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戦国異伝供書

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第八十五話 四万十川の戦いその五

「随分な」
「楽ですな」
「楽に川を渡れましたな」
「そうしてです」
「少し攻めれば」
「乱れた軍勢であってな」
 元親は兵達に話した。
「尚且つ一条殿の采配がな」
「動きが悪いですな」
「どうも」
「陣もいい加減ですし」
「配置もです」
「よくないですな」
「兵の数も少ないしな」
 このこともあってとだ、元親は話した。
「余計にじゃ」
「川を渡りますと」
「何ということはないですな」
「楽に戦えるというか」
「どうということはないですな」
「うむ」
 まさにというのだ。
「これではな」
「左様ですな」
「勝てますな」
「このまま攻めれば」
「そうなりますな」
「うむ、では敵を退けてじゃ」
 そしてとだ、元親はさらに話した。
「それでじゃ」
「さらにですな」
「城を囲み」
「そのうえで」
「降る様にお話しよう」
 こう言ってだった。
 元親は一条家の軍勢を追いそのうえで栗本城に向かい城を七千の軍勢で囲んだ、そうして使者を送ってだった。
 降る様に促すと兼定もだった。
「そうか、降るとか」
「はい、そしてです」
 使者として兼定に話した親貞が答えた。
「もう都にです」
「戻られるとか」
「言われています」
「左様か」
「はい、その様に言われています」
「ならよい、ではな」
 元親は兼定からの返事を聞いて述べた。
「すぐにじゃ」
「都にですか」
「戻って頂く」
 是非にというのだ。
「そうしてもらう」
「それで、ですな」
「よい」
 こう言うのだった。
「それでな」
「左様ですか」
「一条家から受けた恩は忘れてはおらぬ」
 今もというのだ。
「だからな」
「土佐から出られるなら」
「それでよい」
「それで、ですな」
「これでよしとする」
「では一条殿は」
「少なくとも土佐を出られるまではな」
 その間はというのだ。
「丁重にじゃ」
「送りますか」
「そうせよ、礼を失ってはならん」
 決してというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
「そしてじゃ」
 元親はさらに言った。
「指一本触れてはならぬぞ」
「そのこともですな」
「厳しく守れ、ではお送りせよ」
 兼定とその一族をだ、こう言ってだった。 
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