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【完結】RE: ハイスクール D×D +夜天の書(TS転生オリ主最強、アンチもあるよ?)

作者:羽田京
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第1章 これから始まる物語
  第3話 終りの始まり

 ボクが使用する魔法――行使できる魔法は、リリカルなのは世界の魔法だけだが――の中に、
 探査魔法というものがある。
 サーチャーという情報収集用の小型スフィアを通じて、
 映像を術者に届けるという、使い勝手のいい優れた魔法である。


 原作が始まったからと言って、学校がなくなるわけではない。
 いつも通り授業が終了し、放課後の教室で、クラスメイトと雑談していた。
 一見、雑談に興じているだけに思えるだろう。
 だがしかし、実際は、サーチャーから送信されてくる映像を
 マルチタスクを使って覗いていた。
 今は、兵藤一誠と天野夕麻――堕天使レイナーレの変装した姿だ――が、
 笑顔で会話する映像が流れている。
  
  
(主よ。対象は、女子高生に扮した堕天使と合流したようだ)
(ありがとう、ザフィーラ。こっちでも確認したよ)

 
 狼形態のザフィーラにも、兵藤一誠の尾行をさせてある。
 彼とも、念話でリアルタイムに会話できていた。
 つまり、クラスメイトとの雑談。サーチャーによる監視。ザフィーラとの念話通信。
 最低でも3種類の行為を同時並行して、行っているのである。
 マルチタスクとは、つくづく便利である。


(それにしても、兵藤君は、張り切っているなあ)
(フン。エロ魔人のあいつのことだ。いまごろ頭の中は桃色一色だろうよ。下心が見え見えだぜ)
(まあまあ、落ち着いてヴィータちゃん。エロ魔人には同意するけれど)


 他のメンバーは自宅で待機している。
 彼女たちも、サーチャーの映像をみながら、不測の事態に備えている――はずだ。


(いつも私の胸をじろじろ見てくるからな。主はやてに止められなければ、とっくにレヴァンテインの錆にしている) 
(あはは、彼は、おっぱい星人だもんね)
(――マスターも人のことを言えないと思いますよ)
(ケッ)


 この世界では、「魔法」とは、悪魔が行使する技術を指すことが多い。
 人間にも魔法使いはいるが、悪魔式の魔法を人間用に改良して行使しているにすぎない。
 したがって、異世界の魔法体系など思いもよらないだろう。


(あらあら、気に病まないでヴィータちゃん。女は胸の大きさじゃないわよ?)
(シャマル。おまえ後で覚えていろよ)
(ヴィータには、ヴィータのよさがある。気にしてはだめだよ)
(――とかいって、はやてもあたしの仲間じゃねーか)
(な、なんのことかな?いまのボクは、ナイスバディでございますことよ)


 聡いものならば、サーチャーに、感づかれる可能性はある。
 しかしながら、未知の魔法に対して常に身構えることは、難しい。
 すなわち、ボクたちが秘匿する限りにおいて、魔法――便宜的に、以後リリカル魔法と呼称――は、重要なファクターとなりえる。


(おい、それくらいにしておけ。我々が為すべきことを忘れるな)
(先ほどから、盾の守護獣が、居心地悪そうにしていますね)
(……気にするな)
 

 さて、原作通りなら、兵藤一誠は、このまま神器狩りに巻き込まれるはずだ。
 デートの帰り、神器を狙うレイナーレに攻撃され、彼は瀕死の状態になる。
 死にかけながら、偶然にも悪魔契約用のチラシを握りしめ――――召喚されたリアス・グレモリーに救出され、悪魔に転生する。


(他人のデートを覗きみるなんて、われながら趣味が悪いよな)


 と、内心つぶやきつつ監視を続ける。
 うらやましくない。と、いえば嘘になる。
 正体を知っているとはいえ、天野夕麻は美人である。
 美人とデートする男を羨ましい、と、いうボクは悪いだろうか?いや、悪くない。
 ――もちろん、相手が堕天使でさえなければ、だが。


「――さま、明日のご予定は空いていらっしゃいますか?」
「ん?ああ、明日の予定だったか。ちょっと、これから忙しくなりそうなんだ。しばらくは付き合えなくなると思う。ごめんね」

(原作が始まって忙しくなるだろうし)
(主はやてが自ら動かずとも、私たちにお任せくだされば――)
(ううん、いいんだ。これはボクなりのけじめだから)

(承知しました。我ら守護騎士一同、ヴォルケンリッターの名にかけて、主はやてに尽くします)
(期待しているよ、我が騎士たち――もちろん、リインフォースも、ね)
(ハッ。マスターのお望みのままに)


