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ヘタリア大帝国

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TURN40 雨の少女その四

「洒落にならないぜ」
「そうなのですか」
「ああ、だからな」
「ベトナムさんの戦力は期待できませんね」
「本国艦隊と植民地艦隊だけで戦うしかないんだよな」
「戦力的には太平洋軍を凌駕していますね」
「今回もな」
 イギリスは妙に棘のある言い方をした。
「数は多いな」
「そうですね。数はですね」
「けれどマレーで負けてな」
「四国でもですね」
「インドネシアとかニュージーランドじゃそもそも戦力がなかったからな」
 数が少なければだ。余計にだった。
「重要拠点のマレーでも四国でもな。数が多くてもな」
「敗れていますからね、我々は」
「しっかりとした指揮官がいなかったからな」
 イギリスは敗因をそこに見た。
「それが問題だからな」
「そうですね。それは」
「けれど今度はな」
 どうかというのだ。このベトナムでの戦いではだ。
「あんたがいるからな。頼むな」
「お任せ下さい。必ずです」
「勝とうな、ここでな」
「そうしましょう。何があろうとも」
「それでな。確かにベトナムはいなくなったけれどな」
 イギリスは話題を変えてきた。そのうえでの言葉だった。
「現地の提督もいるぜ」
「どういった提督でしょうか」
「ベトナム生まれの女の子だよ」
「ベトナム生まれ?といいますと」
「ああ、ハーレムとかじゃないからな」
 イギリスはネルソンにこのことは断った。そうしたいかがわしいことを強いられていた訳ではないとだ。
「それは安心してくれ」
「そうですか」
「そうだよ。しっかりと雇われた提督だよ」
「だといいのですが」
「元々ベトナムが見つけてきた娘なんだよ」
 今姿が見えない彼女がだというのだ。
「それでなんだけれどな」
「どういった娘でしょうか、それで」
「普通の白いアオザイを着た女の子だよ」
 ベトナムの女性の民族衣装を着ているというのだ。
「頭には網笠を被ってな」
「ベトナムさんと同じ格好ですね」
「外見はな。ただな」
「ただ?」
「ああ、ちょっと不思議なんだよ」
 イギリスは首を捻りながらネルソンに話す。
「まあ実際に会ってみるとわかるさ」
「その娘にですか」
ああ、どうする?」
 イギリスはあらためてネルソンに問うた。
「その娘と会ってみるか?」
「お願いできますか」
 これがネルソンの返事だった。
「そうして頂ければ」
「ああ、じゃあ案内するな」
「はい、それでは」
「じゃあ傘を用意するか」
「傘?」
「ああ、傘な。レインコートでもいいか」
「傘にレインコート。それは」
「必要なんだよ。それがな」
「それはどうしてでしょうか」
「だから会えばわかるさ」
 そうしたこともだというのだ。
「行くか。それじゃあな」
「ううむ。どういうことでしょうか」
 ネルソンはイギリスの言うことがわからなかった。だがそれでもその少女と会うことにした。そうしてだった。
 イギリスに言われた通り傘とレインコートで武装してから提督用の邸宅に向かった。そこはベトナムの普通の家だった。  
 そこにイギリスと共に入るとだ。一人の小柄な少女が出迎えてきた。 
 
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