DQ3 そして現実へ… (リュカ伝その2)
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子煩悩
<イシス>
目の前に砂漠の国イシスが広がる。
アルル達一行はリュカのルーラを使い、ダーマから此処イシスへと訪れた。
「…す、すげぇ~…本当に複数人を同時に移転させちゃった…」
ウルフのリュカに対する尊敬の念は天井知らずだ。
「やっぱり腹立つ…こんな便利な魔法を隠してたなんて…」
「まぁまぁアルル嬢ちゃん…旦那はみんなの事を思って隠してたんだから…」
「お!カンダタは良い事言うね!よし『リュー君ポイント』を1ポイントあげよう」
「…何スか、それ?」
「うん。10000ポイント貯めたら、頭をナデナデしてあげる!」
「わぁ…心底どうでもいいッスね…」
「馬鹿な事言ってないで行くわよ!女王様に謁見しないと…」
呆れたアルルは先陣を切って町へと入って行く。
「え゛!?今から…今日は遅いし宿屋へ行こうよ…」
「まだ昼前ですよ!遅くはないでしょう!サッサと行きますよ!」
愚図るリュカの右手をアルルが、左手をティミーは引っ張り一行はイシス城へと進む。
謁見の間控え室で順番を待つアルル達。
「どうやら今日は女王様が居るみたいね」
入れ替わり謁見の間へと出入りしている他の人々を見て安心するアルル。
「ふふ…そう言えば読んだよ…前回は謁見出来なかったんだよね」
ティミーが壁に寄りかかり、控え室を眺めているアルルに話しかける。
「そうなんですよ…まさか女王様が城を抜け出して、遊び歩いてるとは思わないじゃないですか!…しかもリュカさんと!」
「ははははは!普通の国ではそうだよね…」
「………もしかしてリュカさんは…」
「…あぁ…抜け出さない日の方が珍しい…」
「リュカさんらしいですね…」
マリーを抱き、窓から砂漠世界を眺めるリュカを見て溜息を漏らす二人…
「やっぱりリュカさんて結構子煩悩なんですね…あんまり子供を叱る姿って想像できません。…だからティミーを殴った時は驚きました!」
視線をティミーに戻し、尋ねる様に感想を述べるアルル。
「いや…父さんに殴られたのは初めてだ!叱られた事だって無かったよ…」
「それ程ビアンカさんの事を愛してるんですね」
「あぁ…其処まで愛しているのに、何で浮気するんだろ?僕には考えられないよ…」
《ティミーって本当に真面目な人なんだ…リュカさんが言ってた通りね…》
「なぁ…飽きてきたんだけど…帰ろうよぉ!」
長時間の順番待ちに耐えられなくなってきたリュカが、また身勝手な事を言い出した!
「また馬鹿な事を…仕方ないじゃないですか!他の皆さんだって順番を待ってるんですから、大人しく待ちましょう!」
アルルがリュカを宥める。
「みんな僕達の順番を抜かしてるよ!順番待ってないよ!僕達、係の人に故意に除外されてるよ!」
「え!?」
アルルはリュカに言われ、慌てて周りを見渡す。
《本当だ!今、謁見の間から出て行った人は、私達より後に来た人だわ!》
「…くっ!…リュカさんの所為ですよ!お偉いさんを怒らせるから!意趣返しされてるんですよ!………我慢して待つしかないでしょう…」
諦めた口調で呟き、そのまま壁際へ蹲るアルル。
「え~!ちょっと文句言って来る!」
「「「「え!?」」」」
リュカは突然謁見の間へと歩き出し、勢い良くドアを蹴り開ける!
「たのもー!」
「げっ!!ちょ、ちょっとリュカさん!」
慌てて止めようとしたアルル達だが、間に合わずなだれ込む様に謁見の間へ入っていった!
「リュ、リュカ!?どうしました!?」
リュカ達の乱入に目を見開いて驚くレイチェル!
《うわぁ…美人だ…相変わらず父さん女性の趣味は良いなぁ…》
レイチェルを見て思わず見とれるティミー…
「用があって、謁見の順番待ちをしてたんだけど…もう待ってらんない!昼前から待ってるんだよ!」
「リュカ…いくら貴方でも順番は守って下さい!待つのが嫌だからって…」
呆れた様に話しかけるレイチェル…
「順番守ってねぇーのはそっちだろ!何で僕達より後に来た人が、僕達より先に謁見してんだよ!」
「え!?どういう事です?」
・
・
・
「………と言うわけで、明らかに作為的に順番を抜かされ続けてたんだ!」
「…真ですかイプルゴス!」
レイチェルはイプルゴスと呼ばれる大臣を睨み付ける。
「い、いえ…その…こ、これは偶然…その…」
「小せぇ男だな!何だぁ~、レイチェルの事を狙ってたのか?そんで僕に嫉妬したか?」
口籠もる大臣に容赦なく罵声を浴びせるリュカ。
「だ、黙れ!貴様なんぞ認めんぞ!」
「ぶははははは!いいもんね~、認めてくれなくても!ば~か!」
大臣は血管が切れそうなくらい顔を真っ赤にしている。
「わ、私は…女王様が幼い頃より仕えてきたのだ!女王様がお幸せになれるのなら…そう思い日夜仕えてきたのだ!それなのに貴様の様な浮ついたろくでなしが、女王様を汚しおって!」
ついには泣き出す大臣…
「イプルゴス…泣かないで…私は幸せよ。頼りになる家臣に囲まれて…素晴らしい国民に恵まれて…そしてリュカに出会えた………だから泣かないで…そしてリュカを許してあげて!」
レイチェルは玉座から立ち上がり、リュカの元へ近付くと、そっと胸に抱き付いた。
家臣の誰もが、その光景を複雑な思いで見つめている。
そして誰もが、涙を飲んで女王様の幸せを見守ろうと思い始めてる…
しかしリュカは、抱き付いてきたレイチェルを優しく抱くと、その違和感から硬直した!
いち早くリュカの変化に気付いたのはビアンカ…
リュカの前に回り込み、表情を観察する。
そして次に気付いたのがレイチェル…
不思議に思い、リュカに問いかける。
「リュカ…?どうか…しましたか?」
「………レイチェル…彼氏出来たのかな?」
「リュカが彼氏になってくれるなら、出来たと言えるけど…それ以外では…リュカ以外の男性に興味が持てなくなったしね」
大量の脂汗をかくリュカ…
「リュカ…もしかして…またなの…?」
覚えのある不安に、漠然とした質問をするビアンカ。
二人のやり取りを見たティミーが、頭を抱えて蹲る。
「父さん…またですか………しかも、こっちの世界で…」
家族だけの会話について行けないアルル達。
果たして何がリュカの身に起きたのか…
………謎でもなんでもないですけどね!
後書き
リュカさん………またですか?
貴方って人は!
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