恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第八十三話 呂布、あえて騙されるのことその五
「気にしなくてもいいけれどね」
「そういうことか」
「そう、そういうこと」
高覧の声は素っ気無い。
「通り雨の様なものだと思って」
「わかった。それならだ」
こうしてだった。右京も二人の喧嘩のことは気にしないことにした。そうしたやり取りの間にだ。
陳宮はグリフォンマスクやイワンと共にだ。関の前に来た。ここでグリフォンマスクが彼女に言って来た。
「若し何かがあればだ」
「その時はなのです?」
「貴殿は一目散に逃げることだ」
そうしろというのだ。
「私達が守るからな」
「有り難うなのです」
「何、気にすることはない」
グリフォンマスクは腕を組んで述べた。
「私は子供達のヒーローなのだからな」
「ねねはもう子供じゃないのです」
一応はこう言う陳宮だった。しかしだった。
彼女は同時にだ。グリフォンマスクにこうも話した。
「けれど」
「けれど。どうしたのだ?」
「有り難うなのです」
俯いてだ。グリフォンマスクにこう礼を述べたのだ。
「その御心、感謝するのです」
「また言うが気にすることはない」
グリフォンマスクの言葉が変わることはなかった。
「これが私の務めなのだからな」
「それでなのです」
「そうだ。そういうことだ」
こう陳宮に話すのである。
「何かあれば私が全力で守るからな」
「私もいる」
イワンも言ってきた。
「私はヒーローではないが戦う者だ」
「だからなのです」
「そうだ。だから君を守る」
そのだ。陳宮をだというのだ。
「必ずだ」
「そうしてくれるのです、イワンさんも」
「安心して自分の果たすべきことをしてくれ」
イワンの言葉はこうしたものだった。
「わかったな」
「はいなのです」
陳宮はイワンのその言葉にこくりと頷いた。
「ねねは。絶対にやるのです」
「その意気だ」
「でははじめるとしよう」
「わかりましたです」
こう二人と話してだ。それからだった。
関の前に来た。そのうえでだ。
「恋殿!」
呂布を呼ぶのだった。
「おられますか。ねねです!」
「あれっ、陳宮殿か?」
「関におられるんじゃなかったのか?」
「何でそれであそこにおられるんだ?」
「しかもあの車椅子何なんだ?」
「一体」
まずはだ。関の上にいる兵達がそれぞれ声をあげた。
「連合軍の方にいるみたいだけれどな」
「寝返った?」
「裏切った?」
こうした意見も出て来た。
「まさか。陳宮殿が」
「そんなことをするとは思えないが」
「何があったんだ?」
「しかも呂将軍を御呼びしている」
「どういうことなんだ」
兵達には訳のわからないことだった。だが陳宮のその言葉を聞いてだ。
呂布が出て来た。そのうえでだ。
関の上からだ。陳宮を見て言うのであった。
「ねね」
「恋殿・・・・・・」
「何の用?」
いつもの無表情な顔と声で陳宮に問う。
「いないと思ったら」
「関を勝手に出たのは申し訳ありません」
まずはそのことを謝罪する陳宮だった。呂布を見上げて必死な顔で話す。
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