戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~
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戦姫絶唱シンフォギアG
第1楽章~黒の装者達~
第1節「不穏な足音」
前書き
前書き
大変長らくお待たせしました!!
伴装者G編、いよいよ始まります!
今まで待たせてしまった分、皆様の期待を裏切らない、むしろ軽く超えていく作品になる事を目指して、今回も頑張って行きたいと思います!!
それではまず、皆さんご存知あの英雄博士の初登場からです。
久し振りに「あ、綺麗な頃の博士だ~」と笑いながら楽しんでください!
雨の中を往く貨物列車。その車内に鳴り響く警報音と、廊下を照らす赤い照明が、それらの襲来を知らせる。
最後尾の武装車両から放たれる機関銃は、弾丸が全てすり抜け、全く意味をなさない。
「の、ノイズ……うわーーーーッ!」
「く……このッ!」
心許ない、飾りも同然な砲台は間もなく破壊され、天井を突き破ってきたそれらは、螺旋状に捻った身体で軍人達を刺し貫き、炭素の塊へと分解した。
「きゃ……ッ!」
「大丈夫ですかッ!?」
その更に前方の車両にて。
振動でよろけ、躓いてしまった友里に、銀髪ショートに四角い眼鏡をかけ、白衣を羽織った男が心配そうに声をかける。
聖遺物輸送用のケースを両腕で抱えた男は、絵に描いたような科学者だ。
「平気です……それよりウェル博士はもっと前方の車両に避難してくださいッ!」
「ええ」
そこへ、後ろの車両から戻って来た三人の少年少女が合流する。
響、翔、クリスの三人だ。
「大変ですッ!凄い数のノイズが追ってきますッ!」
「武装車両が潰されました。生存者の存在は絶望的かと……」
「連中、明らかにこっちを獲物と定めていやがる。……まるで、何者かに操られているみたいだ」
「急ぎましょうッ!」
車両を移動しながら、殿として最後尾を歩く翔は、前方のウェル博士に訝しげな目を向けていた。
ff
「第71チェックポイントの通過を確認。岩国の米軍基地到着はもう間もなく──ですがッ!」
「こちらとの距離が伸びきった瞬間を狙い撃たれたか……」
特異災害対策機動部二課の仮設本部にて、弦十郎はモニターに映るノイズ反応を睨みながら呟いた。
「司令、やはりこれは──」
「ああ。何者かがソロモンの杖強奪を目論んでいると見て間違いないッ!」
弦十郎の言葉に、藤尭を始めとした職員達の気が一層引き締まった。
ソロモンの杖がどれほど危険な存在なのか。
それを、シンフォギア装者達がどれほどの困難を経て回収したのか。
全て見てきた彼らだからこそ、気を抜く事は出来ない。
現場の装者達を最大限にサポートするべく、職員達はコンソールに指を走らせた。
ff
「はい、はい……。多数のノイズに混じって、高速で移動する反応パターン?」
友里が端末を片手に、本部からの連絡を受けながら先行する。
その後ろからウェル博士、クリス、響が続き、最後は殿の翔が車両を乗り移る。
「三ヶ月前、世界中に衝撃を与えたルナアタックを契機に、日本政府より開示された櫻井理論。その殆どが、未だ謎に包まれたままとなっていますが、回収されたこのアークセプター、ソロモンの杖を解析し、世界を脅かす認定特異災害ノイズに対抗しうる新たな可能性を模索する事が出来れば……」
ウェル博士の言葉に、クリスが足を止める。
「そいつは……ソロモンの杖は、簡単に扱っていいモンじゃねぇよ」
「クリスちゃん……」
「もっとも、あたしにとやかく言う資格はねぇがな……」
フィーネに騙されていたとはいえ、基底状態にあったソロモンの杖を起動させたのは、他でもないクリス自身だ。
負い目を感じて俯くクリスの手を、響はそっと握った。
「ッ!?ばっ、お前こんな時に……」
「大丈夫だよ、クリスちゃん」
「ッ……お前ホントのバカッ!」
「相変わらず素直じゃないな、雪音は」
頬を染めながらぷいっとそっぽを向くクリスの姿に、翔は肩を竦めた。
「はい、はい……。了解しました。迎え撃ちます」
友里は通信を終えると、端末を胸ポケットに仕舞い、代わりに取りだした拳銃を握った。
「出番なんだよね?」
そこへ、前方車両の方からやって来た少年が声をかける。
「純、行けるな?」
「勿論だよ。アキレウスも準備万端さ」
純は、その身に着込んだプロテクターの胸元をコツンと叩いてみせた。
「行くぞ、皆ッ!」
翔の掛け声とともに、クリスはギアペンダントを握り、純は左腕のギアブレスに指を添える。
そして響は翔と共に、胸の前で手を組んだ。
「──Toryufrce Ikuyumiya haiya torn──」
「──Balwisyall Nescell gungnir tron──」
「──Killter Ichaival tron──」
「転調・コード“アキレウス”ッ!」
次の瞬間、四人の姿が変わっていく。
光が弾けると共に、一瞬で衣服はそれぞれのパーソナルカラーに黒が入ったインナーへと変わる。
