アルベリヒに関しては本人自身の戦闘能力も高いと見積もった方がよさそうですね。」
リィンとローゼリアの説明を聞いたリシテアは考え込みながら呟いた。
「やれやれ、”弱点”とかあったら楽なんだが、やっぱり”長”だけあってそういうのはないんだろうな。」
「うふふ、”弱点”ならあるわよ。」
「へ…………冗談で言ってみたんですが、本当にあるんですか?”弱点”が。」
疲れた表情で溜息を吐いたクロードだったが小悪魔な笑みを浮かべたレンの答えを聞くと呆けた表情で訊ねた。
「ああ。アルベリヒの肉体は”不死者”である事が判明している。実際アルベリヒと同じ”不死者”である猟兵王もそうだがアルベリヒも今までの戦いで神聖魔術を受けると随分効いている様子だった。」
「ほう。ならばアルベリヒへの”対策”は簡単だね。」
「ええ。作戦時、対アンデッド用の武装も身につけておくべきですね。」
リィンの話を聞いたローレンツは興味ありげな表情で答え、ローレンツの言葉にドゥドゥーは頷いた。
「あ、あの…………横から口を挟んで申し訳ないのですが、”灰獅子隊”――――――いえ、メンフィル軍は幽霊や不死者等といった、”この世ならざる存在”に対抗できる装備等があるのでしょうか?」
「ああ。ディル=リフィーナでは幽霊や不死者、それに悪魔等といった”不浄の存在”の弱点となる”聖なる霊力”が込められた武装も大量生産されているから、一般の市場にも”聖剣”の類も出回っている。」
「おとぎ話とかで出てくる”聖剣”が一般の市場に出回っているって………」
「ひ、非常識な……」
「……ま、異世界は魔法技術が発展しているようだし、その関係で魔法技術が組み込まれた鍛冶技術とかもあるようだから、異世界にとっては古代遺物のような何らかの魔法効果が付与された武装や魔道具が一般の市場に出回っていることは当たり前なんでしょうね。」
「実際、守護騎士のトマス教官は今セリーヌが言ったみたいなことを口にしていたわね……」
「フム…………半数の里の者達の身柄がメンフィルの本国に預けられることになったのは、異世界(ディル=リフィーナ)の事についての情報収集ができるから、ある意味異世界の事を知る絶好の機会でもあるようじゃの……」
エマの質問に答えたリィンの答えにアリサ達が冷や汗をかいている中エリオットは表情を引き攣らせ、マキアスは疲れた表情で呟き、セリーヌとサラ、ローゼリアは静かな表情で呟いた。
「ただ、アルベリヒは普通の不死者とは異なり、相当な耐久力はあると思われます。実際私もそうですがリフィアお姉様もアルベリヒに”贖罪の聖炎”を叩き込んだ事はあるのですが、どちらの時もアルベリヒに大ダメージを与えても浄化はできませんでしたから。」
「プリネ皇女殿下どころか、魔術師としての”力”ならばペテレーネ神官長やセシリア教官のようなメンフィル帝国の中でも最高位の魔術師達とも並ぶ力を持ってらっしゃるリフィア皇女殿下による上位神聖魔術を受けてもなお、浄化されないとは相当タフな不死者のようですね……」
「そうなってくると不死者達にありがちな再生能力とかも高そうだから、幾らこちらが有効なダメージを与えても何度も再生してくる事で面倒な戦いになりそうよねぇ。」
プリネの説明を聞いたディミトリは驚き、ドロテアは疲れた表情で溜息を吐いた。
「いえ――――――再生能力に関してはそれ程高くないと思います。実際、クロスベルでの迎撃戦でアルベリヒはリフィア皇女殿下による魔術――――――”レイ=ルーン”で片腕を消し飛ばされて以降その消し飛ばされた片腕は再生していなく、残された片腕の状態のままです。」
「…………ッ!」
(そ、そういえば”黒のアルベリヒ”は片腕だったけど……それがまさか、リフィア殿下の魔術によるものだったなんて……)
(……”実力主義”のメンフィル帝国の次期皇帝で、しかも魔王と女神の血を受け継いでいるだけあって、恐らくはそのリフィア皇女とやらもロゼすらも足元に及ばない化物じみた霊力の持ち主なんでしょうね。)
ドロテアへのリィンの指摘を聞いたⅦ組の面々がそれぞれ血相を変えている中アリサは息を呑み、エマはアリサを気にしながら不安そうな表情で小声で呟き、セリーヌは目を細めて小声で呟いた。
「フム…………だとしたら、いきなり”撃破”を狙うのではなく、残った四肢の切断をすることでアルベリヒ自身の戦闘能力や身体能力を無効化してから、徹底的に不死者の弱点である火炎魔術や神聖魔術で集中攻撃すればアルベリヒを浄化――――――いや、”抹殺”できるかもしれないね。」