 話は変わるが、ボクの通う私立駒王学園は、そこそこ偏差値の高い女子高「だった」。
 つまり、昨今の少子化の流れに逆らえず、数年前から共学化したのである。
 とはいえ、なまじ地元では知名度があるせいで、「駒王学園=女子高」という認識を、
 覆すことは困難だった。
 あの手この手で――入試でさえ男子を優遇した――やっと、現在男子が3割近くを占めるに至る。
 とはいえ、やはり男子の肩身はせまい。


「そうでしたか。もし、ご都合がよろしい日があれば教えてくださいね。いいお店を見つけたんですよ。ねえ?」
「うん。イタリアンでね。洒落た感じで料理もおいしいんだけれど、値段がすごく安いんだよ!」
「そうなんだ。楽しみにしているね」


 女性になってしまったボクは、毎日こうして綺麗どころに囲まれた日々を過ごしている。
 学校では友人、後輩たちと。自宅では、リインフォースたちと。
 前世のボクでは考えられない生活を送っている。
 もっとも、美人と逢引したところで、健全なデートといえるのか甚だ疑問であるけれども。
 そんなボクの最近の悩みは――――


「はい!わたしたちも、楽しみに待っていますからね!!」
「みんな大げさだなあ」
「とんでもないです!駒王学園『三大』お姉さまとご一緒できる機会なんて、滅多にありませんから」
 
 
 ――――『三大お姉さま』という称号である。 
 原作では、リアス・グレモリーと姫島朱乃の二人が、駒王学園の二大お姉さまを構成していた。
 しかし、この世界では、八神はやてが、ちゃっかりと加わっている。
 ボクは、特別なことをした覚えはない。……ないのだが、

 『凛々しい』
 『かっこいい』
 『男らしい』

 といった風評が、中学校時代には既に流れていた。
 いつの間にか『お姉さま』と呼ばれ、当時は生徒会長を務めていた。
 駒王学園に入り、一時は鳴りを潜めたものの進級したことで、再燃したようである。
 ――困ったことに、同級生にまで、お姉さまと慕われているようなのだ。 
 たしかに、前世の性別やら年齢やらを考えれば、妥当な評価なのかもしれないが……。

 
 と、まあ、益体もないことを考えつつも、
 兵藤一誠とレイナーレのデートを覗き続けていたら――――


(結局、原作通りになったか)
(そのようです。リアス・グレモリーに感づかれる前に、帰宅します)
(ありがとう、ザフィーラ)

「――――よし。これで一安心だな」
「はやてお姉さま、何が一安心なんですか?」
「ん?ああ、冷蔵庫の中身を思い出していてね。今晩は、豪華にしようと思っているんだよ」
「まあ、そうでしたの。お姉さまの料理は絶品ですものね」

(ククク。人気だな、お・姉・さ・ま)
(からかわないでくれよ、ヴィータ姉)




 
 ――守護騎士とは、主に仕える騎士である


 主を守り、主と戦い、主のために死ぬ。
 このことに、疑問を持つことはなかったし、いまでも思いは同じだ。
 

 ――しかし、仕えるに値する主であるか否かを考えたことはなかった


 主を盲信し、敵はすべて薙ぎ払い、感情を殺し命令に従う。
 忠義といえば聞こえはいいが、自ら考えることを放棄し、
 感情のない機械の如く言われた通りに動く。

 
 ――まるで、道具のようだった


 たしかに、歴代の主達の多くは、我々を道具として扱った。
 しかし、全ての主が、初めから我々を、道具としてみなしていたわけではない。
 むしろ、我々の方が、機械であろう、道具であろうと頑なになっていたのではないか。
 永遠ともいえる期間、仕える主を選ぶことができなかった我々は、
 ときに、理不尽な命令をうけた。
 ときに、モノとして、扱われた。


 ――だからこそ、感情を廃し、「道具」たらんとしていたのではないか


 心優しい主と出会い、感情を思い出した現在だからこそ、そのように思うのだ。
 我々は、主はやてと出会い変わった。
 しかし、本当は、「変わった」のではなく、「戻った」というのが正しいのかもしれない。


 守護騎士は、仕える主を選ぶことはできなかった。
 けれども、運命は、私が真に忠義を捧げるべき主と巡り合わせてくれた。
 主はやて――幼い身でありながら、誰よりも強い輝きをもつ少女――を守ることこそ、我々守護騎士の、ヴォルケンリッターの使命である。
 と、誇りを持って私は誓おう。


 ――烈火の将の名にかけて
 
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