DQ3 そして現実へ… (リュカ伝その2)
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血統
<ポルトガ港>
「♪う~み~は広い~なぁ、でっけ~なぁ~♪」
ポルトガ王に黒胡椒を渡し、船と交換したアルル達…
ついでにカンダタの噂も流して貰える様頼み込み、早速船に乗り込んだ。
しかしアルル達は船の扱いに不慣れで、ビアンカとティミーを中心に出港の準備を進めている。
「旦那も手伝ったらどうですかい?元の世界じゃ、船を扱った事あるんでしょ!」
マリーを膝に抱き、甲板上で優雅に歌っているリュカに文句を言うカンダタ…
「無駄よカンダタ!リュカは船では何もしないと決めてるの!『船では優雅に過ごすのが僕流』って事らしいわよ!」
「何なんだよそれ!………しかし人手が足りなすぎるぜ!」
「仕方ないでしょ!さすがにポルトガから、水夫を派遣して貰うわけにもいかないし…私達の旅は危険な物だから…」
アルルが宥める様にカンダタに説明する。
「ほな、自腹で水夫を雇うしかないやん!」
「雇うったって…そんな金銭的余裕はありません!」
「せやったら、アルルが体で払ったらええやん!」
「アンタ馬鹿じゃないの!アンタこそ体で払いなさいよ!その無駄にでかいオッパイで!」
忙しさと相まって口論を始めるアルルとエコナ…
「お父様ぁ~…何時になったらお船は出発するのですかぁ~?」
「うん。今アルル達が一生懸命出発の準備をしているから、もう少し待ってようね」
二人の口論を見て、不思議そうに尋ねるマリー。
そんな少女を見て、くだらない口論を慎むアルルとエコナ…
本当なら『リュカさんも手伝いなさいよ!』と、怒りの矛先を向けたいのだが、ある種マリーを人質に取ってる為、文句すら言えないで居る。
食料や水などの必要物資を買い出しに行っていたティミー・ウルフ・ハツキが戻り、とても現状では航海など不可能ではとの意見に達した為、リュカの周りに集まり話し合いが始まった。
「やはりこれ程しっかりした船を、この人数で扱うのは無理だと思います」
「それは分かるけどティミー…私達に人を雇うお金はありません!」
「ティミーさんもアルルも落ち着いてよ!確かに俺達だけじゃ大変だけど、動かせない事はないと思うぜ!」
「違うのよウルフ君。ティミーが無理と言ってるのは、海上で戦闘になったときのことなのよ…船を操作しながら戦うのは、かなりの労力が必要なの!」
皆が真剣に話し合う中、まるで他人事の様にやり取りを眺めているリュカとマリー…
「皆さん難しいお話をされてますねぇ…」
「そうだねぇ…僕等は邪魔をしない様にしとこうね!」
「父さんも少しは話し合いに参加して下さい!!」
額に青筋を浮かび上がらせたティミーが、怒りを抑えてリュカに話し合いへの参加を乞う。
「え゛!何で?何を僕に期待してんの?」
「まぁまぁ…ティミー落ち着いて!旦那に何を言っても無駄なのは、ティミーが一番分かってる事だろ!?」
「……………カンダタには何か解決策があるんですか?」
リュカへの鬱憤がカンダタへと向かうティミー…
「…正直あまりおすすめじゃねーが、一つだけ解決策がある…」
強烈な殺気を向けられて、怯みまくったカンダタが思わず口にした言葉…
カンダタ自身は、この提案だけはしたくなかったのだが…
「本当に!?それはどんな事なの?」
アルルが瞳を輝かせカンダタに詰め寄った!
