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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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酒と女と男の話

<海賊のアジト>

勇者アルルと女海賊モニカが暫くの間睨み合う!
「………ふふふ…随分と言う娘だねぇ…まぁいい…付いて来な!」
モニカは不敵に笑うと顎で奥の部屋を指すと、アルル達を誘った。
「おいバチェット!アタイの部屋に酒を有りっ丈持って来な!」
モニカは気絶せず立ち残っていた数少ない海賊の一人に、酒の指示を出し奥の部屋へと入って行く。

「お、俺一人でかよぉ…」
バチェットと呼ばれた海賊が愚痴を漏らし倉庫へと進み行く…
「僕も手伝いますよ!」
それを哀れに思ったのか、乱闘に巻き込まれなかったティミーがバチェトの手伝いを申し出た。
「あ!俺も手伝います!」
するとウルフまでもが、乱闘に巻き込まれた被害者感覚から、手伝う事を申し出る。

「若者は頑張るなぁ…」
乱闘の発端である男は、へばっている海賊達を気にする事なく踏んづけ、モニカが誘う奥の部屋へと入っていった。




部屋に入るとモニカはテーブルに座り、正面の席をアルルに薦める。
そして幾つかのショットグラスと酒瓶を取り出し、全てのグラスに溢れる程テキーラを注ぎ、自身のグラスのテキーラを煽ると叩きつける様にグラスを置き、話を始める。

「…で、正義の勇者様が、悪の海賊共に何の用だい!?」
更にテキーラを飲み続けながら、アルルに問いかける。
「………私達はバラモスを討伐する為、ポルトガ王より船を賜りました!しかし、ただ船を操るだけならともかく、海上で戦闘を行いながらの操船は不可能に近い為、海のスペシャリストである貴女達に協力をお願いしたく、此処まで訪れました」
モニカは薄ら笑いを浮かべながらアルルを見据え、アルルは実直に見つめながら交渉を行っている。

「アタイ等みたいな悪党と手を組んだら、勇者様の名前に傷が付くんじゃないのかい?」
「カンダタから、貴女達は義賊だと聞きました!それに…例え名前に傷が付いても、世界を平和に出来るのなら、気にする必要はありません!」
「ふん!名より実を取るってかい!?………甘ちゃんだねぇ…女の考えそうな事だ!アンタみたいな甘い女に、世界を救う事なんか出来るのかい!?」
アルルを見下した口調で突き放すモニカ…

しかしアルルは怯むことなく語り出す。
「確かに…私一人でしたら、世界どころか小さな村すら救えないでしょう…ですが私には仲間が居ます!信頼出来る仲間が………その仲間の一人…カンダタから、貴女達の事を聞きました。だから此処へ来たのです!」
「ははははは…カンダタみたいなクズが、信頼出来る仲間ぁ~!?………笑わせてくれるねぇ、お嬢ちゃん!女のクセに勇者などやってないで、男見つけてガキでも産んでな!それがアンタの為だよ!」
大声で笑うモニカ…だが瞳はアルルを見据えて笑ってない。

するとアルルは、目の前に置かれたテキーラ入りのショットグラスを掴むと、一気に飲み干し咽せながら言い放つ!
「ごほ…ごほ…あ、貴女こそ女だてらに海賊なんてしてないで、男見つけて違う人生を歩んだ方が良いんじゃないですか!?私達の様な女子供に、ケンカを吹っ掛ける様な手下しか居ないんじゃ、お頭の程度が知れてるわよ!」

アルルの手元にある空のグラスに酒を注ぎ、自らのグラスの酒を飲み干すと、悲しそうな瞳でモニカは語り始めた。
「アタイだってねぇ…惚れた男と共に生きようと思った事はあるさ…」
アルルはモニカの話を聞きながら、テーブルに置かれたテキーラのボトルを手に取り、モニカのグラスへと溢れるまで注ぐ。

