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曇天に哭く修羅

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第二部
  読めない

 
前書き
さて、どれだけ早く進められるかな。 

 
立華紫闇(たちばなしあん)》は《黒鋼 焔/くろがねほむら》の言いつけを守り、『時間の圧縮』を行う能力である【珀刹怖凍/びゃくせつふとう】ではなくもう一つの切り札を出す。


(この刺客は先読みに秀でてる。『今の俺』じゃあ勝てない。だが別の俺は甘くねぇ。狂った奴の行動に着いてこれるか?)


彼は右手の親指を左の人差し指に当てた。

力を入れると関節が鳴る。

ベキリという音の直後に変化。

魔晄防壁が白銀から黒へ。

心の奥から狂気が溢れ出す。

怖ましい怪物が生まれるように。


「ふぅ」


紫闇は首を回すと歩き出した。

刺客の人形が迎え撃つ。

王冠と赤いマントの石像が近付いてくる。


「読まれたら勝ち目が無い?」

(馬鹿か俺は)


変わる前の紫闇なら防御や回避など色々考えていたのは間違いないだろう。


「アホらしい。滑稽(こっけい)だ」

(戦いの中で考える必要なんか無い)


紫闇は棒立ちになったまま、ノーガードで人形の外装から剣撃を浴びる。


「お~痛ぇなぁ~」


そのまま無視して刺客の元へ。


「やっぱ邪魔」


紫闇が不意に放った裏拳は王冠の石像頭部を簡単に粉砕してしまった。

続いて僧侶の石像がメイスを振り被り突っ込んで来たので王冠の人形と同じく無防備に対処してやろうと考えた紫闇だったが気紛れに放った蹴りを股間にブチ込みそのまま人形を破壊。


「一発かよ。もちっと頑丈に作れ」


これで残っている人形の外装は大盾を構えている無骨な戦士が一体のみ。


「おんやぁ~? もしかして警戒してる? さっきまでと違って全く動きが予測できなくなったから焦っちゃったのかな~?」


なら教えてやろう。

次に何をするか。


「真っ直ぐ突っ込んで、テメェを外装の人形ごとブッ飛ばしてやんよ」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


音隼(おとはや)双式(ふたしき)】を発動。

魔晄(まこう)で出来た二対四枚の翼が生える。

その推進力は音を置き去りに。

紫闇は一直線に前へ。

言った通りの行動だ。

刺客は安心したように人形を移動。

戦士の石像に自身の前で大盾を構えさせ、紫闇の攻撃を受け止めようとする。


(お前の予想通りと思ったのか?)


紫闇は相手の甘さに苦笑う。

防いでからの立て直しなどさせない。


「言ったろう。人形ごとって」


右拳に魔晄が集まると黄金に輝く。


【黒鋼流練氣術】の技。

【三羽鳥ノ一・禍孔雀(かくじゃく)


今の紫闇が出せる最大の攻撃。

それが人形の大盾に向かう。

衝突すると拳の光が()ぜて散る。

無数の黄金粒子が大気に広がった。


戦士の石像は自身の体が隠れる程の大盾を木っ端微塵にされたがそこで終わらない。

紫闇の右拳は突き進む。

力が衰えること無く頭を砕く。

背後に居た刺客の顔面にまでめり込む。


刺客は宙に浮いた後、紫闇の宣言通りに吹き飛ばされ地面に叩き付けられた。

が、直ぐに立ち上がる。

しかしその仮面に亀裂が走ると刺客は慌てて戦意を消し逃げ去っていく。


「追う気分じゃないな」


狂気に染まっている時の紫闇はよく解らない思考なのでこういうことも有る。

戦いが終わりを認識すると紫闇は正気に戻り、魔晄防壁も黒から白銀に戻った。


「凌いだ……か」


紫闇は大きく息を吐いた。
 
 

 
後書き
_〆(。。) 
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