おっちょこちょいのかよちゃん
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47 喘息のハンデ
前書き
《前回》
教会にて異世界の「杯」の所持者である安藤りえとの対面に成功したかよ子はりえの「亜麻色の髪の乙女」の演奏を聞く。一方、長山は御穂神社に行く事を考える。翌日、かよ子はりえと遊ぶ為に待ち合わせの教会に向かうと、杉山達と出会い、彼らもりえと友達になった事を知る。しかし、缶蹴り鬼をして遊んだ後、杉山とりえは喧嘩を始めてしまった!!
今回もアニメ「ちびまる子ちゃん」2期238話「夏休みの思い出」の巻にかよちゃんを交えてアレンジした内容になっています。喘息について調べてみたんですが、喘息は症状が重い場合はプールの水に含まれる塩素によって発作が出てしまう恐れがあるとの事です。ですからアニメでもりえちゃんはプールを拒否したのではないかと作者は考察しています。でも、プールでの水泳は喘息改善にもなるという結果も出ていますが・・・。
三保神社の鳥居に長山は訪れていた。
「ここに三保神社があるんだな・・・。山田の杖やさりってお姉さんの護符もここの神から貰ったのか・・・」
その時、声が聞こえる。
「そこの貴方、如何なされましたか」
女性が降りてきた。
「僕は長山治。君は御穂津姫かい?」
「その通りです」
女性は否定しなかった。
「あの、一つ聞きたい事があるんだけど、いいかな?」
「ええ、どうぞ」
「僕の学校の友達の山田かよ子が持っている不思議な杖なんだけど、何か知ってるかい?」
「ああ、あの杖ですか。はい、もちろんです。あれは平和を司る世界におきまして最も強力な力を持つ道具です。山田かよ子さんのお母様に渡し、その娘のかよ子さんがその所有者としての意志を受け継いでいるのです」
「それから、僕の考えでは、その杖と同じ力のものがあるらしいけど・・・」
「ご名答です。護符、杯、そして剣・・・。これらが日本にいる四名に渡したのです」
「うん、護符を持ってる人は今名古屋にいて、杯を持っている人は東京にいて今清水に遊びに来ているらしいんだ。剣を持っている人は?」
「広島という地にいるのですが・・・」
御穂津姫は顔を曇らせた。
「広島にいるんだね?」
「ところが、敵の人間に倒され、奪われたとの情報が入りました」
「・・・ええ!?」
神社の近くの木陰でまる子はある提案をする。
「そうだ、りえちゃん、明日は泳ぎに行こうよ!」
まる子が提案した。
「そうだね、学校のプール空いてるよ」
藤木はりえと泳ぐ時に夕陽の光る砂浜でりえと恋に落ちる所を妄想した。
「うん、やっぱり夏は海だね!」
「藤木、学校のプールだよ」
「ごめん、私水着持ってないの」
「誰かに借りればいいじゃん。きっと楽しいぜ!」
「そうだよ、一緒に行こうよ」
「あ、あのね、実は私、カナヅチなんだっ!」
りえはそれでも水泳を嫌がる。
「でも小さいプールだから泳げなくても平気だよ?」
「そうだよ、それにたとえ嵐が来ても、僕が命を懸けてりえちゃんを守って見せるさ!」
藤木はカッコつけた。
(嵐って、だから学校のプールだってば・・・)
たまえは心の中で藤木に突っ込んだ。
「・・・でも、明日はピアノの練習あるし、やっぱやめとく。来月のコンクールもあるし・・・」
「ピアノコンクールか・・・。それなら仕方ないよね」
かよ子もコンクールの為ならその通りかと思った。
「でも、りえちゃんくらいピアノが上手ならこれ以上練習しなくてももう十分だと思うけどなあ」
「藤木君は優しいのね」
「え?う・・・」
藤木は照れた。
「でも、私よりピアノが上手い子なんて、他にもいっぱいいるのよ」
「そうか・・・。ライバルが沢山いるんだね。でも、私、りえちゃんがきっとコンクールで一番だと思うんよ!」
「かよちゃん・・・、うん、ありがとう!明日も練習しなくっちゃ!」
「うん、そうだね」
その会話をよそに杉山はある事を考えていた。
(缶蹴りやっていた時に咳・・・。それから、プールに入る事を嫌がる・・・。違うな、カナヅチとかじゃないな)
その後、皆はドッジボールをして楽しんだ。かよ子はそこでも足を滑らせてよけきれずにボールに当たったりとお約束のおっちょこちょいをやってしまった。
「はあ、疲れた」
「今日は楽しかったわ。ありがとう」
「ああ、りえはこれから練習か?」
