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戦国異伝供書

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第八十三話 和睦の間にその二

「対する我等は五千です」
「二倍以上の差があるな」
「はい、もうその時点で」
「我等は有利だな」
「そうなっていますが」
「うむ、しかしな」
 それでもとだ、元親は親益に話した。
「それでもな」
「我等は、ですな」
「うむ、決して油断せずにな」
「戦っていきますな」
「相手もわかっておる」
 安芸家もというのだ。
「あの家もな」
「劣勢であることは」
「左様、それでじゃ」
「何としても勝とうと向かって来るので」
「こちらも用心が必要じゃ」
「だからですな」
「当家は充分以上に備えをして」
 そしてというのだ。
「戦うぞ」
「わかり申した」
 親益は長兄の言葉に頷いて応えた。
「それでは」
「今は用意をするぞ」
「戦の」
「実はすぐに安芸家と戦いたかったがな」
 元親は本音を話した。
「本山家を降してな」
「その返す刀で、ですな」
「そうしたかったが」
「それでもですな」
「一条殿の頼みなら仕方ない、そしてな」
「和睦の時にもですな」
「その時こそな」
 まさにというのだ。
「戦に備えてな」
「政に力を入れるべきですな」
「そう思ってな」 
 それでというのだ。
「今はそうするぞ」
「わかり申した」
「そしてじゃ」
「安芸家にですな」
「勝つとしよう」
「わかり申した」
「しかしな」
 ここで元親は顔を暗くさせた、そして言うのだった。
「やはりな」
「その一条殿のことですな」
「そうじゃ、土佐を統一しようと思えばな」
「どうしてもですな」
「四万十川から西を治めるあの家ともな」
「やがては」
「そう思うが」
 しかしというのだ。
「それはな」
「しかしですな」
「それは人の道としてどうか」
「人の道に背くならば」
「もうその時点で、ですな」
「下校上の世じゃ」
 そう言われててはいるというのだ。
「確かにな」
「それでもですな」
「人の道に外れてはですな」
「何にもならぬ」
 まさにというのだ。
「それでは何にもならぬ」
「侍の道も」
「覇道と言うが」
「それでもですか」
「道を外れてはな」
「果てはないですか」
「左様、我等は王道と覇道、そしてな」
「外道の道をですか」
 親益はあえてこの道を話に出した。 
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