「そうですね。後は全ての属性魔術の中でも”対象を滅する事”に特化している純粋属性の魔術も効果的かもしれませんね。実際、リフィア皇女殿下による純粋属性魔術で腕が消し飛ばされたとの事ですし。」
「……ッ!!」
(アリサ君……)
リィンの話を聞いてある事を思いついたローレンツの提案にリシテアは頷いて更なる意見を口にしている中、実父の肉体を持つアルベリヒを”抹殺”する事を前提で話し合っている”灰獅子隊”の会話を聞いていたアリサは辛そうな表情で唇を噛み締め、アリサの様子に気づいたアンゼリカは心配そうな表情でアリサを見つめた。
「――――――少しいいですか。その対アンデッド用の武装とやらは”鉄機隊”は所持していないのですから、私達にも支給して頂きたいのですが?」
「そういえば”鉄機隊”は結社の装備で戦い続けていたし、星杯騎士団や教会の関係者でもない”風御前”も当然対アンデッド用の武装なんて持っていないでしょうね。――――――この会議を終えたらすぐに支給するように手配しておくわ。ロイドお兄さん達は……わざわざ支給する必要も無いわね。」
デュバリィの意見を聞いたレンは苦笑しながら答えた後ロイド達にも話を振ったがすぐにそれが無意味である事に気づいた。
「ああ…………レンも知っているように俺達の仲間の中に不死者の”天敵”である天使族もいるし、不死者もそうだが悪魔にも有効的な武器も持っているしな。」
「こういう時、つくづくメヒーシャ達――――――異世界(ディル=リフィーナ)に関わる存在が味方にいる事が心強い事が身に染みるわよね……」
「まあ、”不死者”もそうですが”悪魔”も今のゼムリア大陸では一般的には幻想の存在だったのですから、”目には目を歯には歯を”のように”幻想には幻想”をという事でしょうね。」
レンの言葉にロイドは頷き、苦笑しているエリィの意見にティオは静かな表情で答えた。
(ハッ、背中に翼を生やしているテメェ自身が言える立場かっての。)
(ちょっ、本人に聞こえたら不味いぞ!?)
(……………………不味いもなにも、聞こえているのですが。)
ティオを見つめて嘲笑したアッシュの小声を聞いたマキアスは慌てて注意している中、レン同様”D∴教団”による忌まわしき”儀式”で”魔人”の肉体に変えられたティオはプリネ達同様聴力も普通の人間より圧倒的に優れている事で二人の会話も聞こえていた為、二人の会話が聞こえるとジト目になってアッシュとマキアスを見つめた。
「次にこの人物も黒の工房の本拠地にいるかもしれないわ。」
そしてレンが端末を操作すると映像が切り替わり、オズボーン宰相の映像が映り、その映像を見たその場にいる多くの者達は血相を変えた。
「ええっ!?ど、どうしてオズボーン宰相まで黒の工房の本拠地にいるかもしれないと、メンフィル軍は判断しているの?」
「いや――――――黒の工房を従えたオズボーン宰相と黒の工房の関係を考えると、彼が黒の工房の本拠地にいる事もそれ程おかしくはないと思う。」
「それもあるけど、”本来の歴史”だとリィンお兄さんを取り戻したばかりのⅦ組が鉄血宰相やアルベリヒを含めた黒の工房の本拠地にいた使い手達と戦ったそうよ。」
オズボーン宰相の映像を見て驚いているエリィにロイドは自身の推測を答え、ロイドに続くようにレンが答えるとその場にいる多くの者達は再び血相を変え
「な――――――」
「ええっ!?本来の歴史のⅦ組が!?」
「よく全員無事に生き残って撤退する事ができたわよね……」
ユーシスは驚きのあまり絶句し、アリサは驚きの声を上げ、サラは信じられない表情で呟いた。
「ちなみに本来の歴史のリィンお兄さんは新Ⅶ組メンバーと共に鉄血宰相と”鋼の聖女”のペアを迎撃したそうよ?」
「へ…………」
「な、なななななな……っ!?」
小悪魔な笑みを浮かべたレンの答えにその場にいる全員が驚いている中リィンは呆けた声を出し、デュバリィは混乱した。
「ハッ、つー事は士官学生になって数ヶ月しかしていないオレ達とそこの灰色の騎士サマが迎撃できるって事だから、鉄血もそうだがその”鋼の聖女”とやらも実は大した事ないんじゃねぇのか?」
「いやいやいやっ!?”鋼の聖女”とは俺達もやり合ったけど、間違いなく今までやり合った相手の中で”最強”の使い手だったから!?」
「全くですね……今思うとリアンヌさんの方が”碧のデミウルゴス”の時よりも苦戦したと思いますから、冗談抜きで命知らず過ぎですよ、今の発言は……」
「フフン、マスターと実際に刃を交えただけあってさすがに貴方達はマスターの偉大さを身に染みているようですわね。――――――今回はマスターの偉大さの”極一部”を私の代わりに教えた”特務支援課”に免じて特別に見逃してあげますが次にマスターを侮辱するような事を口にすれば、タダではすまないと思いやがりなさい!」
