戦国異伝供書
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第八十五話 四万十川の戦いその二
「栗本城に入ってすぐにじゃ」
「間髪入れずですな」
「この城に向かうべきでしたな」
「そしてこの城を手に入れる」
「そうすべきでしたな」
「それを間違えたわ」
目の前にいる一条家の軍勢はというのだ。
「そして今じゃ」
「我等の姿を見て」
「そうしてですな」
「慌てていますな」
「川に何かしておりますな」
「それも急いで」
「仕掛けるなら仕掛けさせる」
それはいいというのだ。
「どちらにしろじゃ」
「川を渡り」
「そうしてですな」
「敵の軍勢を破りますな」
「そうする」
その敵を見ての言葉だ。
「よいな」
「ですが殿」
本山がここで元親に言ってきた。
「おそらくこの度は川を挟んでの対陣となり」
「そうしてじゃな」
「そこで川を渡ることは」
「難しいのう」
「どうしても」
「そうじゃな、しかしな」
「そのこともですか」
「考えがある、だからな」
「この度もですな」
「わしの采配にその場で異があればな」
その時はというのだ。
「遠慮なく申せ」
「それでは」
「異がなければな」
「そのままですな」
「見ていてくれるか」
「わかり申した、では」
「うむ、まずは兵が集まるのを待つが」
その間はというのだ。
「敵に川を渡らせぬ様にな」
「守りをですか」
「固めておこうぞ」
こう話してだった、そのうえで。
元親は向こう岸にいる敵の軍勢への守りを固めまずは援軍を待った、そしてその援軍が来てからだった。
対岸に布陣した、そうしてから諸将に言った。
「さて、敵は川に乱杭等を置いておるな」
「川を渡る際の障害としておりますな」
「その様にしておりますな」
「うむ、そしてじゃ」
元親はさらに話した。
「流石に向こうも守りを固めておる」
「弓矢を持つ兵が多いですな」
「その兵達をこちらに向けております」
「若し迂闊に川を渡ろうとすれば」
「その時は、ですな」
「矢で射られる、そしてな」
元親はこうも言った。
「鉄砲もあるな」
「それですな」
「土佐に鉄砲が来ましたな」
「どうやら大友家から譲り受けたものですか」
「数こそ少ないですが」
「あれが鉄砲か」
その鉄砲を見てだ、元親はしみじみとした口調で述べた、見ればその数は少ないが一条家の軍勢には鉄砲が確かにある。
「はじめて見るが」
「ですな、我等もです」
「何時か鉄砲を持ちたいと思っていましたが」
「高いですし」
「この土佐まで鉄砲を売って来る商人が来ませぬし」
「その鉄砲をな」
まさにというのだ。
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