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戦国異伝供書

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第八十三話 和睦の間にその十一

「そのうえで」
「そうして戦っていくぞ」
「そうしますな」
「兵の数は確かに大きな力じゃが」 
 それでもというのだ。
「正面からぶつかるだけではな」
「例え勝てたとしても」
「大きな犠牲が出る」
「そうなってしまうので」
「だからじゃ」
「頭を使いますか」
「その為安芸家のことをじっくり調べるのじゃ」
 その隅から隅までというのだ。
「よいな」
「そして戦となれば」
「頭を使いな」
 安芸家のことを知り抜いたうえでというのだ。
「戦ってな」
「そのうえで勝つ」
「犠牲は最小限に抑えてな」
 そうしてというのだ。
「わかったのう」
「はい、それがしも」
「それでじゃが」
 元親はさらに話した。
「一つ大事なことがある」
「と、いいますと」
「今我等は土佐のことを考えておるが」 
 それでもというのだ。
「四国の他の国、もっと言えば天下のこともな」
「見ておかねばなりませんな」
「どうしても」
「そのうえでどう動くかですな」
「阿波や讃岐じゃが」
 まずはこの二国の話をした。
「三好家がよく治めておるな」
「大和にいる三好家の執権松永家と三人衆のお歴々が不仲で」
「争ってもいますが」
「それでもですな」
「この二国と淡路はですな」
「まとまっておるな、ただ摂津と河内と和泉は」
 この三国、四国から都に入る途中の国々はというと。
「本願寺もおるし三好家の力が強くともな」
「その松永家も影響を及ぼそうとしていて」
「盤石ではない様ですな」
「三好家の統治も」
「そうであるな、特に摂津じゃな」
 元親は弟達に特にこの国の話をした。
「あそこに本願寺の本山があるかのう」
「石山の」
「摂津の複雑に入り組んだ川の中にありますな」
「あちらの地図を見ますと」
「うむ、あれではな」
 本願寺がそうしたところにあればというのだ。
「仮に摂津を治めてもな」
「完全にはなりませんな」
「どうしても本願寺の勢力があり」
「あの寺とどう付き合うかになりますな」
「三好家は本願寺とは何もない」
 特に対立しておらずそして友好的でもないというのだ。
「言うならば中立じゃ」
「摂津を治めていても本願寺は認めている」
「その勢力を」
「そういうことですな」
「うむ、というか認めなくてはな」
 そうしなければというのだ。
「やっていけぬわ」
「三好家にしても」
「若し本願寺を敵に回せば」
「その時は」
「一向一揆を起こされる」
 一向宗、本願寺の門徒達が起こす一揆だ。多くの門徒達が農具や粗末な武器を持って本願寺の灰色の旗を掲げて起こすものだ。
「あれを起こされるとな」
「厄介だそうですな」
「加賀はそれで守護の富樫家が倒されました」
「そして越前でもよく起きて」
「越後の上杉殿も苦しめられているとか」
「三好家の領地にも門徒達は多い」
 一向宗の彼等がというのだ。 
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