「え、えっと………オズボーン宰相の実力はわからないけど……確かオズボーン宰相は政治家になる前は軍に所属していたという話だし、しかもあの”鋼の聖女”と組めるくらいなのだから、それらを考えると間違いなく相当な使い手なのでしょうね。」
嘲笑したアッシュの言葉にその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中ロイドとティオはそれぞれ疲れた表情で指摘し、二人の指摘を聞いたデュバリィは得意げな表情を浮かべた後アッシュを睨み、デュバリィの発言に再びその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中気を取り直したエリィは静かな表情で推測を口にした。
「一応諜報部隊の調べによるとオズボーン宰相は帝国正規軍の”百式軍刀術”を極めているとの事だから、戦闘能力は最低でもエレボニア帝国で5本の指に入ると言われている武人――――――”光の剣匠”や”雷神”、それに”黄金の羅刹”クラスと見積もった方がいいと思うわ。――――――ま、いざとなったらアイドスお姉さんかベルフェゴールお姉さんに出てもらったら問題ないと思うわよ♪幾ら”怪物”と恐れられている人物であろうと、所詮は”神格者”には至っていないのだから”神”や”魔神”には”絶対に勝てない”でしょうし♪」
「さすがにその二人任せというのはどうかと思うけど……”子供達”も工房の本拠地にいる可能性は考えられるのかしら?」
オズボーン宰相の情報を口にした後リィンに視線を向けて小悪魔な笑みを浮かべたレンの答えにその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中呆れた表情で指摘したプリネは気を取り直してレンに訊ねた。
「んー……お姉さまも知っての通り、”情報局”はメンフィルの諜報部隊による暗殺で割と深刻な人材不足に陥っている上、鉄道憲兵隊もこの間のヴァイスラント新生軍の策略で鉄道憲兵隊全体の内の3割が削られてその関係で鉄道憲兵隊も情報局同様人材不足に陥っているから、当然それぞれの部署を担当している二人にもそのしわ寄せが来てかなりの負担がかかっているとの事だから、あの二人が黒の工房の本拠地にいる可能性は低いという分析だけど、本来の歴史の本拠地にいた戦力が既に結構削られている事を考えると、向こうにとっては結構重要な拠点と思われる黒の工房の本拠地の防衛力を高める為にその可能性も十分考えられるのよねぇ。――――――向こうも紅き翼が皇太子達の救出の為に黒の工房の本拠地を探っている事をクロスベルの件で知っちゃったようだし。」
「えっと………その”本来の歴史”だと、Ⅶ組のみんなはオズボーン宰相達以外に誰と戦ったのでしょうか?」
プリネの質問に対するレン答えた後意味ありげな笑みを浮かべてトワ達に視線を向け、ある事が気になったトワはレンに訊ねた。
「オズボーン宰相達の他には”劫焔”に”神速”を除いた”鉄機隊”の二人、それとかつての”蒼のジークフリード”同様仮面の力で操られていたアンゼリカ・ログナーだったそうよ。」
「なっ!?アンゼリカ先輩が……!?」
「あー…………そういや、本来の歴史のゼリカも実は生きていて、アルベリヒ達に操られていたって話も”特務支援課”から聞いていたな……」
「ああ…………それを考えると、現時点で黒の工房の本拠地にいると思われる戦力は相当削られていることになるね。」
「ええ……”劫焔”は死亡し、”鉄機隊”と”鋼の聖女”はメンフィル側、アンゼリカも本来の歴史のように操られていないから、黒の工房の本拠地を襲撃した際は本来の歴史より戦力が低下していることはほぼ確実でしょうね。」
レンの説明を聞いたⅦ組の多くの者達が血相を変えている中マキアスは驚きの声を上げ、事情を知っていたクロウは苦笑し、静かな表情で頷いたアンゼリカはサラと共に考え込んでいた。
「……だが、今レン皇女殿下が仰ったように少佐達がオレ達が皇太子殿下達の救出の為に黒の工房の本拠地を探っている事をクロスベルの件で知ってしまったから、当然その事はオズボーン宰相達に報告されているだろうな。」
「……………………」
重々しい様子を纏って呟いたガイウスの言葉に反論できないアリサは複雑そうな表情で黙り込み
「……―――問題ない。例え”子供達”や残りの”執行者”達、それに西風の旅団も黒の工房の本拠地の防衛に加わっていようと、今回参加する戦力に加えてメサイア達やプリネ皇女殿下の使い魔の方々にも加勢してもらえれば、”十分に対処可能だ。”――――――むしろ、敵側の戦力を削る機会でもあるかもしれない。」
