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戦国異伝供書

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第八十三話 和睦の間にその五

「どうじゃ」
「はい、特にです」
「今は動きがありませぬ」
「これといって」
「そうか、和睦で安穏としておるか」
 元親は弟達の話を聞いて述べた。
「ならな」
「はい、それならですな」
「今我等はですな」
「彼等が安穏としている間に」
「力をつけよう」
 政、それを進めてというのだ。
「相手が安穏としておる時こそな」
「まさにですな」
「今こそですな」
「そうした時ですな」
「左様、力をつけるぞ」
 こう言ってだった、元親は今は戦力を備えさせた。そして。
 その中でだ、家に来た正室の菜々に話した。
「そなたは斎藤家の縁戚だな」
「はい、美濃の」
「美濃を治める斎藤殿ではなくな」
「また別の家です、ですが」
「近頃織田家においてじゃな」
「家臣の一人としてです」
 菜々はその斎藤利三の話をした。
「励んでおられます」
「そうであるな、実はわしはな」
 元親は菜々に微笑んで話した。
「織田家とは親しくしていきたい」
「そうお考えですか」
「争うつもりはない」
 一切というのだ。
「それはな」
「殿は上洛をお考えですね」
「四国を一つにしてな」
「左様ですね」
「しかし天下はな」
 それはというのだ。
「考えておらぬ」
「天下人にはですか」
「なるつもりはない、わしはそこまで望んでおらぬし」
 それにというのだ。
「器でもな」
「ないとですか」
「考えておるからな」
 だからだというのだ。
「上洛までじゃ、その上洛もな」
「それもですか」
「出来ればじゃ」
「そうお考えですか」
「四国を一つにしてからであるからな」
 こう考えているからだというのだ。
「だからな」
「上洛は出来れば、ですか」
「そう考えておる」
「そうですか」
「そしてじゃ」
 元親は菜々にさらに話した。
「まずは何といってもな」
「この土佐ですね」
「土佐を統一することじゃ」
 このことが第一だというのだ。
「あくまでな」
「だからですか」
「うむ、織田家とはな」
「争うお考えはないですか」
「一切な、若し都に入っても」
「織田家が来られたら」
「都は譲る、都までに得た領地もな」
 それもというのだ。
「返上する、四国は一つにしたいが」
「それでもですか」
「四国以外の領地はな」
「求めておられませぬか」
「上洛して高い官位は貰いたい」
 これはというのだ。 
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