純のものだけは、既に装着済みのプロテクターの形状が変化し、インナーが色付いていくというプロセスであったが、基本的には近いものだ。
エネルギーがプロテクター状に固着し、インナーの上から重なって行くと、やがてそれらはノイズに対抗する唯一の装備へと姿を変えた。
FG式回天特機装束、シンフォギア。
及び、そのプロトタイプであるRN式だ。
最後にヘッドホン型のヘッドギアが装着され、四人の変身が完了した。
「うわああああああッ!?」
と、ここで狙いすましたようにフライトノイズが天井へと突き刺さり、ウェル博士は腰を抜かして悲鳴を上げる。
四人は突き刺さったノイズを殴りながら、天井を突き破り、列車の屋根へと降り立った。
「群れスズメどもがうじゃうじゃと……」
「どんな敵がどれだけ来ようと、今日まで特訓してきたあのコンビネーションがあればッ!」
「響、あれはまだ未完成だ。実戦でいきなり実践出来るものではないぞ」
「うんッ!とっておきたい、とっておきだもんねッ!」
「二人とも、今のは狙って言ったわけじゃない……よな?」
「「えっ?」」
純の言葉に思わず顔を見合わせる二人。
気付いてないようなので、純はクスッと笑って盾を構える。
「ったく、お前らは……。背中は預けたからな」
「任せてッ!」
「心得た」
「クリスちゃんには、指一本触れさせねぇぜ!」
四人はそれぞれ背中を合わせると、各々の武器を握った。
「ギュッと握った拳、1000パーのThunderッ!」
響が歌い始めると共に、クリスと翔は空中のノイズ達へと向けて光の矢を放つ。
「先手必勝ッ!」
「オラオラオラァッ!」
〈流星射・五月雨の型〉
〈QUEEN's INFERNO〉
連射される光の矢は地上から空中へ、さながら雨のように空を裂き、ノイズ達を貫いていく。
空中への攻撃手段を持つ二人が仕留め損ね、爆煙に紛れて突貫しようとするノイズは、響と純が倒す。隙の無い布陣だ。
跳躍した響はフライトノイズ達を拳で、脚で、演武でもしているかのように次々と粉砕していく。
クリスの背後を狙ったノイズもまた、純が投擲した盾に切り裂かれていく。
頑強だが縁は鋭く、ギアで強化された膂力で投げればフリスビーの要領で回転し、敵を切り裂くブーメランとなるアキレウスの盾。
翔から進められた海外ヒーロー映画は、純の中でしっかりと活かされていた。
「君だけを(守りたい)だから(強く)飛べぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」
響と純の奮闘により、大技を放つのに充分な隙が生まれた。
クリスはアームドギアを、クロスボウ型から弩弓に変形させ、クラスター弾としての性質を持った大型矢を放つ。
大型矢は空中へと突き進みながら、どんどん細かく分裂・拡散していく。
ノイズの群れの更に頭上まで到達し、そして矢は雨と共に降り注ぎ、一掃する。
〈GIGA ZEPPELIN〉
爆発するノイズ達。その爆煙を切り裂いて飛行する、一体の巨大なフライトノイズがいた。
「あいつが取り巻きを率いてやがるのかッ!」
「名付けるなら翼獣型、という所か」
クリスは翼獣型ノイズに狙いを定めると、スカート部分のミサイルポッドを展開した。
「うおおおおおおおおおおおおッ!!」
〈MEGA DETH PARTY〉
しかし、追尾してくる全てのミサイルを、翼獣型ノイズは急旋回を繰り返す事で相殺させる。
そう簡単に撃ち落とされてはくれないらしい。
「だったらぁぁぁぁぁッ!!」
〈BILLION MAIDEN〉
アームドギアをガトリング砲へと変形させ、翼獣型ノイズへと向けて一斉掃射する。
翼獣型ノイズはこれもまた避けるが、今度は違った。
頭部周囲に存在していた、鳥の嘴にも似た突起を展開し、突撃形態となってこちらへ真っ直ぐに向かって来たのだ。
突起部はとても頑丈らしく、クリスのガトリングが全て弾かれていく。
「雪音ッ!手を緩めるなよッ!」
翔はアームドギアにエネルギーを収束させ、特大の一射を放つ。
〈流星射・礫の型〉
クリスからの砲撃に合わせ、翔が放つ矢は連射が効かない代わりに爆発力の高い剛射だ。
避ける間もなく、矢は翼獣型ノイズに直撃する。
しかし、翼獣型ノイズは尚も爆煙を切り裂き、突撃してくる。
「翔くんッ!クリスちゃんッ!」
そこへ響がパワージャッキを引き上げながら、二人の前へと躍り出る。
「うおおおおおおおぉぉぉぉぉッ!!」
跳躍し、翼獣型ノイズの真正面から拳を叩き込む響。
しかし、翼獣型ノイズは響の拳撃さえものとせず、彼女を弾き返した。
だが、翔の剛射が突撃の勢いを殺していた為か、その狙いは列車から逸れて進んでいく。
その隙に響は列車へと着地し、伸縮したパワージャッキから放熱した。
「響ッ!大丈夫か!?」
「うんッ!でもあのノイズ、凄く硬くて……」
「このままじゃ、僕達の攻撃は通せない……か」
残る小型のフライトノイズを倒しながら、純は旋回する翼獣型ノイズを睨む。
(ノイズとは、ただ人を殺す事に終始する単調な行動パターンが原則のはず……。だが、あの動きは目的を遂行すべく制御されたもの……。そんな事が、ソロモンの杖以外で可能なのだろうか?)