「ロマリア地方で盗賊をやっていたその男が、下手打ってロマリアを逃げ出した時に、私と共に海賊をやらないかと誘ったんだ………でもその男はバハラタに着くなり、何も言わず私を置いて出て行っちまったんだ!海賊をやりたくないならそれでも良い…でも互いに愛し合った仲さ…私に『俺と一緒に来るか?』とでも言ってくれても良かったろうに!」
モニカは更にテキーラを煽り、瞳に涙を浮かべてカンダタを睨む!
空になったグラスに酒を注ぎながら、アルルは女として女のモニカに尋ねた。
「…もし…一緒に来る様言われたら…手下の人達を捨てて、その人と共に生きましたか?」

「……………分からない…アイツ等はろくでなし揃いだが、根は良いヤツばかりだからねぇ…」
アルルの問いに少し考え、優しくアルルを見つめて答えるモニカ。
するとビアンカが手近な椅子に座り、テキーラの注がれたグラスを手に取り飲み干した!
「ぷはぁ!貴女、男の趣味が悪いからそんな苦労をしちゃうのよ!そんな男(バカ)諦めて、別の男を見つけなさい!」

「ビアンカさん、自分の男の趣味の悪さを棚に上げて、言いたい事言いますね!?」
アルルもテキーラを煽り、話に加わったビアンカに苦言を呈した。
「ビアンカさんは男の趣味は悪くありません!リュカさんと結婚出来たのだから、むしろ男の趣味は良すぎます!私だって愛してますもん!」
ハツキまでもがテキーラを煽り、話に加わって来た。

「お頭!お待たせしやしたぁ!」
丁度そのタイミングで、バチェットと共にティミーとウルフが大量の酒樽と酒瓶を抱え、モニカの部屋へと入って来た。
「バチェット!良いタイミングで持ってきた!アタイはコイツ等が気に入ったよ!今夜は飲み明かすよ!…おら、カンダタ!ボケッと突っ立ってないで、絶世の美女達に酒を注ぎな!」
カンダタは尻を蹴り上げられ、慌ててアルル達のグラスに酒を注ぎ始める!
そして女達を中心とした、色っぽさとは懸け離れた酒盛りが始まった!




酒の嫌いなリュカは、何時の間にやら部屋から逃げ出しており、同じく部屋から逃げ出す事の出来たティミーに、娘の行方を問いだたす。
「あれ?マリーはティミーと一緒じゃなかったの?」
「え!?乱闘騒ぎの時、抱き上げて巻き込まれない様に避難しましたが、母さんと一緒に居ると思ってました…」
「こんな荒くれ共が屯する所に、マリーちゃん一人きりって拙くないですか!?」

ウルフの言葉を聞き、血相を変えるリュカとティミー!
先程の乱闘で、意識を失いやっと目覚めた海賊共の襟首を掴むと、脅し紛いに娘の行方を尋ねるリュカ!
しかし目覚めたばかりの人間に、そんな事知る由もなく、碌な情報を出さない海賊達を、苛立ち任せに突き飛ばす!

ティミーは父の非道な行為を止めるでもなく、自らも父と同じように海賊を脅し、突き飛ばしまくる!
この親子を止める事が出来ず、慌ててマリーを捜し回るウルフ!
マリーさえ見つかれば、冷静さを失っている親子を止める事が出来るだろうと、アジト内を走り回っている!


ほぼ全ての海賊達の心に、拭い去れない程の恐怖心を植え付けた頃、アジトの外からウルフの叫ぶ声が聞こえてきた!
「リュカさーん!ティミーさーん!マリーちゃんが見つかりましたー!!外へ出てきて下さーい!」
二人とも、別の海賊の襟首を締め上げていたが、ウルフの声を聞くや海賊を投げ捨てて、はぐれメタルも驚く様なスピードでウルフの元へと駆け付けた!
ホッと胸を撫で下ろすウルフと海賊達…
この件で海賊達は、ウルフに感謝を憶え、今後一際優しく接してくれる様になるのだった…
そして騒ぎの元凶の少女は、外で一体何をしていたのか…
騒動を巻き起こす体質は、やはり遺伝なのかもしれない!



 
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