目を伏せて黙り込んでいたリィンは目を見開いて静かな表情で答えた。
「……ッ!」
「リィン君………」
「ハハ、言われてみればそうだな。」
「それどころか、上手くいけば敵側の首謀者を討ち取る事で、この戦争を早く終わらせられるかもしれないわね。」
「まあ、さすがにそれは高望みし過ぎではあると思うが、我々にとっては絶好の機会である事は事実だね。」
「フッ、結成されたばかりの灰獅子隊の初陣として相応しい作戦じゃないか。」
リィンの答え――――――”オズボーン宰相達を殺す事に一切の躊躇いを持っていない事”を口にした事にアリサが辛そうな表情で唇を噛み締め、トワが悲しそうな表情でリィンを見つめている中ディミトリとドロテア、フェルディナントは苦笑し、ローレンツは髪をかき上げた。
「………随分と自信満々のようだが、幾ら何でも鉄血達を嘗めすぎていねぇか?特にリィン、お前なら内戦を通して連中の実力をその身で知ったにも関わらず、何でそんな大口を叩けるんだ?」
「先程レン皇女殿下も仰ったように、魔神や女神がいる今の俺達ならどんな強敵が相手であろうと、確実に勝利できると確信しているから自信を持てるだけだ。」
クロウの忠告に対してリィンは静かな表情で答えた。
「ハッ、結局は化物じみた力を持つ連中頼みって事じゃねぇか。」
「……お前らしくないな。以前のお前ならば、人任せにするような事は考えなかったと思うが。」
リィンの答えを聞いたアッシュは嘲笑し、ユーシスは真剣な表情でリィンに指摘し
「―――”自身の感情等を無視して、客観的に判断することを常に心がける”――――――俺達”黒獅子の学級(ルーヴェン・クラッセ)”はセシリア教官から散々それを言われていて、その教えを実行しているだけさ。」
「またあの女将軍ね……………………リィン、あたしの教えはあんたにとっては”無意味”だったのかしら?今回の戦争であんたがしていることは、あたしの教えを全部無視しているようなものよ。」
ユーシスの問いかけに答えたリィンの答えを聞いたサラは表情を顰めた後厳しい表情でリィンに問いかけた。
「別にサラ教官から教わった事も俺にとっては無意味ではなく、貴重な経験ではありますが……………そもそもサラ教官とセシリア教官は”畑違い”ですから、今の俺にとってはセシリア教官の教えが”適切”だと判断しただけです。」
「全く持ってその通りね。”戦争に関する知識”で”遊撃士”と”猟兵”の経験を積んでいるサラお姉さんの教えと軍のトップクラス――――――それも”総参謀”を任せられる程戦術に明るいとセシリアお姉さんの教えを比べる事自体が間違っているわよ。」
「……確かに”戦争のプロ”である軍人の中でも将軍クラスでしかも総参謀を担当しているセシリア将軍が相手だと”サラ如き”の知識と経験じゃ話にならないよね。」
「ちょっとフィー!?何であんたがあっちの味方をするのよ!?あんた、それでもあたしの生徒!?」
リィンとレンの指摘に同意したフィーをサラは顔に青筋を立てて睨み、その様子を見たその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。するとその時通信の音が鳴り、音に気づいたレンは自身のENGMAを取り出して通信を開始した。
「――――――失礼。――――――レンよ。あら、パパじゃない。……………………何ですって?ええ……ええ……――――――わかったわ、わざわざ知らせてくれてありがとう。――――――今パパから入った情報で、黒の工房の本拠地にいる可能性がある戦力の上方修正の必要が出てきたわ。」
「リウイ前皇帝陛下直々の通信のようでしたが……………………一体陛下はどのような情報をレン皇女殿下に?」
レンは通信の最中で目を細めて警戒の表情を浮かべ、そして通信を終えて口にしたレンの言葉にその場にいる全員が血相を変えている中リシテアは不思議そうな表情で訊ねた。
「レグラムの領主にして”エレボニア最高の剣士”と謳われている人物――――――”光の剣匠”ヴィクター・S・アルゼイドが行方不明になったとの事よ。」
そしてレンは紅き翼にとって凶報となる事実を口にした――――――
後書き
という訳でアルゼイド子爵に関しては案の定(オイッ!)、皆さんの予想通り(?)の展開になってしまったかもしれません(汗)
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