翔はアームドギアを構え直し、周囲のノイズを掃討しながら思案していた。
(フィーネもノイズを操る力を持ってはいたが、ソロモンの杖ほど細かい命令は下せなかった筈だ。それに、了子さんからの言葉通りなら……やっぱり、怪しむべきはウェル博士か)
ノイズ達の統率された動きから見ても、この状況は何者かの意図が働いていると見て間違いない。
現在進行形で、ソロモンの杖が使われているとしたら……まず真っ先に怪しむべきは、今日、一番長く杖の近くに居た人間であるウェル博士だ。
ケースの中身は既に空、という可能性が捨てきれない。
だが、今彼を問い詰めれば状況は悪化するだろう。
もしもウェル博士がソロモンの杖を使い、ノイズを操っていると仮定した場合、列車内にノイズを召喚されればひとたまりもない。
(ここは目の前のノイズに集中し、岩国基地への到着を待つべきだな……)
現在の優先順位を省みて、翔は思考を一時中断すると、列車の前方を確認した。
「あん時みたく空を飛べるエクスドライブモードなら、こんな奴らにいちいちおたつくことなんてねーのに……ッ!」
「ッ!!皆!伏せろッ!!」
「「「ん?うわああああああッ!?」」」
翔の声で他の3人は、車両の前方を確認する。
そこには、なんと……トンネルが目前まで迫っていた。
「くッ!!」
翔と響は足元を踏み抜き、車内の廊下へと着地する。
一方、純は盾を素早く小型化すると、翔達が空けた穴へとクリスを抱えて飛び込んだ。
「あっぶねぇ……大丈夫か、クリスちゃん?」
「助かったッ!ありがとな、ジュンくん」
純の腕から降り、顔を見合わせるクリス。
一瞬だけ、お姫様抱っこの状態だったのを、翔と響は見逃していなかった。が、今は敢えて口を閉ざす。
「それにしても……クソッ!攻めあぐねるとはこういう事かッ!」
「何とか、一気に倒す方法を考えないとな……」
悔しげに拳を手のひらに突き合わせるクリス。
純も顎に手を当て、策を捻り出そうとする。
実際、翔も悩んでいるところだ。
さて、あの硬さと突破力……どうしたものか。
「あ、そうだッ!」
「なんだ?何か閃いたのか?」
「師匠の戦術マニュアルで見た事があるッ!こういう時は、列車の連結部を壊してぶつければいいって!」
「はぁ……おっさんのマニュアルってば面白映画だろ?そんなのが役に立つのかよ……」
予想に反したぶっとび回答に、クリスは呆れ気味だ。
しかし、そこで翔は合点がいった様に指を鳴らす。
「いや、行けるかもしれないぞ!」
「本当か、翔?」
「ノイズに車両をぶつけたって、あいつらは通り抜けて来るだけだろ?」
「ふっふ~ん、ぶつけるのはそれだけじゃないよッ!ねっ、翔くん!」
互いに顔を見合わせる翔と響に、クリスは訳が分からず純に助けを求める。
純は、二人の表情から確信めいたものを感じ取ると、クリスの方を見ながら言った。
「ここは二人に任せようぜ。翔がこういう顔してる時は、大体上手くいくからな」
「ジュンくんがそこまで言うなら……任せてやるよ」
「急いで!トンネルを抜ける前にッ!」
四人は急ぎ足で、更に前方の車両へ乗り移る。
クリスが列車の連結部を撃ち抜き、破壊すると、響は両脚を曲げて連結機同士の間に挟まる。
「サンキュー、クリスちゃん!」
「本当にこんなんでいいのかよ……?」
「後はこ、れ、でぇぇぇッ!」
響は両手で前方車両に掴まって身を支え、両脚で勢いよく後方車両を押し出した。
切り離された車両は勢いよく、列車の反対方向へと進んでいく。
列車を追ってきた翼獣型ノイズは予想通り、位相差障壁で列車を通り抜ける。
「君だけを(守りたい)だから……飛ぉぉぉべぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」
しかし……そのスピードはトンネル外を飛んでいた際に比べ、確実に落ちていた。
