ヘタリア大帝国
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TURN40 雨の少女その三
「そして身寄りのない少女達は全て孤児院で保護します」
「何と、それは」
「無論より年上の女性達もです」
ネルソンは厳しい声で続ける。
「全て解放、然るべき仕事に就いてもらいます」
「それでは我々は」
「そのうえで貴族の全ての身元調査を行い」
「まさか。それは」
「不正を徹底的に暴きます」
これはベトナムだけを見ていることではなかった。東洋におけるエイリスの植民地全体のことであるのだ。
「そうします。今よりです」
「あの、それは」
「そしてです」
さらにだとだ、ネルソンは言っていく。
「貴方は二度とです」
「二度ととは」
「私の前に現れないで下さい」
こう告げたのである、総督に対して。
「宜しいですね」
「私は総督ですぞ。それでもですか」
「そうです。何度も申し上げますが私は女王陛下に全権を委任されています」
だがそれを盾に取ってはいなかった。彼自身によってだ。
ネルソンは総督を圧倒してだ。そして言うのだった。
「そうです。ではさようなら」
「くっ・・・・・・」
ネルソンの迫力に押されてだ。総督は怯みながら彼の前から消えた。ネルソンはその彼の後ろ姿を忌々しげに見送ってからだ。それからだった。
イギリスのところに来てだ。こう言うのだった。
「植民地の実情ですが」
「腐ってるっていうんだな」
「はい、あまりにもだと思いますが」
「ああ、俺も女王さんもな」
イギリスも忌々しげな顔でネルソンに話す。
「何とかしたいって思ってるんだけれどな」
「それでもですか」
「ちょっとな。中々目が行き届かなくてな」
それでだというのだ、
「どうしようもないんだよ」
「そうですか」
「ちょっとやそっとじゃな」
「腐敗は根深いですか」
「で、女王さんが丁度改革の大鉈を振るおうとしたらな」
丁度その時にだったというのだ。
「今の戦争が起こったからな」
「そうですね。ですから」
「ここでも貴族の連中は腐ってるんだよ」
「本国以上にですね」
「ああ。女王さんや俺の目も届かないしな」
「由々しき事態ですね」
「で、その結果な」
どうなったかとだ。イギリスはネルソンにさらに話した。
「ベトナムいないだろ、今」
「あの方はどちらに」
「多分だけれどな」
イギリスはさらに苦々しい顔になってだ。そのうえでネルソンに対して話すのだった。
「向こうに行ったぜ」
「太平洋軍にですか」
「だからいないだろ、今」
「はい」
確かにベトナムの姿が見えなかった。彼女の国での戦いだというのにだ。
「おられませんね、何処にも」
「あいつはな。植民地の国の中でも特に頑固だからな」
「強いですしね」
「しかも頭の回転も早い」
それがベトナムだった。
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