戦国異伝供書
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第八十四話 安芸家との戦その六
親貞は軍勢を安芸川の河口まで進めてそこから安芸城に向けて北上させた、その途中の道でだった。
元親と彼が率いていた軍勢と合流した、すると元親は自身の長弟に対して優しい微笑みを浮かべて言った。
「よくやってくれた」
「そう言って下さいますか」
「うむ」
その通りだというのだ。
「よく勝ってくれた」
「兄上の言われた通りにしただけで」
「それだけか」
「はい、海の法螺貝と」
「わしが安芸城に向かったからか」
「それで敵が浮足立ったので」
それでというのだ。
「そこを衝いただけです」
「それで勝ったか」
「それだけのことです」
こう言うのだった。
「それがしにとっては」
「それだけか」
「全ては兄上のお考えです」
「そう言ってくれるか」
「はい」
そしてとだ、さらに言う親貞だった。
「特に何もです」
「思うことはないか」
「左様です」
まさにというのだ。
「この度は」
「そう言ってくれるか」
「それがしはただ兄上の言われるままに動いたまでのこと」
それでというのだ。
「大したことはしておりませぬ」
「そうであるか」
「はい、功はありませぬ」
「そう言うのは酔いがお主が働いたのは事実」
このことはとだ、元親は述べた。
「後で褒美を取らす」
「そう言って下さいますか」
「必ずな、そしてじゃ」
「これからのことは」
「うむ、それでじゃ」
まさにというのだ。
「まずは安芸城に向かいな」
「そうしてですな」
「あの城を囲みな」
そのうえでというのだ。
「そこからまた仕掛ける」
「そうしますか」
「そしてじゃ」
「城を落としますか」
「そしてな」
「安芸家との戦もですな」
「終わらせる、そして土佐の東はな」
この地もというのだ。
「我等のものとなる」
「そうなりますか」
「うむ、その為にもな」
「安芸城にですな」
「向かうぞ」
「わかり申した」
親貞も他の者達も頷いてだ、そうしてだった。元親は軍勢を率いてそのうえで安芸城に向かった。それからだった。
安芸城を囲んだ、ここで親益は元親に囲んだ城を見つつ言った。
「後はこの城をどうするかですが」
「それでもじゃな」
「ここで安芸家はあくまで籠城するつもりですな」
「それは何故かじゃな」
「城を枕に討ち死にするつもりか」
「若しくは援軍をじゃな」
「期待しているのでしょうか」
こう元親に話した。
「やはり」
「援軍となるとな」
元親は親益にすぐに答えた。
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