車両を透過してきた翼獣型ノイズが、その頭部を覗かせた瞬間を見計らい、響はブースター付きの巨大なナックル型に展開させていたアームドギアを握り、一気に加速した。
パワージャッキの性能も大幅に向上したナックルは、内部のギアが放電しながら高速回転し、響の拳撃の威力を引き上げる。
〈我流・撃槍烈破〉
拳が命中した直後、強力な衝撃波と共に獣型ノイズは爆散した。
その爆風に飲まれ、周囲のフライノイズ達も次々と炭化していく。
響の背後からは翔がアームドギアを構え、響が倒し損ねたノイズに備えていたものの、閉鎖空間ないでの爆発に巻き込まれた事で、どうやら全滅したらしい。
トンネルの入口からは、爆風と共に煙が押し出され、まるで勝利の狼煙のように空へと立ち上っていく。
いつの間にか雨は上がり、空を覆い尽くしていた黒雲は晴れ、昇り始めた太陽が響を背後から照らしていた。
「未来見上げ 凛と立ってきっと花に生まれると信じて……!」
「掃討完了、お疲れ響ッ!」
アームドギアを収納した翔は、同じく右手の篭手を元の形状に戻し、排熱を終えた響に駆け寄り、ハイタッチを交わした。
そんな響を、クリスは列車の後方から驚いた顔で見つめていた。
「閉鎖空間で相手の機動力を封じた上で、遮蔽物の向こうから重い一撃……。あいつ……バカなのに……」
「立花さんも、日々成長してるって事さ」
純もまた、戦闘の終了を確認してギアを解除し、クリスの肩に手を置きながら親友達の方を見つめる。
「僕としては、あのやり取りだけで立花さんの作戦を理解した翔も凄いと思う。互いをよく知り、信頼しあっているからこそ出来る事だもの」
「あ、あたしとジュンくんだって、あれくらい!!」
「勿論出来るさ。僕とクリスちゃんならね」
自分達だって負けてない、と張り合おうとするクリスに微笑ましさを感じ、純の手が自然とクリスの頭に伸びる。
頭頂に乗せられた優しい手に、クリスは頬を赤く染めながら撫でられるのだった。
(さて、これでノイズは振り切った。後はウェル博士をどう締め上げるか……。どうやってカマかけてやったものか……)
響と二人、勝利の余韻に浸りながらも、翔は今回の黒幕について考えていた。
ウェル博士以外の第三者という線も考えたが、やはりチラつくのは、任務の前日に入院中の了子から聞いた一言だった。
(響達にも共有しておきたいんだけど、博士に怪しまれる可能性が高いしな……。響は素直すぎるし、雪音は掴みかかりかねないし……。でも純なら或いは──)
「あッ!?翔くん、大変ッ!!」
「ん?ああ、どうした!?」
響の叫びに、思考を一時中断する。
何事かと思えば、響が指さす方向には……遠ざかっていく列車の後ろ姿があった。
「わたし達、置いてかれちゃうよ!!」
「しまった!!響、走るぞ!今ならまだ、全力ダッシュとギアのジャッキで間に合う!!」
「あーん!かっこよく決めたのに~!これじゃ台無しじゃーん!」
「走れー!全速前進だ!」
こうして、翔と響はなんとか列車に追い付いたものの、しばらくの間は息も絶え絶えで動けなかったという……。
── 彼らはまだ知らなかった。この事件が新たな事変への序曲だという事を……。
後書き
さて、久し振りの伴装者本編は如何でしたでしょうか?
楽しんでいただけたのでしたら、コメントや評価、レビューなど書いて頂ければ励みになります。
さて、今回は春休みを利用して、ひと月前から執筆した上での予約投稿という形式を取っております。
無印編書いてた頃と同様、毎日更新する気満々なのですが、新学期で更新が滞る可能性を考慮するとこのくらいの備えは必要だと思いまして。
はいそこ!「アニメじゃないんだから!」って?
その言葉が聞きたかった!!w
というわけで、これからも応援よろしくお願いします!
さて、次回はウェル博士に注目ですw
お楽しみに!
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