大野は聞く。
「うんっ」
「大変だね」
「そんな事ないわ。ピアノ弾くのは好きだし、楽しいし・・・」
「そうだよね。私もピアノやってるけど、弾いてみて楽しく感じてるんだ」
「たまちゃんもピアノやってるのっ?」
「うん、でもりえちゃんほどじゃないけどね・・・」
その一方で藤木はピアノが上手い子は本当に可愛いと思った。
(そうだよな、ピアノ上手い子は本当に可愛いよな・・・。笹山さんだってそうだし、いっそりえちゃんにも何かアピールできたらな・・・)
そして藤木は何か言おうとする。
「ぼ、僕もピアノじゃないけど、スケートは得意なんだ!それで将来はオリンピックに出たいって思ってるんだ!」
しかし、藤木の発言で盛り上がる事はなかった。
「藤木~、スケートは冬だよお~」
「う・・・」
「じゃ、せめて冬休みにでもまた清水に来たら見せてあげるよ」
「うーん、来れるかどうか分からないわ・・・」
藤木のアピールは空回りに終わった。皆はそれぞれの家を紹介した。
「私の家はあっちだよ」
「俺んちは向こうだぜ」
「あ、あそこが私の家だよ」
「そうなんだ。私のおばあちゃんの家はこっちよ」
「へえ、かよちゃんちとそこまで離れてないね」
「ほ、本当だ・・・」
りえの祖母の家はかよ子の家とは曲がり角を2つ超えたほどだった。
「それじゃ、また明日ねえ~」
「うん、バイバイっ!」
皆は別れた。だが、かよ子は大野と杉山の跡を追いかけた。
「あ、あの、杉山君・・・」
「どうした、山田?」
「りえちゃんの事なんだけど・・・」
「りえがどうかしたか?」
かよ子は思い切って言ってみる。
「杉山君はどう思ってるの・・・?」
「ああ、気が強くて乙女じゃないぜ。もう男と言っていいかもな」
「そっか・・・。でも、やっぱり気のせいかな?」
「何が気のせいだよ?」
「あの・・・。な、何でもない・・・!!」
かよ子は杉山はりえに好意を持っているのではないかと聞くのをやめた。怒鳴られると思ったから。
「でも、お前、りえの事何か知らねえか?」
「え?」
「あいつ、缶蹴りしていた時、せき込んでいたのを見たんだ。それにプールを嫌がったのもカナヅチとかじゃないと思うんだ。それに・・・」
「それに?」
「あいつには何か違う感触がするんだ。前に異世界の敵や日本赤軍とはまた違った感触をしたんだ」
「杉山君・・・」
かよ子には杉山の鋭さに驚いた。
「実はりえちゃん、喘息気味なんだ。それから、私の持ってるこの杖と同じように、異世界の杯を持ってるんだ。その杯には精霊を生み出せる能力があるんだって」
「そうか、だからプールを嫌がったのか」
「でもさあ」
大野も話に入る。
「プールは喘息を治すのにも効果があるって聞いた事あるぜ」
「まあ、それでもすぐに水に浸かるのよくないんだろ。山田、俺、明日りえに会いに行ってくるよ」
「うん・・・」
りえは本当はプールで皆と遊びたい気があった。
(私、喘息でさえなければ入れたかも・・・)
りえは喘息の影響で水泳をすると発作を起こしそうなのを恐れている。以前、学校の水泳の授業で呼吸が困難になり病院へ運ばれた事があった。その後遺症もあり、水に浸かる事に抵抗を感じ、以降水泳の授業は見学せざるを得なかったのである。
北海道の札幌市。三河口は従姉の一人、ありとその夫の家にいた。
「健ちゃん、明日帰るでしょ?」
「はい」
「今日はカニを御馳走してあげるわ」
「ああ、どうもありがとうございます」
一行はとある飲食店に行ってカニ料理を食べた。それを食べながら三河口はありやその夫が言った言葉を思い出していた。
(あのイマヌエルがここに来ていたのか・・・)
そして自身も、静岡県に住むあの小学生の女子も、高校の友人達も巻き込まれる事を予想しており、その為にイマヌエルやフローレンス、森の石松などといった平和を司る世界の人間の力を借り続ける事になると思った。
これから日本で起こりうるであろう大きな大きな抗争に・・・。
後書き
次回は・・・
「杯の能力」
夏休みの宿題をしているかよ子の元にりえとその母が現れる。そしてかよ子とまき子は真希彼女の家族ぐるみで同盟を組む事になる。そしてプールで遊んだ後、杉山は教会へ行き、「ある事」を試す為にりえを挑発しようとする・・・。
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