ティミーやウルフ達も大きな期待に瞳を輝かせている。
「あ、あぁ…此処ポルトガから南西に行くと『サマンオサ』と言う国があるんだが、その国の南の端に俺の知り合いの海賊のアジトがあるんだ…其処へ行って海賊共を味方に引き入れる………ってのはどうだろうか?」
「盗賊の次は、海賊かよ!どんだけ勇者様一行の名を、貶めれば気が済むんだ!?そんなクズはお前だけで十分だ!」
「何にもしねぇ旦那が文句言うなよ!船の扱いにかけちゃスペシャリストなんだぞ!ヤツらに船を任せれば、海上でモンスターに襲われても、俺達は戦闘に集中出来るだろ!」
皆がカンダタの提案を噛みしめる様に吟味する。
「確かに…方法としては良い提案ですが………海賊が私達に協力してくれますかね?」
「それは分からねぇ…直接交渉してみねーと………ただ、ヤツらは俺と違って義賊なんだ!弱者から金を巻き上げたりはしねぇ…何時も狙うのは悪党だけだ!」
「………他に…方法はないですし…取り敢えず海賊のアジトを目指しましょう!」
アルルの一声により、一行の進路は決定した。
可能な限り敵に遭遇しないよう、海賊のアジトを目指す事に…
「ねぇリュカ…お願いがあるのぉ…」
リュカの膝の上からマリーを退かし、ビアンカが跨る様にリュカへ抱き付き、甘えた声でお願いをする。
「海賊のアジトまでだけで良いから……………歌わないで♥」
そう…今回の船旅では死活問題のリュカの歌…
それを封じる為、ビアンカはリュカに甘えお願いをする。
そのままビアンカを抱き上げ、船室へと下りて行くリュカ…
残された他の者は、出港の準備を再開する…
マリーですら、ティミーから教わり船の扱い方を憶えようとしている。
<ポルトガ沖>
進路が決定してから半日…
船内に響くビアンカの甘い声に我慢しながら準備を進めたアルル達。
何とかポルトガ港から出ることが出来た様だ。
ビアンカの献身的なお願いが功を奏し、リュカも大人しくマリーと戯れている。
「やっとポルトガから出港出来たね」
「ティミーのお陰です!私達だけだったら、何をして良いのかも分からなかったですから」
出港し穏やかな船旅が続く中、余裕が出来てきたアルルとティミーが笑顔で会話している。
「ほぉら、見てごらんマリー!お兄ちゃんとアルルお姉ちゃんは、とってもお似合いな男女だよねぇ…やっとお兄ちゃんにも彼女が出来るのかな?」
「私アルル様の事、大好きですぅ!是非お兄様の彼女になってほしいですわ♡」
今はまだ本人達にその意志はないのだが、外野が勝手に二人の仲を期待している。
「ちょっとリュカ、マリー!あの二人は貴方達と違って、ウブで真面目なんだから、そう言う事言って変に意識させちゃダメよ!見守って行くのが大事なんだからね!」
勝手な夫婦である。
そんな穏やかな雰囲気は、モンスターの襲来により打ち消された!
海のモンスター『マーマン』と『大王イカ』である!
海での戦闘に不慣れなアルル達は、効果的な攻撃をする事が出来ず、ティミーとビアンカがメインで戦う事に!
「大変ですぅ!アルル様達がピンチですわ!お父様、私達もお手伝い致しましょう!」
「いやいや…私達もって…マリーは戦う事なんか出来ないだろ?」
「そんな事ありませんですわ!私、ポピーお姉様に魔法を教わりましたから!」
そう言うとマリーは、敵の群れに向けて両手を翳し魔法を唱えた!
「イオナズン!」
「「「「え!?」」」」
マリーから放たれた魔法は敵陣で大爆発を起こし、モンスターを全て吹き飛ばした!
同時に大量の海水を大量に巻き上げ、巨大な津波を引き起こす!
「げぇ!!」
慌ててリュカはマリーを抱き上げ、手近な柱へとしかみ付く!
「みんなー!何かに捕まれ!津波に飲み込まれるぞー!!!」
リュカの声を聞き、皆が慌てて何かにしがみ付く!
次の瞬間、一行は津波に飲み込まれ揉みくちゃにされた!
「お~い…みんな無事かー…?」
津波が去り、穏やかさを取り戻した船上で、びしょ濡れのリュカがみんなの無事を確認する。
流石は世界に誇るポルトガ製の船…
あの大波に飲まれても、転覆する事はなかった………が、乗っている人間は別だ!
「私とティミーは無事よ!」
ビアンカが自分とティミーの無事を告げる。
「俺も何とか生きてるぞー!」
「私もです!」
カンダタとアルルが疲れた表情でリュカの前に姿を現す。
「俺は大丈夫だけど、ハツキが気を失ったままだ!」
気絶しているハツキを背負い、ウルフが姿を出した。
「………あれ?エコナは?」
皆が互いを見つめ周囲を見渡す。
「…マジで!?…エコナ、流されちゃった!?ヤベーじゃん!!」
リュカとビアンカの血を引くマリーのイオナズンは、他者の想像を遙かに超える代物で、その影響でエコナは海へと投げ出されてしまった!
今更助ける事も出来ない一行は、沈痛な面持ちのまま、次なる目的地へと船を進めて行く…
今はそれしか出来ないから…
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