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戦国異伝供書

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第八十四話 安芸家との戦その七

「それはな」
「三好家がまず考えられますが」
「隣の阿波のな」
「しかし阿波からは山を越えるか海からですが」
「どちらも時がかかるな、しかも安芸家と三好家はな」
「これといって縁がありませぬな」
「無縁と言っていい」
 安芸家と三好家の関係はというのだ。
「これといってな」
「そうですか」
「そしてな」
 そのうえでというのだ。
「もう一つの家じゃが」
「一条家ですな」
「ご当主殿が今は中村におられず」
 そしてというのだ。
「家中も揉めておってはな」
「それではですな」
「我等の仲裁は何とかしたが」
 それでもというのだ。
「出陣まではな」
「出来ませぬか」
「そこまでは出来ぬ」
 流石にとだ、元親は話した。
「だからじゃ」
「一条家が来る心配もですか」
「ない、だからわしもじゃ」 
 元親もというのだ。
「五千の、長曾我部家の兵の殆ど全てをじゃ」
「この場に持ってきましたか」
「そうじゃ」
 一条家は動かない、もっと言えば動けないと見抜いてだ。
「そうしたのじゃ」
「左様でしたか」
「だからな、安芸家はな」
「最早ですな」
「孤立無援じゃ」
「援軍は来ないですか」
「しかも安芸城だけでな」 
 この城だけでというのだ。
「そのうえで籠城するしかない」
「最早手詰まりですか」
「完全にな、その城を囲めば」
 どうかとだ、元親は話した。
「後は楽じゃ」
「その後は」
 親貞が言ってきた。
「城に調略を行えば」
「楽であるな」
「降る者も多いですな」
「援軍が来ぬ城に籠城するとなるとな」
「もうどうにもならないので」
「それではですな」
「後は囲んでな」
 そうしてというのだ。
「城の中の安芸家の者達への調略を行うぞ」
「わかり申した」
 親貞も頷いてそうしてだった。
 元親は五千の兵で安芸家の軍勢が逃げ込んだその安芸城を囲んだ、そのうえで城の中の者達に次々に降る様に誘い。
 そうしてこうした噂も流させた。
「よいか、城の井戸に毒をじゃ」
「流した」
「そうした噂もですか」
「城の中に流しますか」
「そうしますか」
「実際にはそれはせぬが」 
 それでもというのだ。
「噂でも堪えるであろう」
「左様ですな」
「完全に囲まれて井戸もそうなったと聞きますと」
「援軍のあてもないですし」
「それならば」
「敵は余計に参る、だからな」
 それ故にというのだ。 
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