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戦国異伝供書

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第八十二話 本山城へその九

「随分とじゃ」
「差が開きましたな」
「本山家との戦では我等の方が兵が少なかったが」
「安芸家との戦では」
「こちらの方が兵が多い」
「その分余裕を以て戦えますな」
「うむ、しかしな」
 元親は親貞に窘める様に言った。
「安芸家も強い」
「だからですな」
「油断は出来ぬ」
 こうも言うのだった。
「そのことはよいな」
「はい、承知しております」
「だからな」
「安芸家との戦もですな」
「決してな」
「油断せずに」
「攻めていく」
 そうするというのだ。
「そして土佐の東も手中に収める」
「兄上、それでなのですが」
 この度島家を継いだ末弟である親益が言ってきた。
「一条殿がです」
「当家と安芸家の仲裁にか」
「はい、乗り出そうとしておられますが」
「そうか、本山家が安芸家を動かしてじゃな」
「この度は安芸家とです」
「当家の戦になると危惧されてか」
「その様です」
 こう長兄に話した。
「どうやら」
「そうなのか、しかしな」
「それは、ですな」
「ここで安芸家と手を結んでもな」
 そうしてもとだ、元親は話した。
「しかしな」
「それでもですな」
「それはあくまで一時のことでな」
「それで、ですな」
「やがて当家は安芸家と戦う」
「そうなることは自明の理ですな」
「しかしじゃ」 
 それでもとだ、元親は親益に話した。
「一条家には大恩がある、しかも土佐ではむしろ守護の細川様よりも頼りにされておる」
「この土佐のまとめ役として」
「だからな」
 それ故にというのだ。
「当家としてもな」
「一条殿の申し出は」
「断ることが出来ぬ」
 こう言うのだった。
「どうしてもな」
「左様ですな」
「難しいところであるがな」
 それでもというのだ。
「この申し出受けるしかない」
「それでは」
「うむ、その様にな」
 まさにと言うのだった。
「しよう」
「では」
「暫し領地を治めていこう」
「そうされますな」
「今当家は二十万石、五千の兵を動かせる」
「その領地をですな」
「今はしかと治めよう」
 こう親益に話した。
「次の戦に向けてな」
「では和睦の時が終われば」
「そのすぐ後にでもな」
「戦となりますか」
「一条殿からの申し出は断れぬが」
 それでもというのだ。
「やはりな」
「土佐の統一は、ですな」
「そして四国の統一はな」
 それはというのだ。 
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